消費者問題特別委員会での質問です。20分と短い時間でしたので、内容的には不十分なところがありますが、私の力量ではこれが限界でした。ただ、本件は技術的にもとても興味深いところがあるテーマなので、これから深めていきたいと思います。


 質問の内容についてのご判断は各位にお任せいたします。


○青木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。緒方林太郎君。


○緒方委員 民主党、緒方林太郎でございます。

 この消費者特別委員会、貴重な質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。ただ、二十分でありますので、少しスピードを上げながらやっていきたいというふうに思います。

 きょうのお題は、私、最近TPPとか経済連携でもよく取り上げられる遺伝子組み換え作物の話について、消費者庁にお伺いをいたしたいと思います。

 遺伝子組み換え作物の表示の問題というのは、これから恐らく、経済連携を進めていったり、そもそも日本の国民の安全という観点から、大きな課題になってくると思います。

 そこで、まず一番最初に農林水産省にお伺いをいたしたいのが、最近、農林水産省の方で遺伝子組み換え作物に関する意識調査というのをやられていると思います。国民の皆様方がこの遺伝子組み換え作物についてどういうふうに認識をしておられるか、御答弁をお願いします。


○藤本政府参考人 お答えを申し上げます。

 先生御質問の遺伝子組み換え農作物に対する国民の意識につきましては、平成十九年度に農林水産省が全国の不特定の男女約一万人を対象に実施した、遺伝子組換え農作物等に関する意識調査というものであるというふうに承知をしております。

 この調査の中で、遺伝子組み換え農作物に対する不安感についてお尋ねを申し上げておりますけれども、七〇・九%の方が不安があるという回答をされた一方で、遺伝子組み換え技術につきましては、四一%の方々が農業分野への期待感を持つというような回答をされたというふうに承知をしているところでございます。


○緒方委員 ありがとうございました。

 七〇%を超える方が何らかの形で、やはり遺伝子組み換え作物、ちょっとどうなのかなというふうな懸念を持っておられるということは、これは今の農林水産省からの御答弁のとおりであります。

 その一方で、この遺伝子組み換え作物というものの例えば表示を強化しようとかいう話が出てくると、WTOでどうだとか国際ルールでどうだとかいう話が必ず出てまいります。これはWTO協定の中のTBT協定にひっかかるテーマでございまして、その派生したところで、各経済連携協定でも、TBTの項目が立つときには議論の対象になる、ならないという議論がございます。

 しかし、私思うんですけれども、そもそも、遺伝子組み換え作物の表示を強化する、例えば今よりもより多くの情報を提供するとか、そういうことを国内で法制化したと仮定するときに、それは国際条約上、特にWTO・TBT協定との関係で何か不都合が生じるのかどうかということを外務省にお伺いしたいと思います。


○香川政府参考人 お答え申し上げます。

 TBT協定に食品表示に関するルールが規定をされておりまして、そこでは、正当な目的の達成に必要なもの以上に貿易制限的なものを課してはいけない。正当な目的というのは、人の安全でありますとか健康でありますとか、環境保全でありますとか、そういう目的が例示されていますけれども、それ以上に貿易制限的ではいけないと。それから、内外無差別、国内それから海外との関係で無差別に扱わなくてはいけない。

 これが一般的に規定されているものでございます。


○緒方委員 ありがとうございました。

 つまり、正当な理由があって、かつ内外無差別であれば、措置をとることが禁じられるものではない、現行の国際条約のもとでそういったことがないということであります。

 振り返ってみまして、国内の現在の遺伝子組み換え作物の表示というのは、二種類に分かれるんですね。たんぱく質の組成が加工の過程において残るものと残らないもので分かれる、現在の法制度上そうなっているわけでありますけれども、実際に、その表示の中で、遺伝子組み換え作物を含むケースであっても表示の義務がないものというのがあると思います。幾つか例があると思いますので、消費者庁、御答弁いただければと思います。


○松田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、遺伝子組み換え作物につきましては、その品種ごとに科学的な評価を行いまして、安全性が確認されたものだけが輸入や流通等ができる仕組みとなっております。現在、大豆、トウモロコシなど八種類の遺伝子組み換え作物の国内販売が認められておりまして、食品衛生法及びJAS法に基づきまして、これらの八作目、それからその加工食品でございます三十三の食品群につきまして、遺伝子組み換えのものと、これと不分別のものに対して表示を義務づけているところでございます。

 今御指摘ございました、大豆油やしょうゆ等のように、組み換えられたDNA及びこれによって生じたたんぱく質が製造工程で除去、分解されまして、これらを検知できない加工食品につきましては、当該加工食品の原材料として遺伝子組み換え作物を使用しているか否か技術的な検証が困難であるため、義務表示の対象としていないということでございます。


○緒方委員 スーパーに行って、大豆であったりトウモロコシであったりという、いろいろな遺伝子組み換えを使っているものを見るときに、遺伝子組み換えを含むと書いてある商品というのを、私はこれまで、スーパーでいろいろなものをひっくり返して見てみても、見つけたことがございません。

