アメリカでは共和党の予備選挙が真っ盛りでした。アイオワではサントラム、ニューハンプシャーではロムニー、サウスカロライナではギングリッチ、フロリダではロムニーという感じで、特にサウスカロライナでギングリッチが勝った時は混沌とした感じがありました。


 直感的には「まあ、共和党はロムニーだろうな。そして、本選はオバマ再選じゃないかな。」と私は感じました。根拠を示せと言われると難しいのですが、共和党では消去法的に行くとロムニーなんでしょう。ギングリッチは保守層への受けは良いですが、やっぱりその言動、過去の振る舞い等に対する拒否度が高いです。そして、本選ですが、ロムニーは「超金持ち」の匂いがどうしても付き纏います。正に「Occupy the Wall Street」が標的にしているのがロムニーのようなお金持ちです。邪推ですけども、オバマにとっては今の「Occupy」ムーブメントはそれ程悪い話ではないのではないかとすら感じるくらいです。


 それにしても、アメリカの大統領選挙でも「お金持ち批判」って結構強いんだなと思いました。毎朝、新聞を読むと「ロムニーは給与所得が殆どなくて、大半が投資家らの所得だから、収入全体への税率が(一般の人の30%とは異なり)15%しかない。」とか「ロムニーは所得の一部をケイマン諸島に移している」みたいな話が新聞の一面をどんどん飾り、予備選挙でもギングリッチが「自分は所得明細を公開する。ロムニーもやるべきだ。」といった感じでアジったりしていました(ギングリッチは過去1-2年くらいの明細公開だけなのに自慢げに語っていたのが、逆に「それ以前は出さないのだな」ということを示唆していて胡散臭くも見えましたけど。)。まあ、それはそれは「お金持ち」→「何処かで上手いことやってるに違いない」→「けしからん」といった論調を強く感じました。何処の国にも似たような現象はあるものだということなのでしょう。


 この予備選挙、意外に少ない票でムーブメントが出来上がっていくものなんだなということも感じました。アイオワでは3万票ちょっとのラインでロムニーとサントラムが激戦を繰り広げていました。アメリカ全体からすると僅かな票です。しかし、それで全米に「ロムニー負ける」みたいな論調が広がり、社会の流れが形作られていくのを見ると、「順序というのは大事だ」という政治の世界のセオリーを痛感しました。


 あとは「思想色が強いなあ」というのが印象的でした。「保守的価値」をどう打ち出すかの競争をしているような感がありました。「私は彼よりももっと保守思想を持っています」ということをどう売り込むかに汲々としている姿を見る時、普段我々が見ないアメリカの深層のちょこっとだけ垣間見た気がします。ある意味、二大政党制になると政党がCatch All Party化すると言われ、日本では特にその傾向が強いだけに、アメリカの共和党の思想色の強さが際立って見えました。


 フロリダのペンサコーラにいた時が面白かったですね。フロリダの中でも保守的な地域でして、何故か街中にはロン・ポールのパネルしか見ませんでした。ロン・ポールと言えば「米軍の海外からの撤退」みたいな非常に孤立主義的思想を訴えていて、価値観的にも最右派です。「ああ、こういう地域があるから、(おそらく民主党が強いマイアミ等を含む)フロリダがswing stateになるのだな。」と感じました。我々が普段見ることのないアメリカの実相でしょう。


 一年かけてやるこの大イベント。何となく、最近は国際情勢の中で「アメリカが大統領選挙やっている間はなかなか動きが出にくい」ということが織り込まれてきています。主権国家同士として、日本側から見ているとそういうエクスキューズは釈然としません。ただ、「たしかにこれやっている間は外に目を向ける余裕なんかないよな」ということも事実として感じました。