我が選挙区に若戸大橋という橋があります。若松区と戸畑区を結ぶ生活道路の色彩の強い橋です。勿論、私はヘビーユーザーです。通行料は普通車ですと100円です。この橋は我が街のシンボルであり、私はこの橋を見る度に「鉄の街北九州」を強く感じます。


 元々、道路公団が建設し、1962年9月27日に供用開始されたもので、当初、建設費用の償還期限は30年後の1992年9月26日までとなっていました。実は今年が50周年の記念ということで色々な催し物も予定されています。その後、1990年3月31日に4車線化の工事が完成し、拡張部供用開始されました。4月1日から料金改定とともに償還期限が21年延長されて2013年9月26日までとなりました。更に、2005年-2006年にかけて、管理者が日本道路公団→北九州市→北九州市道路公社 に変更されています。2006年8月1日 - 新若戸道路と一元管理することを前提に通行料金が値下げされ、これに伴い償還期限が2029年6月13日までに再延長されています。


 そんな中、上記にも書きましたが、この橋は「生活道路」としての色彩が強いため、地元、特に若松区では「無料化」の運動が昔からあります。色々と調べようと思ったら、国会のサイトから関係する古文書が出てきました。共産党の衆議院議員(当時)が提出した質問主意書で若戸大橋に言及したものが2つありました。当時は道路公団が管理していたので、国が答弁する立場にあったということですね(今はもう管理については国とは関係のない橋です。)。


 ちなみに「質問主意書」というのは、かなり格の高い質問の形式でして、形式上は国会議長から内閣総理大臣に対して送付され、答弁は内閣総理大臣から国会議長へと戻ってくるものです。答弁書は一言一句、内閣法制局で調整されます。


 質問主意書については、個人的なコメントを付すことなく、質問・答弁をそのまま載せます。また、現在の若戸大橋を管理している北九州道路公社の平成22年度における損益計算書 貸借対照表 は以下のとおりです。


 今日は基本的には個人的意見を入れることなく、事実関係の羅列でした。


【昭和五十一年五月十四日提出 衆議院議員田代文久君提出「北九州市若戸大橋の無料化と交通渋滞の解消問題に関する質問主意書」】

(質問)

 若戸大橋は、昭和三十七年九月に総工費五十一億円で完成して以来、十三年余を経過した現在、地元では通行料の無料化と交通渋滞の解消問題が大きな社会問題となつている。
 すでに、国や道路公団などに解決策を図るよう求めた署名運動が広範な住民の手により展開されており、さらに二月末には北九州市議会の超党派の代表が上京して建設大臣に直接陳情を行つている。


 そこで次の事項について質問いたしたい。


一 当初の償還計画より車両の通行量実績は相当上回つていると聞いているが、その場合、償還期間(当初三十年)は大幅に短縮されると思うがどうか。
  さらに昭和五十年度実績分までの通行料金収入総額、利子負担総額、維持管理費総額、既償還額、償還残額を明確にすること。


二 償還期間が短縮されないとすればその主な原因は何か。


三 若戸大橋は、建設当初は若松市と戸畑市間ということだつたがその後の五市合併により、北九州市若松区と戸畑区にまたがる橋となつており、そのために、市民生活上、橋の比重が極めて高くなつているのである。いわば橋が「市民の足」となつており、市民はその利用を余儀なくされている。
  従つて料金徴収の条件を定めている道路整備法第三条第一項の2に記述されている内容(通常他に道路の通行又は利用の方法があつて当該道路の通行又は利用が余儀なくされるものでないこと)に反すると思われるので料金徴収を廃止し、無料化に移行すべきだと思うがどうか。


四 当面の交通渋滞(渡橋時間が普通十分位なのに朝夕のラッシュ時には一時間近くかかる)の解消のために、国が責任をもつて橋進入口周辺部等の改良工事を施行するか、あるいは北九州市が独自に改良工事の事業を起こす場合に高率の国庫補助をするなどの緊急措置をとるべきだと思うがどうか。


(答弁(昭和五十一年六月八日受領))
一及び二について
 御指摘のとおり、実績交通量は、計画交通量を相当上回つているが、

(1) 軽自動車等の低料金の車両の利用台数が多いこと、回数券利用率が高いこと等のため、料金収入は、交通量ほど計画を上回つていないこと

(2) 諸物価及び人件費の高騰のため、維持、管理に要する費用が計画を著しく上回つていること等の事情もあり、償還期間については、なお、今後の推移を見まもる必要がある。

 御質問の額は、それぞれ次のとおりである(昭和四十九年度までは実績、昭和五十年度は、実績見込みによる。)。
イ 通行料金収入総額 八十九億四千二百万円
ロ 利子負担総額 五十二億七千五百万円
ハ 維持管理費総額 三十億四千六百万円
ニ 既償還額 六億二千百万円
ホ 償還残額 五十六億八百万円


