「革新的エネルギー・環境戦略」という文書が策定され、昨年9月19日には閣議決定がありました。新政権は見直すと言っているので、今となっては過去の文書になりつつありますが、少し思いだしたことを書いておきます。
この閣議決定 、ちょっと変な文章なのです。まず、主語がないのです。閣議決定ですから日本政府なのでしょうが、必ずしも書いてありません。しかも、「遂行する」目的語が「今後のエネルギー・環境戦略」なのであれば、もっと明確に「政府は、・・・・不断の検証と見直しを行いながら『今後のエネルギー・環境戦略』を遂行する」という文体にしなくてはならないはずです。どういう経緯でこの文章になったのかは知らないのですけども、こういう所にお役所文学の妙があるのかもしれません。
逆に英語 にすると、この辺りは明確です。主語は日本政府ですし、その他の点も大体、上記のような感じになっています。ただ、この英文は下手というか、英語として間違いが幾つかあります。「take into account」の後に「of」は要りませんし、related local governmentsや(最終行の)policiesが無冠詞で来るのは変です。
まあ、そんなことはどうでもいいのですが、一番英訳を読んでショックを受けるのは「革新的エネルギー・環境戦略」を「踏まえ」が「take into account」になっていることです。外務省条約課補佐の経験からは、普通は「based on」や「on the basis of」くらいが順当な訳です。これだと、正に「踏まえ」です。しかし、「take into account」は意味合いとしては「考慮に入れる」くらいです。「based on」とは相当な距離があります。結局、「革新的エネルギー・環境戦略」自体は考慮材料でしかなかったと言えるかもしれません。世論に与えようとした印象、国内関係者への説明、米英仏を中心とする国際社会の狭間でこういう表現になったのでしょう。
まあ、今となってはもう終わった話なのかもしれませんが、何となくこういうところに「根回し不足」、「ドタバタ」があったことを伺わせます。