 しかしながら、統計をいろいろ見ていると、遺伝子組み換え作物、結構輸入されているんですね。相当程度輸入をされている。なのに表示がないというのは、先ほど次長の方からもありましたとおりで、組成が残らないものについては表示の義務がないということがある、まずここは押さえる必要があると思います。

 それ以外にも、組成が変わっていないものであっても表示の義務がないものがありますね。何でしょう、消費者庁。


○松田政府参考人 今申し上げましたとおり、大豆、トウモロコシなど八種類の遺伝子組み換え作物とその加工食品三十三食品群につきまして、遺伝子組み換えのもの及び不分別のものに対して表示を義務づけておりまして、このうち加工食品につきまして、多種多様な原材料を使用し、さまざまな加工段階を経るため、全ての原材料について遺伝子組み換え食品であるか否かを確認されることは困難ということから、原材料の重量に占める遺伝子組み換え食品の割合が上位三位以内、かつ五%以上となっているものに限りまして、表示義務の対象といたしておるところでございます。


○緒方委員 ということは、もう少し整理をいたしますと、組成が残らないものについてはそもそも表示の義務がない、組成が残るものについては表示の義務があるということですけれども、これをもう少し深めて考えていくと、何の表示もないもので、表示の義務がない、組成が変わっているものについては、表示がないときは、恐らく相当な可能性で遺伝子組み換えが含まれているということが推定されると思います、かなり輸入しているので。輸入しているけれども表示がないということは、恐らく表示がないところに使われているというケースが大半であろうと思います。逆に、組成が残っていて表示の義務があるもので何も書いていないケースというのは、これは含まれていないということであります。

 つまり、ここまでわからないと、実際には遺伝子組み換えがどうなっている、表示がどうなっているということではわからないんですね。けれども、これを知っている国民の方というのは恐らく相当に少ない。消費者問題に相当関心がある人でないと、ああ、これは表示のない、表示の義務がない品目ですねと。ここで表示がないということは、けれども、遺伝子組み換え作物を相当輸入している現実を見てみれば、これは恐らく遺伝子組み換え作物でつくった商品であろうというふうに思わなきゃいけないし、逆に、表示の義務があるものであれば、何も書いていなければ、ああ、含まれていないんだな、そこまで判断することを今消費者に強いているわけですね。今、消費者にそこまでの知識を持ってくれと。

 もっと言うと、先ほど、五%、上位三位という話がありました。加工食品で上位三位までに含まれていなければということですが、これは物すごく限界事例を申し上げると、計算を立ててみると、二五%未満までは含まれている可能性があるということですね、上位四番目に入ればいいわけですから。遺伝子組み換え作物(表示の義務があるもの)であっても、上位四位であれば、上から数えて四位であれば表示の義務がないということは、物すごく限界事例を見てみれば、二五%近くまでは、二五%未満までは含まれているということがあり得る、理論的に。そういう理解でよろしいですか、消費者庁。


○松田政府参考人 今委員の御指摘は、多分、二五%というのは、上位三位が二五、二五、二五で、八作物のうち、例えばパパイヤ、あとリンゴとミカンと全部一緒にして、一対一対一対〇・九九、そのパパイヤが二四%だったときにそれは含まれないではないかという御指摘かと思いますが、理論的にはそういうことが全くないとは言えません。

 これはカットラインとして、現実に本当にそういった等分的なことがあるかどうか別にいたしまして、どこかでカットラインを設けなきゃいけないということで、先ほど申し上げましたように、上位三位かつ五%以上になっているものということで今基準を定めておるということでございます。


○緒方委員 今の答弁も含めてもう一度整理をすると、組成が残らないもの、表示義務がないものについては、そもそも表示義務がないから知り得ない。表示義務があるものについてでも、五%未満、場合によっては、もう本当に究極のケースを見てみれば二五%未満までは、仮に組成が全く変わっていないものであっても、本来、表示の義務があるケースであっても、これを知り得ることができないというふうになるわけであります。

 こうやって考えていくと、この理屈を全部知った上でないと、消費者の方々が遺伝子組み換え作物に対して、先ほど七〇%を超える方が不安があると言われたけれども、ここまで知らないと、実際には、自分は食べたくないという人、何があろうが、遺伝子組み換え作物を食べることは組成が残っていようが残っていなかろうが嫌だという人の期待に応えていないと思うんですよね。全く応えていないと思います。

 組成が残っていないから、検出できないから、だから不表示だと言っているけれども、恐らく、先ほど農林水産省の方でお答えいただいた七〇%を超える方は、そんなことはどうでもいいんだ、ともかく使っているのが嫌だという方が七〇%の中に相当程度おられると思います。

