11日の東日本大震災1周年追悼式での台湾の扱いが問題になっています。これは儀典の問題でして、なかなか機微なところがありますけども、思うところを書いておきます。


 外交団や国際機関は国務大臣よりも前での献花になっていました。まず、私が違和感を持ったのが外交団のところで「どう見ても特命全権大使や臨時代理大使ではないと思われる人がいる」ということです。確認したわけではないので、もしかしたら違うかもしれません。ただ、仮にそれが正しいのであればどうもピンと来ません。国務大臣よりも先の扱いを受けるべきは特命全権大使、せいぜい臨時代理大使までではないかと思います。


 また、国際機関の扱いについては、国際機関の長については高い扱いでいいと思いますが、東京のローカルオフィスの長クラスを国務大臣よりも高く接遇する理由はないでしょう。ここも違和感を感じました。


 その上で台湾の扱いですが、たしかに駐日台北経済文化代表処は民間団体の扱いです。日本側のカウンターパートである社団法人交流協会も民間団体です。実際には日本も台湾も、外務省を始めとする関係省庁の方が一旦籍を外して、勤務しているかたちを取っていますので、「実体的には」台北経済文化代表処は、日本において台湾を代表しています。


 ただ、日中共同宣言をベースにすれば、外交団枠で扱うことは難しいです。


【日中共同宣言(抜粋)】

二 日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。
三 中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。


 しかしながら、たとえば国家承認をしていないパレスチナの駐日代表部は国際機関の後、それに類するような団体として名を呼ばれ献花していました。在日米軍等と同じ並びでした。


 やり方として、私は以下の2つがありえたと思います。どちらでもそれ程問題なくやれたでしょう。


(1) 国際機関の後、在日米軍関係者、パレスチナ駐日代表部といった純然たる外交団とまでは言えないけども国外の方々の団体の枠を別途設け、その中に台北経済文化代表処を入れて読み上げる。

(2) 国際機関(パレスチナ代表部等を含む)が終わった後、民間団体枠で特に台北経済文化代表処を読み上げる。


 12年前くらいに、とある葬儀の準備室で外国要人受入れに携わったことがあります。その時もこの手の儀典でとても悩みました。厳密に考えるとなかなか難しいところがありました。その時、準備室で携わったメンバーで将来の似たようなケースの時の参考のために、上記のような外交団の扱いみたいなことに関するメモを残したことがあります。今になって「その(古)文書を参照してほしかった」なんてことを言うつもりは毛頭ありませんが、こういった経験をきちんと組織的な知見として引き継いで、今後同種の問題が起こらないようにしてほしいと思います。