高規格堤防、いわゆるスーパー堤防のことです。この件に関しては、一昨年の特別会計事業仕分けで取り組んだ身として特別の思いがあります。


 とはいえ、あまりこの事についてあれこれ語ることはしません。今日は会計検査院の報告書で高規規格堤防について記述があったので、それをそのまま書き抜いてご紹介します。サイトはココ です。下記に転載したのは「要旨」の中の該当部分だけです。


 ご判断は各位にお任せいたします。


【検査の結果】

(略)
(2) 事業の実施状況
(略)
オ 高規格堤防整備事業において、以下のような事態が見受けられた。
(ア) 事業のスキーム関連
a 利根川においては、沿川に市街地整備の動きがないことなどを理由として高規格堤防等と沿川地域の市街地の整備等に関する基本構想(以下「沿川整備基本構想」という。)を策定していなかった。高規格堤防等と整合のとれた市街地整備に関する計画を策定している地区は6河川において1地区もなく、「高規格堤防整備と市街地整備の一体的推進について」(平成6年建設省都計発第146号、建設省河治発第85号)等が想定した高規格堤防等と市街地との一体的整備は実施されていない状況となっていた。また、沿川整備基本構想において整備を推進する地区等と位置付けられた地区であっても事業が行われていなかったり、沿川整備基本構想に位置付けられていなかった地区で事業が行われていたりするなど、高規格堤防と市街地の一体的な整備を推進するために策定された沿川整備基本構想は、必ずしも十分に機能していない状況となっていた。


b 利根川、江戸川、荒川及び多摩川においては、高規格堤防整備と市街地整備の円滑な推進のための事項について沿川自治体と河川管理者との間で十分な連絡調整を図るため設置するものとされている沿川整備協議会を設置していなかった。


c 国土交通省において「高規格堤防整備にかかる事業計画書の作成について(通知)」(平成6年建設省河沿発第1号。以下「作成通知」という。)等に基づく地区別事業計画書を作成していることが確認できたとしているのは、127地区中1地区のみであり、地区別事業計画書を通じて沿川自治体等から高規格堤防整備事業の目的等の理解や協力を得るという作成通知等の目的を達していない状況となっていた。


d 土地買収を伴う整備や公共公益施設の整備のみを共同事業等とする整備、市街化調整区域等での整備が多数実施されており、土地区画整理事業、市街地再開発等のまちづくり事業との連携により事業の進捗を図るという基本的な事業スキームとして一般的に示されている整備手法によって事業の進捗が図られているとはいえない状況となっていた。また、河川整備基本方針等において、高規格堤防を整備することとされている区間(以下「要整備区間」という。)のうち特に国家的な中枢機能と活動が集中している区域を防御する区間等を重点整備区間として17年3月に設定しているが、その設定後に新たに事業に着手した地区においても、重点整備区間の設定前の事業の整備手法と際立った違いは見受けられない状況となっていた。


(イ) 国土交通省は、完成延長、暫定完成延長及び事業中延長の計を整備延長としており、高規格堤防の整備延長及び整備率について、要整備区間においては計50,630m、5.8%、重点整備区間においては計27,740m、12.4%としていたが、高規格堤防に必要な高さ及び幅を満たした堤防の断面形状(以下「基本断面」という。)が完成していると認められる延長について改めて集計を行って高規格堤防の整備延長及び整備率を算出すると、要整備区間においては計9,463m、1.1%、重点整備区間においては計2,495m、1.1%となった。


(ウ) 高規格堤防の区域内の土地において通常の利用に供するため河川区域の規制が緩和される高規格堤防特別区域の指定等を必要とする83地区のうち、隣接地区と合わせて指定等を行うこととしていることなどを理由として指定等が行われていない地区が25地区、管理者等を定める必要がある構造物等を有することから管理協定の締結を必要とする67地区のうち、河川管理者と共同事業者との協議が整わないことなどを理由として管理協定が締結されていない地区が23地区見受けられた。


(エ) 計画規模の洪水を上回る洪水に対しても破堤しない堤防となるよう高規格堤防が整備されている一方、計画規模の洪水に対して越水しない堤防となるよう通常堤防が整備されているが、要整備区間における通常堤防の完成堤防の割合は64.4%となっていて、整備が完了している河川はなく、また、要整備区間における通常堤防の詳細点検の結果、堤防強化対策が必要とされた区間において堤防強化対策が完了している河川もなかった。
(略)


(3) 事業費の推移及び事業計画の変更等に伴う見直し等の状況
(略)
エ 高規格堤防整備事業において、共同事業の将来計画が把握できないとして、同事業の全体事業計画や河川ごとの事業計画を策定しておらず、地区別事業計画書は、作成通知等において計画事業費を記載することとはされていなかった。このため、事業計画に基づく計画事業費の執行状況の把握や、事業計画の変更に伴う計画事業費の見直しは行われていない状況となっていた。


(4) 事業再評価時における投資効果等の検討の状況
(略)
ウ 高規格堤防整備事業において、事業中の地区のうち、中止した場合に土地所有者や住民等の社会経済活動に重大な支障を及ぼす地区で実施した23年度予算措置に向けた地区別の事業再評価における費用便益比のうち便益である被害軽減期待額の算定式及びその考え方は、破堤の危険性が減少する効果を必ずしも適切に反映するものとはなっていなかった。


3 検査の結果に対する所見
(略)
(2) 事業の実施状況
オ 高規格堤防整備事業において、
(ア) 当初想定していた、沿川整備基本構想に基づく河川と都市との連携や、まちづくり事業との共同事業により実施するという事業スキームは十分に機能していない状況が見受けられることから、今後、同事業を廃止しない場合には、実現可能性のある事業スキームを構築すること


(イ) 破堤しないという高規格堤防の効果は基本断面が完成した場合において初めて発現することから、高規格堤防の整備延長及び整備率については、高規格堤防整備の目的、効果等を考慮した算出方法を確立すること


(ウ) 高規格堤防特別区域の指定等及び管理協定の締結を適切に行うこと。また、今後、同事業を廃止する場合等において、点在している盛土等については、その周辺において高規格堤防の整備が実施されないことにより、土地利用が進んだ場合には、高規格堤防整備事業によって盛土等が行われたことが認識されずに掘削等が行われるなどのおそれがあることなどから、高規格堤防特別区域の指定等及び管理協定の締結を行うことなどによって、より適切に管理すること


(エ) 高規格堤防整備事業が、その整備に相当程度の期間と費用を要する事業である一方で、通常堤防の整備や堤防強化対策は、治水上、早期の完成が望まれることから、通常堤防の整備や堤防強化対策の優先的な実施を検討すること
(略)


(3) 事業費の推移及び事業計画の変更等に伴う見直し等の状況
(略)
ウ 高規格堤防整備事業において、計画事業費を明記した地区別事業計画書を作成し、事業計画の変更時には、計画事業費についても適切に見直すこと


(4) 事業再評価時における投資効果等の検討の状況
(略)
ウ 高規格堤防整備事業において、地区別の事業再評価等を実施するために、高規格堤防の目的、効果等を考慮した評価手法について、更なる検討を行い、早急に確立すること


【引用終了】