いわゆる公益法人改革の流れの中で「一般法人」というカテゴリーの法人が出来ました。旧公益法人の中で、真に公益性のあるものを(新)公益法人とし、それ以外の法人については一般法人へと移行することになりました。この一般法人は所管官庁があるわけではなく、行政には指導監督の権限がなく、とても行政から非常に遠い存在へとなってしまいます。例えば、旧公益法人制度の時は財団法人日本相撲協会は文部科学省の所管法人でした。したがって、不祥事があった際、北の湖理事長が文部科学大臣にお詫びに伺っていましたが、今はもうそういう関係にはないということです。


 この一般法人というカテゴリーですが、行政との接点という意味では株式会社並みに遠い存在でして、しかも登記のみで設立が可能です。株式会社でも、NPO法人でもなく、本当に非常に簡便な手続きで誰でも法人を立ち上げることが出来るという意味では画期的ではあります。以前、このブログに書きましたが、相続税の脱税目的で一般財団法人を作ることだって可能です。しかも、何となく今の日本の法人制度というのは類型が多過ぎて、もう少し整理できないかなと思わなくもありません。


 さて、この一般法人について、先程から「行政からとても遠いところにある」と書きましたが、実態面で見てみると、収入や事業の大半を公費に依存している一般法人がたくさんあります。私が行政改革のプロセスの中で、とても気にしているのが「以前、非常に行政に依存していた天下り公益法人が、そのまあ一般法人に移行した結果、引き続き役所とズブズブなのに制度上は手がつけられないようになってしまう」ということです。しかし、国民感情として「一般法人になってしまったので、ズブズブでも手が着けられません」では通用しません。このあたりのジレンマをどうやったら解消できるかをこの1年くらい、ずっと考えていました。


(余談ですが、「増税前にやることがある」と主張し、その中に行革を含めようとする方々には、こういう地味な作業に手を貸してほしいと思います。これに解が見いだせるようになると、かなりの進展だと私は思います。)


 ということで、色々と調べてみると、例えば一般社団法人で環境共創イニシァティブという団体があります。この団体は、昨年度だけで経済産業省から公費が6800億円以上流れています。そのほぼすべてが省エネや再生可能エネルギー関係の補助金の支出ですし、団体そのものは天下り官僚がいるわけでもないので目くじらを立てる話ではないのかもしれませんが、環境省の年間予算が2000億円強ですから、その3倍以上の公費をマネージする環境をその名称に含む「一般」財団法人というのはちょっと変な感じもします。どちらかというと、経済産業省が行革逃れのために一般法人としたという邪推もできるわけでして、法人の性質から見ても公益法人と位置付けるべきではないかなと思うわけです。


 その他にも、一般社団法人として、経済産業省・国土交通省系では環境パートナーシップ会議、次世代自動車振興センター、特許庁系として工業所有権協力センターといった団体は、公費が年間100億円以上流れています。NPO法人であっても、農林水産省系で水産業・漁村活性化推進機構というNPO法人には100億円以上の公費が流れています。


 更には、かつて10億円以上の補助金等を受けていた公益法人(正確には特例民法法人)で、一般法人に移行した物を調べてみたところ、平成21年度決算ベースで10億円以上の補助金を貰っていた財団法人国際石油交流センター、財団法人石炭エネルギーセンター、財団法人建設業振興基金はすべて一般財団法人に移行しています。同じく、平成21年度決算ベースで10億円以上の委託費を受けていた財団法人民事法務協会、財団法人日本エネルギー経済研究所、財団法人省エネルギーセンター、財団法人電力中央研究所も、すべて一般財団法人に移行しています。移行後、どうなっているかはもう少し調べてみたいとは思いますが、この補助金、委託費の関係がそう簡単に切れているような気もしません。あと、一般的に経済産業省系が多いなという気がします。


 一般論として「新しい公共」の考え方からして、行政だけでなく、色々な形態の法人が公共の一端を担うことはとても良いことだと思いますし、あまりそこに目くじらを立て過ぎると何もできなくなってしまいます。しかし、巨額の公費が流れていつつも、法人の形態が一般法人やNPO法人であるが故に、例えば天下り等についても野放し状態になるということは看過しがたいものがあります。政府系公益法人について、私はこれまで色々と内閣府と議論を進め、正直なところあと少しで皆様に公表できるくらい良い成果を得つつあります。そして、その後、(語義矛盾ではありますが)政府系一般法人に着手しようと思っていたところです。政府系一般法人は、政府系公益法人に比して、制度上数倍ハードルが高いので知的にとてもエキサイティングなのです。


 ただ、現政権でこれを実現するにはもう時間がないですね。これはライフワークとして、しつこく追います。絶対に何処かで政府系公益法人→政府系一般法人・NPO法人へのルールを作ってみせます。