三について
 本件有料道路については、洞海湾を陸路によりう回する等他に道路の通行又は利用の方法があつて、当該道路の通行又は利用が余儀なくされるものでないから、道路整備特別措置法第三条第一項第二号の要件に適合している。


四について
 若戸大橋周辺における朝夕ラッシュ時の交通渋滞に対処するため、現在、建設省、日本道路公団、福岡県、北九州市等の関係機関において、関連道路網を含めて、当面の措置及び長期的な対応策について協議を行つているところであり、政府としては、この協議の結果を踏まえて所要の対策を検討したい。


【昭和五十八年七月二十三日提出 衆議院議員小沢和秋君提出「若戸大橋の通行料金無料化に関する質問主意書」】

(質問)

 北九州市若松区と戸畑区を結ぶ若戸大橋は、去る昭和三十七年日本道路公団により有料道路として建設された。
 その後、利用者は年々激増し、今日では地域住民の不可欠の通勤・生活道路となつている。また産業道路としても重要な役割を果している。しかし利用者は、その渡橋のたびに料金を徴収されるので通勤者などにとつて料金は重い負担となつており、無料化の声は切実なものがある。


 よつて次のとおり質問する。


一 道路整備特別措置法第三条第一項第二号によれば、有料道路として建設を許可する場合は「通常他に道路の通行又は利用の方法があつて、当該道路の通行又は利用が余儀なくされるものでない」ときに限られている。政府当局はこれまで洞海湾岸を一周する道路が、この通常他に利用できる道路にあたると説明してきた。しかし、この道路は距離的にも時間的にも若戸大橋を利用する場合の数十倍を要し、およそ代替性をもちえない。
 そもそもこの号に該当する道路は当時からこの地域に存在しなかつたものであり、若戸大橋を有料道路として建設したことが根本的に誤りだつたのではないか。


二 従つて、この大橋は直ちに一般道路に切りかえ、無料で地域住民の利用に供すべきものではないか。


三 この大橋の利用者は年々激増し、当初の見込数をはるかに上まわつており、料金収入も予定を大幅に超えている。
 従つて、有料道路としての繰上げ償還も順調に進んでいるはずであり、この面からも無料化の時期に来ているのではないか。具体的に供用開始以来の収入・支出等を明らかにし、いつから無料化が可能か示されたい。


四 現在、朝夕の若戸大橋は渋滞が激しく、一日も早くその拡幅、周辺道路の整備が求められている。今その準備が進められているが、今度こそこの拡幅工事は一般道路として行うべきではないか。


五 新聞などの報道によれば、政府は今回も有料道路方式で拡幅工事などを実施しようとしている。そうなれば、直ちに通行料金値上げ、有料期間の延長などが問題にならざるをえない。この拡幅計画の全容を建設・維持・管理の予算を含めて明らかにされたい。


六 現実的に通勤者の負担を少しでも軽減するため、定期割引制度の創設、回数券の割引率引上げなどは考えられないか。


(答弁(昭和五十八年八月五日受領))
一及び二について
 本件有料道路については、洞海湾を陸路によりう回する等他に道路の通行又は利用の方法があつて、当該有料道路の通行又は利用が余儀なくされるものでないから、道路整備特別措置法(昭和三十一年法律第七号)第三条第一項第二号の要件に適合している。したがつて、同項の規定に基づき有料道路として建設し、料金を徴収することを許可しているものである。


三について
 実績交通量は、御指摘のとおり、計画交通量を相当上回つているが、

(1) 軽自動車等の低料金の車両の利用台数が多いこと、回数券利用率が高いこと等のため、料金収入は、交通量ほど計画を上回つていないこと

(2) 諸物価及び人件費の高騰のため、維持、管理に要する費用が計画を著しく上回つていること

等の事情もあり、現状のまま推移すれば、ほぼ、定められた料金徴収期間(昭和三十七年から昭和六十七年まで)の間は、料金を徴収することとなる見通しである。
 供用開始以来の収入、支出等は次のとおりである(昭和五十六年度までの実績による。)。
イ 通行料金収入総額 百七十億三千七百万円
ロ 供用開始以後の支出総額 百四十一億五千五百万円
ハ 既償還額 二十八億八千二百万円
二 償還残額 三十三億四千七百万円


四について
 多額の費用を要する長大橋等の整備を緊急に行うには、特に現下の財政状況にかんがみれば、有料道路制度の活用によることが妥当である。


五について
 事業内容は、橋りよう部(延長約七百メートル)と取付道路(延長約千四百メートル)の車道部の拡幅を行うもので、日本道路公団では、事業費を約二百三十億円、工期を約七年、供用後の維持、管理に要する費用を平均で年間約十一億円と見込んでおり、通行料金の値上げ及び料金徴収期間の延長を予定しているところである。


六について
 本件有料道路を反復して通行する車両等に対しては、現在も回数券の利用による特別の割引を行つており、今後ともこれを継続していく考えである。