 ちなみに、私個人でいいますと、私個人は、遺伝子組み換え作物のものを食べること、何らいとわない人間なんです。全然いといません、ばくばく食べると思います。ですけれども、これは自由な選択を消費者にやはり提供すべきだと私は思います。

 いかがでございますでしょうか、大臣。


○松原国務大臣 今、緒方委員のおっしゃっている意味は、非常によく理解できるところであります。

 お話がありましたように、上位三位以内かつ五%以上というものが表示義務となっているわけで、これを書いた段階では、大体この両者でという話であって、今、緒方委員がおっしゃったような、二三%で四位というのは恐らく想定していないと思うんですよね。だから、そういった意味では、こういったことも含めて、若干の研究の余地はあるのかなというのが、議論を聞いていて率直に感じたところであります。


○緒方委員 ともかくわかりにくいのが今の制度でありまして、今、消費者庁の方で、表示のあり方について、一元化について検討をされていると思います。その中で、ともかくわかりやすいものを、先ほどみたいに、裏にある理屈を全部知らないと今から我々が食べようとしているものが遺伝子組み換えを使っているか使っていないかというのがわからないような制度では、私はよくないと思います。

 実際に、こういうふうなことにして表示を強化することについても、正当な理由があり、内外無差別であれば国際条約違反になることはない、そういうお話でありました。これから一元化の中で、わかりやすくて、そして消費者の自由な選択に資するような、そういう制度設計をやっていただきたいと思うんですが、大臣、もう一度、いかがでございますか。


○松原国務大臣 現行の遺伝子組み換え食品の表示は、平成九年の五月に設置された、学識経験者、消費者、生産者、流通業者及び製造業者等の代表者から成る食品表示問題懇談会遺伝子組換え食品部会において、表示の信頼性や実行可能性の観点を含め、約二年四カ月にわたり検討され、取りまとめられた「遺伝子組換え食品の表示のあり方」に基づき定められたものであります。

 このように、有識者等の意見に基づき総合的に検討された上で定められた制度であることに加え、遺伝子組み換え食品は安全性が確認されたものだけが輸入や流通等ができる仕組みとなっておるということと、遺伝子組み換えでない旨の任意表示が付された食品も相当程度流通していることも事実であります。

 しかしながら、いわゆる表示の一元化の議論の中で、私は、この表示の一元化というのは、やはり消費者の知る権利を含めて確立をすることにつながると思っておりまして、また、委員の御指摘も非常に重要な指摘だろうというふうに思っております。今後の検証技術の向上や関係者等の意見も踏まえ、遺伝子組み換え食品に係る義務表示のあり方についてはさらに検討してまいりたいと思います。


○緒方委員 ありがとうございます。

 消費者の皆さん方の中には、嫌なものは嫌だということがあると思いますし、それは、仮に科学的な検証をした上で、これは大丈夫ですと言っても、嫌なものは嫌だと。その期待に私はある程度応えるべきではないかなという思いを持っております。なので、今、表示の一元化の話というのはとてもいい取り組みをされているというふうに思いますので、本当にいい意味で一元化、一つにまとめる努力をしていただきたいし、その中で強化をしていただきたいというふうに思います。

 そして、私は、TPPについては賛成派の方に属しているんですけれども、ただ、その中で私が絶対これはだめだと思うのが、アメリカ側からは遺伝子組み換え作物の表示についてさらに緩和しろというような話が出てくるんじゃないか、そんな懸念も国内には相当程度ございます。私は、これはやるべきではないと思います。

 やはり国民の問題意識に正しく応えるということが行政、そして政府、国の役割でありまして、その自由な選択を国民が望んでいると思います。自由な選択をしたい、不安があるから、七〇%を超える方が不安を持っているんだから、その結果として、やはり自分が食べるものは何を食べているか知りたいということはあると思います。

 なので、これは所掌ではないと思いますけれども、松原大臣に、これからの臨むべき経済連携協定、さらにはTPP、表示について、ゆめゆめそれを弱くするような、緩めるようなことは、炎の大臣、松原仁、絶対やらないというふうに御答弁いただければと思います。

 以上でございます。


○松原国務大臣 消費者の利益を守るのは我が消費者庁の使命であるし、任務でありますから、当然、こういったTPP交渉においても消費者の立場から国益を最大限追求するということでありますから、今委員おっしゃった観点から、消費者のメリット、利益がきちっと担保されるよう、全力で取り組んでまいります。


○緒方委員 二十分というのは早いですね。

 これは恐らく全国津々浦々、消費者の方々の問題意識は高いと思います。きょうは質問いたしませんでしたが、実際に日本の制度とEUの制度を比べてみると、EUの方が物すごい厳しいんですね。EUは、例えば餌に使う飼料でも表示の義務があるとか、そして、先ほど五%と言っていた数字は、EUでは〇・九%です。非常に低い数字、非常に厳しい基準が適用されている。EUにできて日本にできないということはないだろうと思います。

 消費者の自由な選択と、不安を払拭するため、その観点から頑張っていただくことを御祈念申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。