参議院の比例代表選挙を見ていて、本当にこの制度で良いのだろうかという疑問を持ちます。比例代表というのは、本来政党本位の要素が非常に強い制度だと思います。政党に集まった票で議席数が決まるわけですので、どうしても政党が先にありきの制度です。勿論、無所属で比例代表というのはあり得ません。


 一方で、今のように非拘束名簿式だと、選挙の時にどういう主張をしなくてはいけないかというと、「くれぐれもうちの政党の名前を書かないでください。私の名前を書いてください。」ということになります。そうしないと、政党でたくさん票が取れたとしても、自分が当選ラインに入ってこないからです。見ていると、選挙区選挙以上に「私の名前を書いてください」という主張をしなくてはならないわけです(今の候補者がそう言う主張をしていることを批判しているわけではありません。あくまでも制度論の帰結です。)。やはり、政党別に議席が配分されるにもかかわらず、政党名を書かないでくださいと訴えなくてはならないというのは変な感じがしてなりません。


 この制度は、かつての厳正拘束名簿式の反省に立ったものだということはよく承知しています。これですと、名簿で1位になった方はほぼ自動的に当選ということになりますので、政党内での戦いにさえ勝てばいいわけです。その過程で変な取引、金銭のやり取りが生じやすいというのは容易に想像できます。また、上位に位置づけられた人が選挙活動をやらなくなってしまうという弊害も指摘されていました。そこで比例でも候補者にも頑張ってもらおうという制度にしたのだと理解しています。


 結果を見ていても、前回の参議院議員選挙では、国民新党の長谷川憲正さんは40万票を超えたのに落選、一方で3万票前後で当選という方もいました。記録としては、2004年選挙で公明党の方が17000票くらいで当選したということもありました。


 私は国会に職能代表的な方がいることは意味のあることだと思います。そして、参議院の比例の制度がその機能を果たしていることは分かっています。しかしながら、今の非拘束名簿式ですと選挙の時に歪な感じがとてもするのです。


 私はかつてのような全国を1選挙区とするような大選挙区制の方がいいのではないかなと思います。これは全国を対象としなくてはならないのでお金がかかることから「銭酷区」とも言われましたが、今の非拘束名簿式もかなり全国区制に近いところがあります。


 この件については政党毎に色々な思惑があるでしょうから、一概にこれが正解ということはないのですけども、私の思いは、政党毎に議席が割り振られる選挙で「私の政党名を書かないでください。」と訴えなくてはならないこの矛盾を解消すべきではないかということです。