もう、何度もこのブログで宣伝したのですけど、先日の財務金融委員会での質問の議事録です。映像で見てみると、色々とどもったり、口籠ったりしていて聞き苦しかったのですけど、衆議院の速記者は立派です。議事録になると、とてもスムーズっぽく見えます。


 ちょっとだけ、穴場を赤字で解説をしておきます。


○緒方委員 民主党、緒方林太郎でございます。
 本日の質問の機会をいただきまして、委員長そして理事の皆様方に御礼を申し上げたいと思います。
 まず一番最初に、国税職員の定員確保と機構の充実について財務大臣にお伺いをいたしたいと思います。
 ここ数年、所得税の申告者数、そして法人税の申告件数が非常に増加をしている。そして、所得税の申告者数については十年間で一三・六%の伸び、法人税の申告件数についても、十年間の伸びは二・三%と非常に増加をしている。
 さらに、所得税の確定申告等では、東日本大震災で被災された納税者の住宅、全半壊家屋約三十三万棟、そして家財などの被害損失額を控除する申告相談や手続を、被災地域の税務署のみならず、全国の税務署で対応していただいている。
 そして、平成二十二年度中に新規発生した滞納税額というのが六千八百三十六億円、そして七千五百九十一億円の滞納整理がされた。これは、国税職員の方の多大なる努力があると思います。
 しかしながら、現在、滞納整理中の額というのは一兆四千二百一億円と高水準にある。そしてさらに、先ほど申し上げた滞納税額のうちの半分は納税者からお預かりをしている消費税であるということは、これはまた重大な問題であるというふうに思います。歳入確保のためにマンパワーがさらに必要であるというふうに考えるところであります。
 さらには、平成二十三年度税制改正で国税通則法が改正されて、全ての処分に理由を付記する、さらには更正の請求期間が一年から五年というふうに延長されている。
 こういった中、国民の負託に応えて、適正公正な課税及び徴収の実現、歳入の確保を図るために、国税職員の定員確保、高度な専門知識を有する職務に従事する国税職員の処遇改善、機構の充実及び職場環境の整備等について、ぜひとも努めていただきたいと思います。財務大臣の力強い答弁をお願いいたします。


○安住国務大臣 ありがとうございます。(発言する者あり)はい、力強くいきたいんですけれども、なかなか政府内で大変でございまして。
 税務行政を取り巻く環境というのは、今緒方さんがおっしゃるとおりで、申告件数とかは非常にふえています。これは、社会状況もあって、滞納残高も非常に高い水準であることは事実なんですね。ですから、それぞれ出先の税務署の皆さんも、日々、量も多いし、本当に、確定申告時は特に御苦労していると思います。
 東日本大震災のときには、各地から応援をいただいて、仙台、石巻、気仙沼を初め、それぞれ応援部隊で今もやっておりますけれども、しかし、率直に言えば、人的な面で不足していることは事実でございます。できるだけ、東日本大震災や国税通則法改正の事案、先ほど申し上げていただきましたけれども、そうしたものに的確に対応する必要性はあると思います。
 しかし、率直に申し上げまして、五万六千二百六十三を、今回はマイナス六十九の五万六千百九十四人で要求をしております。ですから、ふやすのではなくて、今回は、行政改革をやろう、できるだけ業務の効率化を図りながら、やはり国民の皆さんの期待にも応えていかなければならない、そういうところで、私どもも実は最初は増員を要求したのでございますが、しかし、そこはしっかり今の守備範囲の中で頑張っていこうということになりました。
 根本的なところでは先生の御指摘をいただいたような問題は抱えておりますが、今の勢力でフルに国民の皆さんの負託に応えていくのが我々の仕事ではないかと思っております。
 引き続き、御支援、御指導賜りますようお願い申し上げます。


