参議院で問責決議が可決されました。法律上は根拠がないものですが、その効果たるや、一院から「うちの院ではあなたを受け入れない」と言われるに等しいわけですから絶大なものがあります。これは民主党が野党時代にも使った手法ですから、ある意味倍返しでやられているということです。衆議院の今任期中、こういう手法が出てくることはやむを得ないと思います。


 同様に特例公債法が国会を通っていません。これは何のことかと言うと借金をするための権限を与えてもらう法律です。予算が成立しても、借金をする権限がないと今の予算は回らないわけですから、現時点では予算はとても脆弱な根拠の下で執行されているということになります。実務上は国債ではなくて、財務省の短期証券で回しながらやっているということでして、借金の多い日本でこういう危ないやり方をしているといつか危ないことになるのではないかと不安になります。私が財務省の理財局長なら、毎日の国債の利率が不安で仕方なくなると思います。これは自公時代は、参議院で否決されても衆議院での2/3での再可決という手法がありましたから、そこまでクローズアップされたという感じはありませんでした。今は連立与党で衆議院の2/3を有していないため、この手法がずっしり効いています。


 最初に明確にしておくと、かつてこの2つの手法を民主党が野党時代に使った以上、私は衆議院の今任期中、野党が同様の手法を使うことについてはある程度の諦念感を持っています。是認することは出来ないのですけども、「やった以上、やられるのは仕方ない」というくらいの諦めにも似た感情があります。


 その点を明確にしたうえで言うと、本来、政権は衆議院での信任によって選出されるということ、予算の可決には衆議院の優越が認められていること、という事情に鑑みれば、問責と特例公債法の手法は今の憲法が想定していなかったことだろうと思います。憲法の理念として、衆議院の優位性を規定している以上はそこを尊重するような運用をすべきだと思うのです。ここは今の憲法や法律の穴の部分でありますので、憲法や法律改正というよりも運用で対応すべきものです。


 何人かの議員や有識者もすでに同様の見解を表明しておられますけど、次期総選挙の直前に主要政党で「問責はやらないし、提出されても賛成しない」、「予算と一緒に特例公債法は可決する」ということを合意すべきだと思います。次期総選挙後、どういう政権の構図になるのかは分かりません。すべての主要政党が与党になれる可能性があるでしょう(私も自分の信ずるところに従って頑張ります)。そういうタイミングだからこそ、このディールが成立すると思うのです。そういう幾許かの行き先不透明感があるからこそ、「自分が与党になった時、この状態が続くのはたまらん」と皆が思うわけでして、ディールが成立しやすくなっています。


 いずれにせよ、総選挙は1年半以内にはあります。だからこそ、その後のことも考えておかなくてはなりません。この停滞した状況を打破するには、こういう仕掛けを現段階から考えておくべきであろうと真摯に思います。