正確なことは分からないのですけども、報道を見ているとマリ政府と(マリに軍事介入している)フランス政府との間に少し齟齬が生じ始めているようです。北アフリカ及びサハラ砂漠におけるテロ対策ということで重要なポイントになっています。


 簡単に言うと、対トゥアレグ族でどういう姿勢を取るかということです。フランス政府はテロリスト掃討のためには、トゥアレグ族との協力が必要になってくると判断しているようです。私が以前書いたように、サハラ砂漠に広く住む、国を持たない民トゥアレグ族が貧困にあえぎ不安定なうちはどうしてもそこにテロ行為を生業とするイスラム主義者が巣食ってしまうわけです。今後、更に掃討を進めるに際しては情報面、現地での協力体制を構築していかなくてはならないので、一定程度はトゥアレグ族を懐柔していく必要が生じます。


 しかし、当事者のマリ政府は違います。元はと言えば、あの国が不安定化するようになったのはマリ軍が昨年、政権に対してクーデターを起こしたことがきっかけです。そして、もっと遡れば、マリ北部の砂漠地域で(当時、イスラム主義者と協力関係にあった)トゥアレグ族がマリ軍に攻撃を仕掛けていて、その戦いで装備で劣るマリ軍が劣勢に置かれたことへのマリ軍の不満の表明がクーデターとなったものです。テロリスト掃討の重要性は分かっていつつも、トゥアレグ族をそのままにしておくと、また、いつ独立運動が勃発してマリ軍にとって脅威となるかもしれないという危惧を持っているでしょう。


 そのあたりの分析に繋がる良い論評としては、フランスのオリヴィエ・ロワのこの記事 がいいです(英語で申し訳ないのですが、イスラムに関してはとても良い記事だと思います。フランス内政についてはちょっと違和感がありますけど。)。トゥアレグ族問題は国際的なテロ問題ではなく、地域の民族・文化・経済的な対立です。逆に欧米的には、今回のアルジェリアでの問題にも代表されるように国際テロの問題です。この認識の違いが、対トゥアレグ族でのマリとフランスとの姿勢の違いになるわけです。そして、最終的な目標、更にはアプローチにちょっとしたずれが出てしまうわけです。


 この違い、よく見ておく必要がありますね。今、テロ掃討ということでフランスはマリに軍事介入していますけども、現地政府と足並みを揃えていくのが今後難しくなるかもしれません。なので、私が以前書いたようにもう少し包括的なパッケージを提示する必要があります。トゥアレグ族の武装解除、マリへの軍事支援、トゥアレグ族居住地への支援等でパッケージを作っていくことでもしないといけないと思います。