○緒方委員 ありがとうございました。
 国税職員の皆様方は頑張っておりますので、大臣として、力強いお支えをお願い申し上げます。
 続きまして、今国会にも上がっております関税暫定措置法について、一言質問させていただきたいと思います。
 さまざまな貿易関係の国際条約で、その担保法が関税暫定措置法になっているケースが多々ございます。税率の設定とかそういったところで、関税暫定措置法で国際条約、WTO協定とかそういったものの担保になっているわけですが、よく考えてみると、これは暫定措置法なんですね。今国会にも上がっている。
 もちろん、三月三十一日までの間にこれを通していくということ、これは政府である我々与党の責務であると思いますけれども、数年前もありましたけれども、仮定の問題として、暫定措置法が通らなかったとき、これは四月一日から、その瞬間から国際条約違反だという状態が目の前にばんと出てくる。法的にこれは不安定なんじゃないかな。法的な安定性が保てていないんじゃないか。毎年毎年法律をちゃんと通していかないと、国際条約の円滑な執行ができないということなわけであります。
 まず、そもそも論として、これは外務省にお伺いしたいんですけれども、国際条約の担保法が暫定措置法でなされているものというのは、これ以外にも、ほかにもあるんでしょうか。


【解説:あまり実体的には意味のないことなのかもしれませんが、日本が批准までしてコミットした条約を国内で実施するのが、定期的に更新を要する『暫定』措置法というのは、本当に法的に安定しているのかなと昔から思っています。】


○長嶺政府参考人 お答え申し上げます。
 法律事項を含む条約につきまして、どの法律によってその国内実施を担保しているかということを網羅的に調べますと、かなり大きな、それなりの作業になりますので、ちょっと今私、手元に、全ての法律事項を含む条約につきまして担保法がどうなっているかの資料は持ち合わせてございませんが、ただいま委員が御指摘になりました関税関係でございますと、御指摘がありましたように、関税暫定措置法によって全部または一部が担保されている条約としましては十三本。これは、WTO協定本体、それからEPA、経済連携協定が十二本ございます。
 それから、お尋ねが、この貿易関係以外にもということでございますと、先ほど申し上げましたように、網羅的に調べるには少し作業が必要でございますけれども、一つの例として、法律の題名に暫定措置法という名前がついている法律に、深海底鉱業暫定措置法という法律がございますが、これは海洋法条約の第十一部「深海底」の部分の担保に当たっているということで、これも、そういう意味では、国内法で暫定措置法により対応しているというものの一つの例であると考えております。


○緒方委員 これは、財務省側から見ていかがかなというふうに思うんですね。
 数年前も、この法律が、いろいろなやりとりの中で、三月三十一日までに通らないんじゃないかというときに、一悶着あったように思います。特に国際条約に関するところというのは、例えば日本がWTOから脱退するとか、EPAを廃棄するとか、そういったことでもしない限りはずっと恒久的にやっていく措置だと思うので、これは恒久法でやってはいかがかと思いますけれども、財務省、いかがでございますでしょうか。


○柴生田政府参考人 お答え申し上げます。
 関税暫定措置法におきましては、一定の政策上の必要性等から、適用期限を定めて実施すべき暫定的な性格の関税率を暫定税率として設定しております。
 具体的には、例えば、平成六年のウルグアイ・ラウンド合意に基づきまして関税化された品目につきましては、WTOの農業協定により改革過程を継続することとされており、現在もドーハ・ラウンドとして交渉途上にあるため、暫定的な性格を有する暫定税率として設定しているところでございます。
 また、これらの品目につきましては関税割り当て等の制度を設けておりますが、このような無税または低関税での輸入数量を限定する制度につきましては絶えず見直しを行っていく必要があり、この点でも暫定的な性格を有しているために、暫定税率として関税率を設定しているところでございます。


【解説:WTO協定で設定された関税率が「暫定的」なのかというと、協定当初は暫定的と説明することが求められたのかもしれませんが、もう17年経っていますし、そもそもドーハラウンド交渉は完全に止まっています。既に「暫定税率」という理屈付けは通用しなくなってきていると思います。恒久法にして、必要が生じたら改正するということで何がよくないのかがさっぱり分かりません。】


○緒方委員 それなら恒久法の改正でも全然問題ないわけでありまして、一回一回、本当に、法律が成立しなかったときに全ての税率ががしゃんとだめになってしまうような、そういった状況に置くんじゃなくて、それは恒久法に織り込んで、逐次見直していくということであれば見直せばいいわけでありまして、余り納得しませんでしたけれども、そこはぜひ政務の大臣、副大臣にも、国際条約との関係でこの件が非常に不安定性があるということだけ問題意識をお伝えさせていただきたいというふうに思います。


