tsao2さんから「衆参同日があるのではないか?」とのコメントを頂き、自分の身分にも関わることなので、純粋に法律上の観点からだけ調べてみました。なお、私は昔から「解散は首相の専権事項。周囲であれこれ考えるのはあまり意味がない。」と思っています。なので、「解散するかどうか」ではなくて、「法律上はどうなっているか」に徹したいと思います。
関係法律は公職選挙法といわゆる「0増5減」法案です。私が見て、関係あると思われる条文は以下の3つです。
【衆議院関係(公職選挙法)】
第三十一条
(略)
3 衆議院の解散に因る衆議院議員の総選挙は、解散の日から四十日以内に行う。
4 総選挙の期日は、少なくとも十二日前に公示しなければならない。
(略)
【参議院関係(公職選挙法)】
第三十二条 参議院議員の通常選挙は、議員の任期が終る日の前三十日以内に行う。
2 前項の規定により通常選挙を行うべき期間が参議院開会中又は参議院閉会の日から二十三日以内にかかる場合においては、通常選挙は、参議院閉会の日から二十四日以後三十日以内に行う。
3 通常選挙の期日は、少なくとも十七日前に公示しなければならない。
【0増5減法案(総務省作成概要より抜粋)】
公職選挙法の改正規定(区割り規定等)は、この法律の公布の日から起算して1月を経過した日から施行し、施行日以後初めてその期日を公示される衆議院議員の総選挙から適用する。
ここで重要な要素としては、0増5減の周知期間(1ヶ月)です。しかも、その1ヶ月を経た後に衆議院選期日の公示が来ることになっていますので、0増5減法案が成立してから29日(公布の日から起算であり、かつ6月は31日がないため)を経た後、公示となります。衆議院の選挙期日は少なくとも12日前に公示ですので、少なくとも法案成立から投開票日まで少なくとも41日が必要になります。まず、ここで分かるのは、衆議院総選挙は解散から40日以内にやらなくてはいけないので、「法案成立→即解散」は出来ないということになります。
あと、現在の参議院の任期は今年の7月28日ですので、原則としては、その30日前までにやることが求められます。現国会の会期が6/26までであることを考えると7月21日という日程が取り沙汰されるわけです。勿論、7/28でも7/14でも参議院単体で考えればあり得ますが、7/14に同日選をやろうとすると、前述の周知期間との関係で0増5減法案を相当に早く通さないとやれないということになります。7/21、7/28となる場合であっても、周知期間の41日間、公職選挙法の40日以内の2つの要素を見込めば、それぞれ6/7、6/14までに0増5減法案が成立すれば、それぞれ7/9、7/16衆議院公示で同日選はやれるということになるわけです。しかし、それですと0増5減法案の衆議院再可決(6月21日)まで持ち込まれたら無理ということになります。参議院の任期満了たる7/28までに同日選をやろうとするなら、参議院での採決を早めなくてはなりません。
逆に、国会を延長する場合、例外的に参議院議員の任期満了である7/28以降に選挙をやることが排除されているわけではありません(過去には任期満了後の選挙をやったことはあります。)。そのためには、公職選挙法第32条2項に引っ掛ける必要がありまして、同項の23日以内のところに引っかかるくらいの7月中旬まで延長すれば、例えば(延長した国会の閉会から24-30日間の間に入ってくる)8/4で同日選挙をやることが出来ないわけではありません。そこまで後ろにずらせば、周知期間や衆議院解散との関係を整理しやすいということはあるでしょう。
それ以外についても類型分けをしようかと思ったのですが、あまりにパラメーターが多過ぎて止めました。これ以外にも都議選との関係も出てくるでしょう。高次方程式みたいなものでして、とても私の手には余ります。60日ルールでの再可決を前提に、衆参同日をやろうとすると、国会を若干延長した上で7月18日参議院公示、7月23日衆議院公示、8/4投開票日であればやれる、そうでなくてもっと早い日程でやるなら0増5減法案の採決を早めなくてはならない、それくらいのことが分かるくらいです。
昔、竹下元首相の手帳というのは、日程がビッチリと書き込んであって、その管理が天才的であったと聞いたことがあります。別に私は同日選挙を望んでいるわけでは全然ありませんが(昨今の情勢を見れば望むはずもありません)、頭の体操くらいはしておくのは無駄ではなかろうと思って、ちょっと思索を巡らせてみました。なお、上記の記述では日程の計算が少し雑でして、1日くらいのズレが出ているかもしれません。間違っていたらお詫びいたします。
最後に、tsao2さんのご指摘に感謝申し上げます。いつも示唆的なコメント、刺激になっております。