役所にいた際、上司から「総理や大臣に発言してもらう時は、それがそのまま日本の政策になる。したがって、きちんと道筋を付けてから発言してもらわなくてはならない。したがって、総理用、大臣用資料を作る時はそういう気構えを持つべし。」という指導を受けました。総理、大臣ブリーフ用資料は関係者との間で一言一句詰めに詰めて、最後に上司に渡したものです。


 そういう文化に馴染んだ身には、総理や大臣が発言する際は「ああ、この方向で調整が相当程度進んでいるのだな。」という推定を働かせながら聞きます。当選直後、国会の本会議場に座っていた際もそうでした。「今、こんな発言がされているという事は、何処かで調整が進んでいるのだな。」と(勝手に)思っていました....、最初の1ヶ月くらいは。


 ただ、途中から「もしかしたら、違うかも・・・」という思いが頭をもたげ、その一方で「いやいや、それでも最後にワイルド・カードがポケットに入っているかも」という淡い期待が綯い交ぜになってきました。そして、2009年末頃には「どうも、ワイルド・カードはないみたいだ」という結論になりました。とても暗い気持ちになったことを思い出します。


 具体例を書いていませんが、何が言いたいかはご理解いただけると思います。そして、その当事者の方がまた、「元」の立場で誰とも調整せずに外交の場でご自由に話しておられるのを聞くと、表現のしようがない無力感がこみ上げてきます。