○海江田委員長 答弁はいいですか。


○緒方委員 では、もしよろしければ、答弁をいただければというふうに思います。


○五十嵐副大臣 おっしゃるような事情がありますので、できるだけ年度内に法案を成立させていただくようお願いをするということで、政府としても努力をしてまいります。


○緒方委員 ありがとうございました。
 続きまして、引き続き関税の分野ですけれども、今、自由貿易協定、経済連携協定ということで幅広くいろいろなことをやっているわけですが、やはり自由貿易協定の肝というのは関税の部分でありまして、さまざまな障壁、関税だけじゃないですけれども、そういったものをどうやって撤廃していくかということが大きいわけであります。
 その中で、今、例えばTPPの話が上がってきている。ハイスタンダードなものを実現しようというときに、関税の分野でどこまでやれるのか。もちろん、農業であったり鉱工業品の中に、国際競争にフルに巻き込まれてしまうとどうしても持ちこたえられないものがあるから、そういったところはしっかりと守っていくけれども、そこを極限まで、何ができて何ができないかということを関税の分野で真摯に検討していくべきだというふうに私は思います。
 自由貿易協定、いろいろなものをこれまでやってきています。今、その代表的なものの中で関税撤廃率はおおむねどれぐらいなのかということをお答えいただきたいと思います。財務省。


○柴生田政府参考人 お答え申し上げます。
 品目ベースの自由化率は、我が国につきましてはおおむね八五%程度となっております。このうち、自由化率の高いものにつきましては、日・フィリピンEPAが八八・四%、日・タイEPAが八七・二%となっており、低いものにつきましては、日・シンガポールEPAが八四・四%、日・ブルネイEPAが八四・六%となっております。


○緒方委員 その中で、これまでありとあらゆる、WTOで、マルチであったり二国間であったりのEPAで、一度も関税撤廃をしたことがないものというのは品目でどれぐらいですか。


○柴生田政府参考人 お答え申し上げます。
 我が国が自由貿易協定におきましてこれまで関税撤廃をしたことがない品目は約九百四十品目でありまして、全品目約九千に占める割合は約一〇%でございます。


○緒方委員 大体一〇%程度、九百四十品目ということでありますが、その中にも関税率が低いものがあるはずなんですね。決して関税率が低いものの保護効果がないと言うつもりはないですけれども、どちらかというと、為替がばっと振れてしまったりすると関税としての保護効果が薄いものというのがあると思います。
 それをどれぐらいの水準と見るのが正しいのかというのは私にはわかりませんが、一つの例として、今言われた九百四十品目の中で、関税率が一〇%以下のものはどれぐらいあるでしょうか。


○柴生田政府参考人 お答え申し上げます。
 我が国が自由貿易協定におきましてこれまで関税撤廃をしたことがない約九百四十品目のうち、一般の関税率が単純な従価税として設定され、かつその税率が一〇%以下の品目数は約百三十品目でございます。


【解説:貿易の世界では、関税率が低くて保護効果があまり期待できないものを「nuisance tariff」と呼んでいます。大体、5%以下くらいを指していることが多いと思います。ここでは10%ということで少し多めに見積もっています。「単純な従価税」ということは関税割当の一次税率分は入ってないということですから、フラットに設定された関税が10%以下に設定されているものが130品目になります。勿論、だからすべて撤廃でいいとまでは言いませんがハイスタンダードな経済連携を考える時には有力視されるでしょうね。】


○緒方委員 百三十品目については一〇%以下であると。水産物とか合板の関係とかがたしか五%前後ではなかったかというふうに記憶をいたしております。
 もう一つ、先ほど言われた九百四十品目の中で、国内生産がほとんど存在しないもの、国内でつくっていないものがあるんじゃないかなというふうに思うんです。関税というのは、基本的に、国内の生産をある程度保護するために設けているものでありますが、国内生産がないものに高い関税を張ってもしようがないわけですよね。
 余り農林水産品だけ取り出すと本当は怒られるんですけれども、農林水産品のうち、国内生産がほとんどないものはどれぐらいあるのかということについて、農林水産省、お答えいただければと思います。


○角田政府参考人 お答え申し上げます。
 これまで我が国が締結いたしましたEPAにおいて、関税撤廃したことがないタリフラインは約九百四十品目ございます。そのうち、農林水産品は約八百五十品目でございます。
 関税撤廃したことがないタリフラインのうち、そのラインの農林水産品及びその原料のいずれも国内生産がないものは、コーンスターチ製造用トウモロコシなど、十七タリフラインでございます。


