私はかつてグルジアという国を旅行したことがあります。人口400万程度で福岡県よりも小さな国ですけど、古いグルジア正教を信じ、とても文化の高い、そして落ち着きのあるいい国だと思います。


 そして、サンボの流れから、レスリングや柔道がとても強い国です。柔道で言うと、古くはバルセロナで小川直也に勝ったハハレイシヴィリはグルジア人です。その前のソ連時代でも「dze(ゼ)」か「ヴィリ(vili)」で苗字が終わっている人は間違いなくグルジア人でして、7-8名の柔道メダリストがいます。最近では90キロ級はアテネで泉を破ったズヴィアダウリ、北京ではチレキゼと、グルジア勢が2連覇で、(柔道界では超有名な)ギリシャのイリアス・イリアディスはそもそもグルジア出身で、ズヴィアダウリとは従兄弟に当たります。そして、今回、66キロ級で海老沼を破ったシャフダトゥアシヴィリもグルジア人。たった400万人の国でこの実力、何が言いたいかというと「柔道王国」だということです。


 私は東京で柔道関係者と話す時、よく「国内でばかり練習するのではなく、(グルジア首都の)トビリシあたりに長期で武者修行で出させた方がいいですよ。あの柔道スタイルをまねする必要はありませんけども、あのスタイルに真の意味で慣れる必要があると思います。」と話しています。えてして帰ってくる反応は「気持ちは分からないでもないが、治安は、飯は、言葉は・・・???」という感じです。短期間では行っている選手がいるようですけども、2-3か月と言わず、半年以上、トビリシで修業すればいいと思います。この映像 はイラン選手と瀧本誠さん(後の金メダリスト)の試合ですけども、こういう攻めにはある程度の慣れは絶対に必要です。


 外国からは日本によく修行に来ている選手がいます。その中でメダリストになっている選手も多々います。それだけ日本柔道界は強いですし、伝統もあります。しかし、日本が望むと望まないとにかかわらず「柔道」から「JUDO」への流れは強まっています。その「JUDO」の一つのあり方がグルジアにはあると思いますね。それを否定していてはいつまで経っても苦手感を持つだけで終わってしまいます。


 旅行して結構ディープな経験をした者として言えば、危なくもないし、飯はそこそこ上手いし、文化レベルは相当に高いです。言葉は分かりませんし、マスターするのは大変ですけど、日本に修業に来る外国人選手はそのハードルを越えているわけですから、その程度の事で泣きを入れてはいけません。


 かねてからの持論、「日本柔道界はもっとグルジアに選手を修行に出してみよう」でした。