内閣官房報償費の情報公開について、大阪地裁で一部公開を命ずる判決が出ました。内容は色々とあるのですが、大括りで言うと、支払額と支払時期の一部については相手の特定に当たらないので不開示とする理由はないというものでした。具体的に支払先や使途が明記されていなければ、開示の対象とすべきということでした。


 大体、年間、内閣官房で14億円、外務省で30億円程度が計上されています。これを多いと取るか、少ないと取るかは判断が分かれます。噂では官房長官の席の後ろに金庫が置いてあり、そこには常に決まった額の現金が置かれているそうです(見たことはありません)。


 報償費というのはいわゆる機密費とも言われていますが、分類としては内閣官房報償費、外務省報償費、捜査報償費ということで、内閣官房、外務省、警察にそういった内容のものがあります。まあ、これまでも外務省から内閣官房への上納(財政法違反のおそれ)、プール金、疑わしい使途といった問題点が指摘されてきています。2009年政権交代後に当時の官房長官が2.5億円引き出したという事例はメディアでも相当に取り上げられました。


 たしかに色々な問題がないとは言えない費目です。領収書を不要とし、すべてがブラックボックスでいいというのはモラル・ハザードを惹起することになります。どう考えても報償費でやらなくてもいいじゃないかと思えるものもあるでしょう。


 ただ、そういう問題をあえて知った上で、この報償費については支払額、支払時期の一部だけであっても公開することには私は否定的です。今回の判決で開示命令が出た部分というのは、せいぜい一番細かいものでもある月の支出総額か、繰入期間の間の総額くらいなので、個々の事例について支出額、支出先の特定とまでは言えません。それが分かっていても、どうしても公開には手放しで前向きにはなれません。特に各繰入の間がとても短い場合は事実上、いつ支出したのかが特定されることになります。ある限られた時間に集中的に報償費を使っている時はどんどん繰入れるでしょうから、大体支出の時期が特定されています。そして、そういう時期は何か大きな出来事が起きているでしょうから、その出来事と支出のリンケージが相当に明確になってしまいます。


 あえて、それでも公開するというのであれば、非常に限られた内容のものを50年くらいの期間を置いて、関与した人が概ね鬼籍に入っているか、相当な高齢になっているという推定が働くのであれば、まあギリギリ検討してもいいのかなと思います。情報公開法で決められている最長30年ではちょっと短いような気がします。簡単に言えば、支出目的そのものが「歴史」になるくらいの期間が必要だということです。


 勿論、使途として議員の旅行の餞別みたいなものはダメですので、それは内閣官房なり、外務省なりである程度の(非公開の)内規を作るくらいの事はしておいた方がいいでしょう。あとは日本国の国務大臣たる内閣官房長官や外相を信じていただくしかありません。ちなみに、非常に限られた回数ではありますが報償費に携わったことがある私の経験では今、外務省ではかなり厳格な運用がなされています。


 本件については、どうしても筆が重くなります。「国民の税金の使途を公開できずに申し訳ありません。ただ、政治、外交の世界には色々あるわけでして、何卒平に平にご容赦を。」としか言いようがありません。こんな雑なことを書くとお叱りを受けることは重々承知しているのですけども。