【解説:ここは質問の直後にある有識者から「農林水産品『及びその原料のいずれも』となってましたよね。気づきましたか。」と指摘がありました。政府参考人の方の声が小さかったので聞き取りにくかったのですけど、私も気づきました。ちょっとしたトリックがここにはあります。質問時間がもっとあれば、ここをもう少し追及したかったのですが、今後の課題ということで次に進むことにしました。】


○緒方委員 国内生産がないからといって関税を撤廃していいというものでもなくて、撤廃した結果、代替品が入ってきたりするケースもあると思うので、一概に、私が先ほどから言っている一〇%以下のものを全部撤廃しろとか、国内生産がないんだから関税を全部撤廃しろとかいうことではありませんが、ただ、その中には、実はそれほど障壁の高くないものがあるのではないかというふうに思いますので、いろいろな役所でぜひ御検討いただきたいと思います。
 これまでいかなる自由貿易協定においても関税撤廃したことがない九百四十品目の中で、これは本当に関税撤廃をこれからもすることは不可能なんだろうかということについて、非常に一般的な質問でありますけれども、農林水産省、お答えいただければというふうに思います。


○角田政府参考人 お答え申し上げます。
 これまで関税撤廃をしたことがないタリフラインでございますけれども、これは、やはり我が国農林水産業への影響等を考慮して関税撤廃を行わなかったという経緯がございます。
 今後のEPA交渉におきましても、EPA基本方針で「高いレベルの経済連携を目指す。」というふうにされていることを踏まえまして、我が国農林水産業への影響等をさらに精査して交渉に当たってまいりたいと考えております。


○緒方委員 確かに、その九百四十品目の中には、センシティブだと言われているものがあります。あるんですけれども、関税分類の世界の中において、関税分類というのは、九桁の数字で関税を分類しています。その中、六桁まではたしか国際標準が決まっているけれども、残りの三つの七桁目、八桁目、九桁目の数字を使いながら、ここは各国が自由に、各国の事情を踏まえて品目を細かく分けていくことができるというふうに理解いたしておりますが、この理解でよろしいでしょうか。財務省。


○柴生田政府参考人 お答えいたします。
 現在、関税分類上、我が国におきましては、九桁レベルで品目を細分化し、整理して運用しているところでございます。


○緒方委員 九桁で分けるときというのは、かなり各国の裁量がきくわけでありまして、例えば、お米ならお米でも、お米の成分であるとかいろいろなことで細かく区分していくことによって仕分けができるんじゃないかと思うんですね。
 つまり、何となく今、日本の国内でいうと、例えば米とか牛肉とか、そういうセンシティブなものは全部だめだ、全部譲歩することができないというふうに概念されているわけでありますけれども、物すごく、この九桁ベースのところで細かく細かく分けていく。
 例えばですけれども、マクドナルドで使っている牛肉なんというのは、あれは値段、価格帯からいっても、恐らく他のものと区分することが可能だと思います。品質で区分することがどれぐらいできるかというのはわかりませんが、しかし、いろいろな、ありとあらゆる知恵を使えば、そういう国内生産にほとんど影響が生じないものだけをがばっと切り出すことがテクニカルに可能なんじゃないかというふうに私は思います。
 例えば、米であっても、お米というと、我々、普通食べる中粒種を連想するわけですけれども、最近、健康食品みたいなもので、黒いお米みたいなものがありますね。あれまで全部守らなきゃいかぬのかというと、いや、あれは別に守らなくてもいいんじゃないかなと思うと、そういう品目ごとに細かく分けていく作業をして、それで一つ一つ、これが関税撤廃できるのかできないのかということを検討していってほしいなというふうに思います。
 これは、検討しますという答弁はなかなか難しいと思いますけれども、大臣政務官、いかがでございますでしょうか。


【解説:私がいつも考えていて、今回、一番強く主張したかったことです。技術的に分類を細かくやって、関税撤廃できるものとできないものの仕分け作業をやるべきということです。現在はそういう緻密な作業ができていないわけですから。】


