独立行政法人国民生活センターという組織があります。消費者問題の中核的実施機関でして、支援相談、研修、商品テスト、情報の収集・分析・提供、広報、裁判外紛争解決手続(ADR)等の機能を担っています。現在の独立行政法人改革や事業仕分けでの結果等を通じて、国(消費者庁)への統合が俎上に上っています。


 これに対して消費者団体の方々からは強い反対の声が上がっています。現在、消費者特の委員を拝命している身として、本件には強い関心を持っています。先日も関係団体の方からご意見を伺いました。


 統合賛成派の方からは「国民生活センターと消費者庁には機能の重複が多く、統合メリットが多い。また、独法改革の中で現在の機能を維持することが難しくなる可能性があるので国で一元的にやった方がむしろいい。」との主張がなされています。それに対して、反対派の方々からは「一見同じ事をやっているように見えるが、機能の重複は極めて限定的。独立した組織でやることの意義を重んじるべき。」との声を伺っています。この手の組織統合をする時によくある対立構造です。


 私の意見は大体、こんな感じです。


● ポイントは「同じ事をやっているかどうか」ではない。仮に消費者庁と国民生活センターが別々のことをやっているとしても、基本的にはそれを一元的にやることのメリットは相当にあるだろうし、別にそれが悪いことでも何でもない。単なる「重複の有無」をベースに議論することは極めて不毛。


● むしろ、重要なのは「国民生活センターと消費者庁との間に方向性を必ずしも共有していないところがあるかどうか」である。私が知る限り、支援相談、斡旋、ADRの部分では、行政とは一線を画した対応が求められるところがある(例えば、消費者関係の問題について、政府の法解釈とは違う法解釈の可能性等も提示しながら相談を行う可能性等)。たしかに、その点についてはきちんとした考慮が必要。


●言い換えれば、今、国民生活センターが担っている業務の内、行政と同じ方向を向いている部分については、現在の体制の重複の有無にかかわらず一元化していくことは可能だろうし、行政と(対峙するとまでは言わないまでも)向き合っている部分については制度設計において何らかの工夫が必要。


●ただ、今でも「独立『行政』法人」なわけだから、その定義にかんがみれば、行政が行っていることと国民生活センターが完全に食い違っていることは想定されないし、あってはならない。そう考えれば、国との一元化については、「内部部局」から「独立の機関」まで色々なバラエティの中で、独立性の担保等の面で色々な工夫がやれると思う。


 消費者行政の中で、最近、大きなテーマになりつつあります。個別のテーマについては、別途色々な思いがありますけども、今日は枠組みの話について思うことを書きました。抽象的なところが多かったので、ちょっと分かりにくかったかもしれません。私の勉強不足と筆力のなさをお詫びいたします。