国の出先機関改革で、国土交通省、環境省、経済産業省の三省の出先機関を関西、四国、九州といった広域連合に移管する話が決まりそうです。国道、一級河川といった国の事務であっても、広域連合で対応出来るものについてはどんどん移管すればいいと思います。


(ちなみに政令指定都市にいると国と地方の二重行政ではなく、国と県と市の三重行政になっていることが時折あります。例は出しませんが、一つの一級水系でここまでが市、ここまでが県、ここから先が国みたいな話があってとてもやりにくそうに見えます。地方分権の際にとかく忘れられがちな県と政令指定都市の関係、もう少しライトを当てなくてはなりません。)


 既に移管される事務が「法定受託事務」だと国の関与が強く残り、地方分権としては不十分だといった指摘も出てきています。ここに至るまでに色々な権限争いがあったのだろうな、ということを感じます。


 その中で私が思うのは、基礎自治体、都道府県、広域連合という三層構造になることの意味です。多分、基礎自治体側から言わせると「都道府県に頭を下げ、国に頭を下げに行くだけで鬱陶しいのに、これに広域連合が入ってくるのか。」という不満があるでしょう。


 いつもフランスの話ばかりで恐縮ですけども、あの国ではミッテラン大統領時代の地方分権改革で基礎自治体(commune)、県(departement)に加えて、地方(region)という単位に自治権を与えました。私の住んでいたリール市はノール県に属していましたが、お隣のパ・ド・カレ県と合わせて、ノール・パ・ド・カレ地方を構成していました。基礎自治体と県だけでは対応できない事務があるから、元々は出先機関であった地方を自治体として確立し、その知事と議会を公選制にしたということです。2002年に教育、医療、インフラあたりの権限を移管した後、その後、鉄道とかも移管されていっています。


 ちなみに、フランスという国は基礎自治体の数が多い国として有名です。古いデータだろうとは思いますが、昔、読んだ本でEU全体で70000近い基礎自治体があるのに比して、そのうちの半分弱の30000強はフランスにあるという記憶があります。あの国では80人くらいの基礎自治体が結構あります。30000強の内、大半は1000人以下の自治体のはずです。その自治体すべてに市長・町長・村長に相当する長と議会があります。


 しかし、理解いただけるようにそんな小自治体単独でできる自治業務というのはとても限られます。ゴミ収集、水道といったものであっても広域自治体(intercommune)を構成しないと全くやれない状態です。しかも、1999年社会党政権時代に当時のシュヴェヌマン内相が広域連合の取り組みを推進したため、小自治体のみならず都市圏でも大都市圏でもこのような広域の取り組みが広がっています。勿論、日本でも広域事務はかなりありますが、フランスはそれが国土全域に常態化して、基礎自治体、広域、県、地方と4層構造(場合によっては5層構造)にすら見えてしまうということで、地方自治がとても輻輳しています。そうなってくると、権限と財政の問題が上手く調整がつかなくなっています。


 また、県と地方の関係でも、国からすると地方を重視したいけども、どうも権限も財源も不十分ということで噛み合っていません。こういう観点から、サルコジ大統領は元ボスのバラデュール元首相に地方分権改革のための委員会を構成してもらい、報告書が出ています。これらの細かい話はココ が詳しいです。


 あれこれとフランスの話を書きましたけど、何が言いたかったかというと「地方分権はいいけど、ある程度簡素化する力を働かせないと単に屋上屋を架すだけで意味がない」ということになります。私が福岡県のある自治体の首長だったら、「この案件は県、この案件は広域連合、この案件は国。しかも、地域サービスの一部にも広域事務がある。面倒くさい。」と思うようになると思います。ともすれば、その提供する行政サービスに応じて、都道府県、市町村レベルで色々な合従連衡があっていいとは思いますけども、常に簡素化していく力がなければ、フランスのようにお手上げ状態になってしまうということすらあります。本当に個別の行政サービス毎に適当な規模の地方団体を見つけようとすると、それはそれは膨大な数の地方団体を作らなくてはならなくなります。結果として、財源が伴わない地方自治団体が出てきたり、権限の輻輳の調整がつかなかったりと、面倒くさくなっていきます。何処かである程度は強引に整理しなくてはなりません。


(繰り返しになりますが、本当はこの中に政令指定都市という特殊カテゴリーも視野に入れなくてはなりません。政令指定都市選出ですと、県との関係を見る時にとても複雑かつ意味のない権限配分に直面することが結構あります。)


 私は道州制で広域連合の取り組みを本当に進めるのであれば、府県の存在意義にまで踏み込まなくてはならないと思います(東京都は特殊な存在であり、北海道は存在そのものが広域なので。)。最近、政令指定都市・中核市クラスの自治体と道州の二層構造って実は理想的なんじゃないかなと思ったりもしますが、個別の事務の整理等について精通しているわけではないのであまりこれ以上は踏み込みません。


 ともかく、地方自治を進めるがあまり、結果として非効率になったということがないようにしなくてはいけませんね。陳腐な結論でした。