○仲野大臣政務官 緒方委員の質問にお答えさせていただきたいと思います。
 まず、お尋ねの件なんですけれども、EPA交渉の前から、既に、同じような品目であっても、用途などによってセンシティビティーが異なる場合、タリフラインを分けて、異なる関税率を設定しておりまして、また、EPA交渉においても、これと同様に、それぞれのタリフラインごとに、センシティビティーを勘案して自由化等の水準を今設定いたしているところでございます。
 また、EPA交渉におきましても、先方の関心品目が特定できる場合には、可能であれば新たなタリフラインの設定を行い、そのラインのみ関税撤廃等を実施しております。
 いずれにいたしましても、緒方委員が本当に日ごろからこのことについて大変熱心に研究をされているということは、私ども農水省といたしましても心から敬意を表させていただくのでありますけれども、今後とも、用途に応じてセンシティビティーの程度を十分考慮するとともに、相手方の関心事項に細かく対応した関税率設定を行うように、関税当局とも十分連携しつつ、適切に対処してまいる所存でございますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。


○緒方委員 私は昔外務省でこういうのをやっていたのでよくわかるんですけれども、農林水産省でこういう国際担当の方というのは、本当につらい立場に置かれるんですね。農林水産省の中での国際担当の人というのは、ありていに言うと、現業を持っている部局からは、外務省とつるんで俺たちの業界を潰しに来るけしからぬやつだぐらい思われているわけですよ。そういった中、国際担当の部局がこういう検討をしようとしても、なかなか国内の部局、現業を持っている部局とうまくいかないことが多いです。
 ですので、ぜひここは政務が、今言ったような、何ができて何ができないのかということを主導してやってほしいなというふうに思うんですね。ぜひもう一度御答弁いただければと思います。


【解説:前段は余計なことを言いましたが、実はお役所の内情たるやそういうものなのです。昔、ある外務省の先輩から「各省の国際担当部局は厄介な相手だと思うかもしれないが、彼らはそれぞれの役所では相当に厳しい目で見られている。だから大事にするように。」と教わったことがあります。だからこそ、こういう作業は政務が主導しないと動きませんよという指摘です。】


○仲野大臣政務官 全ての品目に当たりまして、何ができるのか、何ができないのかということも、農水省だけではなくて、外務省あるいは農水省の国際部、そしてまた税でありますから財務省の方とも、横断的にしっかりとこのことについても今後十分研究をさせていただきたい、そういうふうに思っております。
 緒方委員の本当に元気いっぱいの大変迫力ある御質問に、我々といたしましても、しっかりやらねばならない、そういう決意でございますので、よろしくお願いいたします。


○緒方委員 どうしても、センシティブ品目という言葉が出てくると、全て一緒くたにして、全部だめだというふうに思いがちですけれども、価格帯で分けたりしていけば、やれることは相当あるはずだ。
 そして、先ほど、これまで日・フィリピンで八八%と言いました。一〇%以下のものが百四十数個ある。そして、国内生産がないもの。
 いろいろその代替性の議論とかありますけれども、そういうものを積み上げていって、私の相場観として、これが、八八から何とか積み上げていって九五ぐらいまでいけば、TPPであろうが何であろうが戦えるだろうというふうに私は思います。頑張ってください。
 最後に一つだけ、これはさらに関税の分野の話でありますが、日本の関税の中で一つだけ特殊な関税形態をしているもので、豚肉の差額関税というものがございます。豚肉の差額関税というのは何かというと、どんなに輸入価格が安かろうが高かろうが、一定の価格との差額を全部関税で取っていく、そういう制度です。
 これは何が起こるかというと、輸入価格を実際の生産額よりも勝手に高く設定すれば、税金で払うのは嫌だから輸入価格のところを高く設定すれば、税金を払う額が少なくなり、その間のところがレントとしてポケットに入ってくる。そういうことが、これは違法ですけれども、法律上可能である。実際に、毎年とまでは言わないですけれども、二年に一回ぐらい、十億円単位で脱税事件が起こるんですね。最近は、一流総合商社と言われるところですらこの豚肉の差額関税で脱税事件が起きている。
 冷静に考えてみると、違法であるか合法であるかというのは抜きにして、この制度の中で一番合理的に動こうと思えば、当然、輸入価格を高く申告して、日本の関税当局に払う税金を少なくして、その間を全部ポケットに入れるというのが一番合理的なんです。そういう誘因が働くと思います。
 日本の豚肉は本当においしいですし、私は大好きです。守っていくべきだ思います。ただ、この守る手段が、脱税事件が起きるような差額関税制度というのは、これは税のあり方として私はおかしいんじゃないかと思いますが、ここは財務副大臣、いかがでしょうか。


