まず、一件お断りをしておきます。下記のエントリーは、特に私が「早期の解散総選挙を求めている」という趣旨では一切ありません。単に理屈の上で「こうなるのではないか」ということを書くだけです。誤解を招きそうなので、あえて最初に断っておきます。


 今回の総選挙では、一票の格差は2.3倍を超えていました。2009年総選挙の段階で2倍を超えており、同選挙に対する一票の格差裁判の最高裁判決 では「違憲状態」という判示でした。


【判決の主たる部分】

本件選挙時(注:2009年総選挙)において、本件区割基準規定の定める本件区割基準のうち1人別枠方式に係る部分は、憲法の投票価値の平等の要求に反するに至っており、同基準に従って改定された本件区割規定の定める本件選挙区割りも、憲法の投票価値の平等の要求に反するに至っていたものではあるが、いずれも憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず・・・

(略)

したがって、事柄の性質上必要とされる是正のための合理的期間内に,できるだけ速やかに本件区割基準中の1人別枠方式を廃止し、区画審設置法3条1項の趣旨に沿って本件区割規定を改正するなど、投票価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずる必要があるところである。


 そして、今回の総選挙は格差是正のための「立法的措置」は講じたけども、区割等は行われなかったため、結局は2009年と何の違いもない状況で選挙が行われました。


 さて、これを最高裁はどう判断するかなと考えてみました。まず、上記最高裁判決よりも進展した部分としては「0増5減の是正が行われた(山梨、福井、徳島、高知、佐賀での減員)」ということです。これは評価するでしょう。ただし、2012年総選挙が2009年総選挙と同じ状態で行われたことには不満を表明するでしょう。したがって、「違憲状態」とした2009年総選挙に対するものよりも厳しい判示を行うことになるだろうと思います。ただし、「違憲」と言い切るところまではやらないような気がします。「違憲」としてしまうと、無効やり直しになるわけですから、そこまでの大立ち振る舞いは最高裁もやらないでしょう。


 言い換えると、次の最高裁判決は「違憲状態」と「違憲」の間の何処かに落ちるのではないかと思います。上記判決と同じ程度の「(ただの)違憲状態」判示では、現状追認が過ぎ、世論との関係でさすがにもたないでしょう。最高裁もプライドがありますから、もう少し踏み込む必要を感じるはずです。


 そうすると「違憲状態」と「違憲」との間というのはどういう可能性があり得るのかなと考えてみました。実質的にはもう隙間は殆どないと言っていいでしょう。レトリックで新しい表現を作り出すことは無理だと思います。そうすると、あり得る可能性としては「できるだけ早く、この状態が解消されることが望ましい」的な判示になるのではないかと思います。「できるだけ早く」は「(昨年、ちょっとだけ流行った)近いうち」なのかもしれませんし、何か別の表現になるのかもしれませんが、ともかく何らかのかたちで早期の違憲状態是正を求めるくらいのところに落ちるのではないかなと思います。そして、違憲状態を是正するための手法としてまず一番最初に考えられるのは解散総選挙です。


 くれぐれも誤解のないように述べれば、私はこれから4年間浪人生活だと任じていますし、そうポンポン解散総選挙が行われるのがいいとも思いません。今日のエントリーはそういう自分の決意とは別に「理屈の上で考えれば、こんな感じになっていくかもしれないな」という未来予想みたいなものです。