憲法審査会で発言しました。今日は第二章、いわゆる憲法第9条に関するところです。傍聴の方は多かったですね。色々な論点がありますが、私からは以下のような話をしました(


【第一回目】

● 憲法9条を安全保障や国際協力に関する規定と位置付けることには違和感がある。憲法というのは国の大本である一方で、安全保障とか国際協力というのは政策のバラエティである。更には、今の日本では個別の事例について「憲法違反である」みたいな議論をするが、憲法というのはそういうものではないのではないか。そういう意味で、政策のバラエティたる安全保障や国際協力については、大本たる憲法の下にある個別法で規定していけばいいと思う。


(注:自民党はそのあたりはすべて安全保障基本法に落とし込もうということのようです。アプローチとしては同意するのですが、自民党の憲法案は法律事項に落としている箇所がとても多くて、その部分はちょっとやり過ぎじゃないかなと思っています。まあ、憲法案を出し切れてない政党の議員から言われたくはないでしょうが。)


● 自衛権については個別的、集団的という区分をして訓詁学をやることはあまり意味がない。国連憲章第51条の自衛権の規定を読むと、たしかに英文では区分しているように読めるが、フランス語、スペイン語では(言語体系による部分が大きいが)、まず、自衛権を有することを書いた上で、それが個別的であろうとも、集団的であろうとも、といった感じに読める。自衛権は一体の概念と解し、日本はその中で自国を守るために必要なものを過不足なく選び出していけばいい。その中には集団的自衛権と現在概念されているものも入るだろうし(我が国上空を越えてアメリカに向けられ大陸間弾道ミサイルの撃墜)、もしかしたら個別的自衛権と概念されるものでも不要なものもあるかもしれない。


● 「武力行使との一体化」の議論は日本に固有の考え方であり、国際的には全く通用しない。日本がそれを持ち出す度に、そういう概念のない諸外国との関係で問題が生じる。そういう歪な問題が生じなくなるような規定は憲法に盛り込んだ方がいい。


● 集団的自衛権の議論に際して、よく「保持しているけど行使できない、というのはおかしい」という議論があるが、これは「国際法で認められているものはすべて国内で施行すべし」という議論である。それはおかしい。国際法で認められているものを、どのように国内で実施するかというのは偏に日本国の意思決定に属する問題である。当然にして全部実施するというのがスタンダードではない。


【第二回目】

● 非核三原則の法制化については、やっていいのではないかと思う。生物、化学兵器ではそういう国内法がある。原子炉等規制法で核物質の管理に厳格な規制がなされているおり、非核三原則については実質的には担保されている。ということは、新規に法制化したところでシンボリックな意味合いしかないのであり、であれば姿勢を示す観点からやっていいのではないか。


● 核兵器保有の議論くらいはしていいではないかという提起がある。しかし、仮に核兵器保有すると、NPT体制の中で最劣等生のところまで落ちていく。今、日本は最優等生であり、だからこそ原発の廃棄物の再処理等が認められている。しかし、最劣等生に落ちてしまえばそもそも原子力発電そのものが行えなくなる可能性が高い。また、世界には核兵器を持ちたいと思っている国が結構あるが、日本が保有すれば核保有ドミノがどんどん倒れていく、そのリスクを取れるのか。こうやって考えると、保有の議論はやってもいいが、やった瞬間に終わると思っている。


● 非核三原則の法制化はやっていいと思うが、核搭載艦の領海通過についてまで「持ち込ませない」に含めていることには強い違和感を持っている。


 外務官僚の経験から、この件はとても思いがあります。私の意見が絶対に正しいなんて言いません。異論、反論大歓迎です。なお、今回の石破議員の5回の発言、とても感動しました( )。