ある連邦議会議員(共和党)とお会いしました。米国議会保守派の雰囲気を伝える非常に面白い内容でしたので内容を書き残しておきます。


● 連邦政府債務削減
 超党派委員会では与野党、政府の3者での思惑の違いが埋まらなかった。債務の上限を上げるのに対して、これからの債務削減への取組が十分に規定しきれていないことについて自分は全く満足していない。民主党(leftist)は債務削減への目線が低くて、将来への危機感、見通しが甘い。

 いずれにせよ、次の連邦議会議員選挙が勝負である。自分達が上院を制するか、民主党が下院を制するかして、両院においていずれかの政党が多数になった時が真実の時である。


(緒方感想)膨大な債務があるせいで雇用の悪化が起こっており、債務削減しない限り、経済の回復はないというある意味健全な思想をお持ちでした。しかし、「leftist」と聞いた時は吹き出しそうになりました。


● 北朝鮮
 北朝鮮はユーフラテス川沿いでのシリアの核開発に手を貸している。また、偽札、麻薬、保険金詐欺何でもありである。彼らにハード・カレンシーが渡らないようにすることが大事であり、マカオのバンコ・デルタ・アジア銀行の資金凍結措置はとても意味のあるものだった。
 北朝鮮に食料援助をすることは、単に彼らが更に挑発行動に出ることを支えるだけで何の意味もない。北朝鮮の無辜の民を軽視するわけではないが、自分が亡命者から話を聞く限りでも援助は軍にばかり行っていて、地方からの亡命者は皆「そんな援助を見たことはない」と言う。北朝鮮への支援については、軍がそれをカネに代えて、結局は核開発の資金に向かうだけなので「benign neglect」でいいと思う。


(緒方感想)たしかに食料援助というのは後のフォローが難しいんですよね。かつて、セネガル勤務時代に、隣国のモーリタニアに日本が供与した食料援助が、セネガルの首都ダカールの市場で売られていたこともありましたし。


● 中国
 周囲の国が協力し合いながら、中国に国際的なルールを守ることが大事だという圧力をかけ続けるということではないか。


(緒方感想)麻生太郎元総理の「自由と繁栄の弧」的な発想に近いものを感じました。


● イラン
 (当方より、イランへの関与政策についてどう思うかと話を向けたところ、)アメリカがイランに大使館を再開したら、また大使館で人質事件が起こるのは必定。アメリカは幾度となく、イランとのコミュニケーションに乗り出したが結局、イランの政策決定は何ら変化していない。イランが特定の思想と政策を持っていて、そこから動かない以上、使えるツールは限られる。
 ただ、イラン国民の2/3は現在の体制を支持していない。自分はかつての冷戦時代の東欧へのアプローチが使えないかと思っている。1980年代、隣国に亡命していた東欧関係者を経由したり、ラジオ放送等を通じて、色々なかたちで東欧内に情報提供することにより、底辺から体制を揺さぶったことがベルリンの壁の崩壊に繋がった。今は国民の2/3がイランの現体制を支持していないが、これが9/10になれば自ずと今のイランの体制は崩壊する。このアプローチは既に北朝鮮に対しては行っており、これまで37名の北朝鮮からの亡命者が、我々が流したラジオ放送を聞いたことがあると言っていた。


(緒方感想)まあ、うちの地元では特に夜になると朝鮮半島や中国からのラジオ放送がガンガン入りますからね・・・。


● アフガニスタン
 アフガニスタンに根付いてしまった文化を変えることは難しい。隣国のパキスタンには、テロリストを要請する宗教学校が600もあり、そこからどんどん人材がアフガニスタン、ダゲスタン、チェチェン、インド、ウズベキスタンあたりに提供されている。この辺りのリンケージを切ることができればいいのだが、パキスタンからどんどん聖戦の戦士が入ってくる以上、今はとても難しいという思いを持っている。


 なお、最後に私から「最近、議会間の交流が日米で薄いと思うので、今後とも宜しく。」と伝えたら、「勿論だ。また会おう。」というお返事がありました。