以前、こんなエントリー を書きました。私はこのJITCOなる組織がやっている技能実習制度は、一部評価できるところはあるものの、既に太宗において「技能の伝達」という役割ではないところに主眼があると思っています(きちんとやっている協同組合等があることは知っていますし、例えば企業の海外進出のための取っ掛かりとしてはとても良い制度だと思います。)。


 ということで、私から厚生労働省に「具体的に地元でどんな企業がこの制度を活用しているのかを知りたいから情報を出してください。」とお願いしました。折角、「我が国で開発され培われた技能・技術・知識の開発途上国等への移転等」という、とても尊いことをやっているわけですから、どんな企業がそういう尊いことをやっているのかを知り、場合によっては見に行きたいと思ったからです。


 答えは「×」でした。まず、国家公務員法上の秘密に当たると言われました。たしかに国家公務員法には職務上知りえた秘密を漏らしてはならないという規定があります。そして、その秘密とは「非公知性」と「秘匿の必要性」という二つの要件を満たす必要があります。何度も言いますが、制度の本義上は技術等の伝達というコスト要因に当たることを自発的にやっている、とても善意の会社の存在を国家公務員法上の秘密に当たるというのは、秘密の範囲としては広すぎるのではないかと私は思います。


 かつ、情報公開請求をしたらどうなるかと問うたら、情報公開法第5条2項イの「公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」に当たるから、具体的な企業名は開示できないということになるとの回答でした。技術の伝達である以上、競争上有利になるから技能実習制度をやっているという推定は働きません(競争上有利になるからやっているのであれば単純労働者として使っていることを推定させますから)。そうすると、何らかの「権利」か「正当な利益」を害するから開示できないということになります。それが何なのか私には分かりません。


 もう一度同じことを言います。企業が技術を伝達する行為というのは、本来の業務にオントップで乗る話ですからコスト要因です。そのコストが追加的に係る事業をあえてやっている企業というのは、制度上はとても善意の固まりのような方々であるはずです。JICAがやっている技術協力と殆ど大差ありません。その善意の固まりである企業の存在を教えてほしいと頼んだら、それは国家公務員法上の秘密であり、情報公開法上も不開示である、となることに違和感を持たない方はいないのではないでしょうか。


 もっと筆を進めると、「全国的に、見られるとまずい現状があるんでしょ?」と疑いたくなるわけです。上記に書いた「コスト要因である技能実習生をあえて受け入れている善意の企業」という前提がないような現状が多くて、それをほじくられるのが嫌だから、できるだけ隠したいということなんだろうと私が考えるのは、多分邪推ではないような気がします。


 私はこの制度は徹底的に見直しが必要だと思います。多分、真の意味で技術の伝達をすることに意義を見出す企業というのは、海外進出をしている、またはこれからしようと考えている企業だけであり、それらの企業が現地リーダーを育成するということはこの制度の下、奨励すべきだと思います。しかし、そうでない企業については、それこそ「競争上の地位」を向上させるためにこの制度を使っているのだろうと思うのが普通の考え方になります。であれば、そこはこんな面倒くさい上に、種々の不都合を糊塗した技能実習生といった擬制の下でやるべきではなく、真正面から日本は単純労働者の受入について検討すべきです。


 誤解がないように言いますが、私は外国人労働者の受入に超前向きな人間です。これからの日本の労働市場で必ず必要になります。しかし、それはこの技能実習生という姿ではなく、もっと真っ当なやり方でやらなくてはいけません。


 野党議員であれば、厚生労働大臣相手にガンガンやるんですけどね。どうも、この日本の国会には、幾つか「与党議員はかくあるべし」というお作法があって、結局与党議員の持つ疑問は解消されないわけです。