【解説:前半のところですが、これまでの日本のFTAでの最大の関税撤廃率が88.4%ですから、ここからどんどん積み上げていって95%くらいまで来れば、私はハイスタンダードの経済連携でも相当に戦えると思います(そうでない意見もありますが)。まずは血の滲むような作業として、この95%までどうやって近づけるかということを考えるべきだろうということです。その過程で、私が言ったような「関税率が低いもの」、「国内生産が僅少なもの」、「分類を徹底して撤廃できるものを作る」といった作業が必要になるという認識です。これくらいやれば、95%くらいには近づけるんじゃないかなと期待しています。

後半ですが、これは昔から指摘されてきたところで、豚肉の輸入は脱税の温床なのですね。上記でも述べていますが、豚肉は守るべきなのです。ただ、守り方については脱税を促すような手法でなくてもいいだろうということです。


○五十嵐副大臣 今の御指摘はごもっともなところがございます。
 一キログラム当たり五百二十四円以下の輸入豚肉の場合は、基準輸入価格一キログラム当たり五百四十六・五三円との差額を関税として課す、それによって国内養豚農家を保護する。一方、輸入豚肉が高い場合、五百二十四円でございますけれども、四・三%の税率を適用することによって、関税負担を軽くして消費者の利益に資する、こういう仕組みになっているわけですね。
 おっしゃるとおり、五百二十四円に限りなく近いところで設定をする、安く仕入れられるのにわざと高く設定すると、税金が少なくなるのでもうけが一番高くなるということで、緒方委員御指摘のとおり、この数年の間にも、二十二年に三十二億六千万円とか、二十一年には四十五億四千万円の関税の脱税が発見をされております。これは絶対に認められないということでございまして、透明化を図る方向で制度を見直していくということは必要だと思います。
 ただし、これはウルグアイ・ラウンドの範囲内、WTO条約の範囲内でやっているものですから、実際には、これを直そうとすると、もとの条約との関係を整理しなきゃいけないということで、大変難しい面があるということも御指摘をさせていただきたい。
 なお、先ほどの問題ですけれども、私も、ペルーとのEPAの条約で、アメリカオオアカイカというのが、やはり日本のイカ釣り業者にマイナスではないかということで問題になって、ネックになりましたけれども、大きい切り身、一メートル、二メートルという肉厚で大きいものなので、外見上区別できるじゃないかということで、これは特別の扱いにできるんじゃないか、枝番をつけるということですね、それによって解決をさせていただいて、ペルーとのEPAができたということはあります。
 これは関税当局と農水省の御努力ということで、そういうこともやっておりますので、さらに工夫をさせていただきたい。いい御指摘をいただいたと思っております。


【解説:五十嵐副大臣が冒頭「もっともなところがある」と話したのは、農水省的には「うっ」というところがあったかもしれません。ちなみに、最近まで農水省は「自分達もこの制度は改革すべきだと思っている。ただ、これはドーハラウンド交渉での譲歩のタマにもなりうるものであり、これが纏まった時に合わせてやろうと思っている。」みたいなことを言っていました。しかし、ドーハラウンド交渉が動かなくなった今、それとは切り離した検討が必要だと思います。】


○緒方委員 ありがとうございました。
 今、世界の自由貿易協定であったり、TPPも含めて……


○海江田委員長 時間が過ぎていますので、まとめてください。


○緒方委員 わかりました。もうこれで終わりますので。
 やはりTPPみたいなものが出てくると、ハイスタンダードなものがどんどん求められてくると思います。そのときには、一つ一つ細かく精査をしていって、日本として、別に精査したからといってそれを全部出せとかいうことではなくて、弾として持っておく。弾として持っておいて、それを出し入れする、それは行政の方で作戦を練っていただければいいわけでありますが、弾のない状態でやるというのは、本当にこれからのハイスタンダードなFTA、TPPを目指していくときによろしくないと思いますので、さらなる政府の御検討のほど、よろしくお願いを申し上げまして、質問を終えさせていただきます。
 ありがとうございました。


【解説:あれこれ言いましたけど、タマを事前に用意しておいてください、ということなのです。別にタマを作ったから、それをポンポン出していくのではなく、まずは準備万端で色々な経済連携に臨んでいきましょうということです。】