最近、全国各地で見られる「無料回収」の業者について、前々から気になっていたので環境省に話を聞いてみました。本件については、自民党の高市早苗議員が1年前くらいに経済産業委員会で質問しておられます(高市議員の質問はココ の44分目くらいから)。この質問で大体論点は出尽くしていると思いますけども、私の聞き取りの内容を書き記しておきたいと思います。ただ、文責は私でして、間違っていたらお詫びいたします。


 まず、無料回収と書いてありますが、あれは無料でないケースが多いです。行ってみると、たどたどしい日本語で「これ、無料じゃないね」と言われることがままあるようです。この件については、まさに特定商取引法違反でして、これは消費者庁所管の法律で取り締まれます。実際、悪質なケースについては取り締まったこともいくつかあります。


 また、環境省関係のリサイクル関係の法律では廃棄物処理法に抵触するおそれがあるというのが環境省の見解でした。「おそれ」というのは、廃棄物処理法における「廃棄物」というのは定義が固まり切っていないところがあり、そもそも有償で引き取っているものは「廃棄物」に当たらないので廃棄物処理法では規制できません。では、「無料」だったらどうかという議論になります。ここはグレーだそうでして、何が廃棄物なのかということについてはその物の価値、性状、関係者の意思等を総合的に判断するという「総合判断説」が今の主流になります(最高裁でもそのような判断が出ているとのこと)。その総合判断説に照らしてみれば、無料のものを一概に廃棄物と定義できないということなのです。


 私から「しかしですね、一般住宅地のど真ん中とかにあるんですが、あれはそもそも周辺環境に影響が出かねませんよ。」とお話したら、廃棄物の定義に当てはまらなければ廃棄物規制法では取り締まれず、非常に悪質なもの(どんどん有害物質が外に漏れていることが明らか等)に限れば土地関係や水関係の法律で規制できるかもしれないが、基本的には難しいということでした。


 あと、あの無料回収所で集めたものは明らかに中国等に輸出されているわけでして、輸出関係の法令で取り締まることについても聞いてみました。これも廃棄物であれば、廃棄物処理法によって環境大臣の確認が求められます。これは相手国で適正な処理がなされているかとか、国内と同等の処理がなされているかといったことが基準になります。しかし、廃棄物でない場合は規制がありません。実際、廃棄物処理法に基づく輸出については、韓国への石炭灰の輸出ばかりです(詳細はココ )。つまり、無料回収所で集められた家電等は廃棄物処理法に基づいて輸出されているわけではないということです。


 また、あれらの家電等の中には、有害な廃棄物の輸出入を規制するバーゼル法の規制対象になるものが含まれています。具体的には鉛です。この視点からの規制はできるのではないかと思ったのですが、まず、バーゼル法では再利用(リユース)については対象外ということです。なので、テレビとかを「これはリユースするのです」と主張されると手が出ません。また、リユースでないとしても、鉛の含有量が0.1重量%以下ですと対象外になります。しかも、この量り方が決まっていないため、テレビの基板等鉛を含むものであっても、サンプルで量る部分として鉛の含有が少ない別の部分を持ってこられると規制から逃れてしまうということになります。これについてもバーゼル法に基づく輸出(相当に厳しい要件を求められるので事実上困難)は限定的でして詳細はココ です。


 そもそも、自動車については使用済みのものはすべて廃棄物になるという法律の仕立てになっている一方で、家電や小型電気機器については、有価物として引き取る場合は廃棄物ではないとの扱いになっていることが大きな問題です。そして、廃棄物でなければなんでもありの状態であることも問題です。


 あれこれ聞いてみて、法の漏れがあるというふうに思いました。廃棄物関係の法律は後から後から補充しながらやっているので、どうしてもその隙間が出来てしまうような印象がありました。ただ、廃棄物であれば、それを取り締まるための廃棄物処理法はかなり整備されています。したがって、やるべきはああいった無料回収所における回収物をも取り込めるような法令の改正をやる、場合によっては廃棄物の解釈を変えるといったことでも対応できるのかもしれません。「無料回収は廃棄物。有価引き取りといっても、実質的に無料に近いと判断されるものは廃棄物」というふうにすればいいのかなと思ったりもします。


 街中で見るあの無料回収所、違和感を持つ方は多いでしょうし、あれがどうなっているのかについても疑問を持つ方は多いでしょう。法律の隙間というのは怖いとつくづく考えさせられましたので、(環境委員会のメンバーではありませんけども)今後、どういうことができるのか、真摯に考えたいと思います。日本が持っている資源ですからね。