アメリカのコメどころであるサクラメント郊外の農地を訪問しました。これは私の強いリクエストで日程に入れてもらったものです。応対していただいたのは、アメリカのコメ農家の業界団体で幹部を務めておられる方(MRさんとしておきます)でした。家族+2名の雇用で大きなコメ農場を切り盛りしておられます。


 まあ、見渡す限りのコメ畑でしたね。我々が訪れたのは40haくらいのフィールドでして、ともかくこの広さはたまらんなぁと思うくらいの広さでした。MRさんの所有している畑をすべて足すと「まあ、全部で数百haくらいかな」と言っていました。勿論、今の時期はコメを作ってはいないから今一つ実感が湧きませんでしたけど、これで一面コメの稲穂が広がっていたら爽快だろうと思うくらいの規模ではありました。耕運機は幅8メートル、既に想像を絶する大きさです。御想像の通り、種まきや除草剤散布なんかは飛行機でやっています。


 ただ、乾燥地帯であることは見て明らかですので、「灌漑はどうやっているのですか」と聞いてみたら、MRさんからは「普通はシエラネヴァダ山脈からサクラメント川に流れ込んでくる水量で十分に足りる。ただ、今年は雨量が少ないのでコメ作り用に貯めるようにしている。今年は大丈夫だが、また来年の冬も同じように雨量が少なければ相当に問題になるだろう。」というふうなお返事でした。


 どうしてもコメについては補助金を相当に貰っている印象があるので、「どれくらい補助金があるのですか」と聞いたら、MRさんからは「そんなに補助してもらっていない。生産量に対するローンがあるくらいかな。ただ、生産コストは6年前と比べて2倍になったのにローンの額は全然変わってないから、あまり力強く補助してもらっている感じはないよ。」というお答えでした。輸出信用(export credit)についても質問しようと思っていたのですが聞き忘れました。


 かつては65%が国内消費で、35%が輸出用だったけど、最近は45%が国内消費、55%が輸出用だとのことでした。輸出先は勿論、日本(40万トン程度)、東南アジア、中国、中東といった地域だそうです。概ね200万トンくらいが輸出に回っているようで、その内日本については全体の18%前後のシェアだということでした。これがミニマム・アクセス米です。


 私からは「もし、もっと日本に輸出できるとしたら、カリフォルニアにはどの程度の追加的な生産能力があると思うか?」と聞いてみました。TPPとの関係でも一番肝となる部分です。MRさんの答えは「価格次第のところもあるけど、そんなに追加生産は出来ないんじゃないかな。そもそも、今でもアメリカの輸出は200万トンが精一杯なのに、800-900万トンを消費する日本の市場を大きく席巻する程の追加的な生産能力はない。むしろ中国とかタイから入ってくるかもしれないコメを心配した方がいいのではないか。」という感じでした。まあ、私が受けた印象は「アメリカからの輸入については現状維持(40万トン)が出来ていれば、そこから先、更に強く要求してくる感じではない。」というものです(楽観的かもしれませんけど)。


 あとは「日本にコメを買ってもらっているのはありがたいんだけど、日本は自分達の作ったコメの大半を加工用に回しているだろ。本当は農家としては少しでも食卓に並んでほしいと思う。最近はSBS(Simultaneous Buy and Sell)方式での輸入が増えてきて、外食産業を中心に少しずつ日本の消費者の口に入っていくようになっているけどね。」というコメントもありました。国内的にはなかなか困難なところがあるお話ですけど、まあ、農家として当然かつ素直な感覚だろうと思います。


 なお、カリフォルニア米、特にカリフォルニア・ローズについては、現地でも何度となく食べましたが、既に品質的には遜色ないところまで来ていると思います。品質について、MRさんは「カリフォルニア・ローズだけでなく、コシヒカリでも何でも作れる。」と話していました。「日本以外の国での日本食用に結構輸出しているから、外国で日本食を食べる時は我々の作ったコメである可能性が高いと思うよ。」とのことです。


 昔、外務省でWTO農業交渉を担当していた身として、いつかは見たいと思っていたサクラメントでのコメ生産、実感としてとても参考になりました。