まず、一番に感じたのは「基本的にアメリカの議員は外交に関心が薄い」ということです。話していても、一般的な議論に終始し、外交問題に精通しているという感じを受ける議員は少なかったです。私は特段、日本関係の議論だけを振ったわけではありませんでした。日本に関心が低い以前の問題として、そもそもが内向きなベクトルを感じました。
示唆的だったことが幾つかあります。まずは我々とのアポそのものが成立した議員は大半が西海岸、東海岸、島嶼部の方でして、いわゆる中西部の議員とはアポが成立しませんでした。まあ、全体として「日本(というか外国)の議員なんかに会っても話題もないし、あまり関心もない。」と判断したんじゃないかなと思います(すべてがそうだということではなく、あくまでも全体として。)。
私は個人的にはそういう「日本があまり馴染みのない超保守的な地域」の代表がどういう人達なのかということに一番関心があり、要望として「進化論を否定するような風潮が強い地域の議員とのアポ」を頼んでみましたが、それは実現しませんでした。ただ、そういう議員とそのバックにいる支援団体が非常にアメリカの対外政策に影響を与えているのも事実です。内向きのベクトルが強い人達が、時折、内向きの配慮のみから打ち込んでくるタマをどうかわすか、そもそも、それはかわせるのか、そんなことを考えさせられました。
今回連邦議会を訪問している最中に、「March for Life」という反中絶の大規模デモが行われていました。これは完全に共和党系のデモでして、全米から宗教系の団体を始めとする様々な保守系団体が結集したという感じでした。反中絶運動自体の意義は十分に分かりますが、傍で見ているとその熱狂ぶり、掲げているパネルのどぎつい表現等に若干の驚きがありました。多分、アメリカ社会の深いところにはそういう底流があるんだろうと思いました。
もう一つ示唆的だと思ったのが、国務省の方と話していた際、私から「議員からのブリーフ依頼が来る案件は何か?」と聞いてみたら、「人のトラフィッキング(人身売買)、子の連れ去り(ハーグ条約)、戦争捕虜(POW)くらいだな。」と話していました。まあ、商務省、財務省、通商代表部といった経済関係の部分は国務省所掌ではないので少し差し引いて考える必要がありますが、日本人が日米関係というものに対して持つイメージとは相当に異なるはずです。何のことはない、対日関係全般について関心を持つ議員は殆どいなくて、自分の選挙区住民から持ち込まれる案件がある限りにおいて関心を持つということです。日本の国会議員と比べても、かなり違うなと思いました。
ちなみに、日本から客が行くと(我々も含めて)いつも同じ議員、同じ関係者にばかりアポを依頼しているような感じがしました。最近で言えば「ダニエル・イノウエ議員詣で」というのは通過儀礼のようになっている感じがしました(87歳なので無理を強いてはいけないところがあります。)。日系であるかどうか以前にアメリカ連邦議会最強の権限を持つ方ですので、同議員にアクセスできるのは勿論良いことなのですが、日系だということで変な期待感を持ったりしてはいけないし、あまり日系というポイントに依拠しすぎると広がりを持たせることが難しいんだよなとつくづく感じました。