ル・モンド紙に、尖閣諸島問題に関する在フランス中国大使の寄稿が乗っていました。中国の考え方を知る観点から面白いので直訳ではありませんが、私なりの訳をしておきます。ご判断は皆様にお任せいたします。


・ 12年前、自分は外務省報道官に任命され、5年務めた。自分の任期中、よく聞かれたのが日本との関係、特に2つの大きなテーマ、歴史問題と領土紛争である。


・ 2006年、当時の小泉首相が靖国神社を訪問した。これは人類への犯罪の首謀者である戦争犯罪人に敬意を払う行為と同義である。中国人民、そして日本の軍国主義の犠牲者であるアジア人民全体は、そのような行為をどうして受け入れられるだろうか。


・ 欧州も第二次世界大戦に苦しんだ。しかし、ドイツがとった態度は日本のそれとはまったく異なるものであった。自分は、1970年にブラント首相がポーランドを訪れた時の場面をよく覚えている。自分の誤りを認め、正すことができる国が信頼できる国である。過去に対するドイツ人の姿勢は、欧州の平和と繁栄の基礎である。


・ 今、日中関係は釣魚島(尖閣諸島)をめぐって非常に厳しい状況にある。多くの歴史的文書が、釣魚島は中国の一体の領土であることを示している。古文書ということで言えば、フランスの歴史的文書を何を語っているだろうか。


・ 自分は部下にフランスの国立古文書館のアーカイブを調べるように指示をした。古文書館からは、ギヨーム・ドゥリル(Guillaume Delisle)が1772年に、ディディエ・ロベール・ヴォーゴンディー(Didier Robert Vaugondy)が1778年に、そして、アレクサンドル・ブロンドー(Alexandre Blondeau)が1817年に作成した地図を入手することができたが、いずれも明確なかたちで釣魚島が中国に帰属することを示していた。


・ これらの島を中国に返還することは、日本が第二次世界大戦の敗戦国として、戦争後に署名された条約に基づいて行うべき義務である。日中間で1972年に関係正常化が行われ、1978年に平和友好条約が締結された際の交渉において、周恩来、鄧小平といった中国の指導層はこの案件を棚上げすることを提案した。この提案は、当時の日本の首相である田中角栄、福田赳夫からも確認されたコンセンサスとなった。これは、日中関係の正常化を保証する主たる要因であった。


・ 中国は経済を発展させ、人民の生活水準を向上させたいと思っている。そのためには多くのことをやらなくてはならないし、今後数世代努力を継続する必要がある。その観点から、何よりも平和と安定の環境を必要としている。


・ 自分が外務省報道官だった時、日本は釣魚島に灯台を建て始めた。最近はその論理の延長で、島を国有化して火に油を注いだ。


・ 日本と中国は地理的に近接し、文化的な相似もあり、経済的には相互依存している。日中関係の正常化から40年、二国間の貿易規模は3400億ドルに達する勢いである。経済、貿易面での相互依存は深まっており、誰もそれを壊したいとは思っていない。世界経済が減速化している中、日本と中国が手を取り合って協力関係を強化することは今までになく重要である。


・ 中国はこの難局が続くことを願っていない。我々は単に、日本側ができるだけ早く誤りを正すことを望んでいるだけである。ボールは今、日本側にある。