消費税増税について、よく言われるのは「議員定数削減」、「公務員人件費削減」、「行政改革」を徹底的にやるべきだということです。私もそう思いますし、だからこそ行政調査会で年末も地元日程をある程度犠牲にしながら、一生懸命に公益法人のあり方について考えていたわけです。


 一つ確実に言えることは、これらをやったからといって消費税1%の財源を捻出することすらままならないわけでして、上記の改革案件は第一義的には財源捻出を目的とするものではないはずです。そこを完全に履き違えた議論があちこちで横行しています。


(1) 議員定数削減で出てくるお金はまあせいぜい数十億。


(2) 公務員人件費は国家公務員であれば20%でも1兆円削減。地方公務員まで入れて20%削減するとすると地方分で更に4兆円。仮に地方公務員の人件費を4兆円削減すると、その分は地財計画の性格上、国(交付税)・地方(臨時財政対策債)折半ですから、国の負担は2兆円減ります。まあ、この地方公務員分に手を付けることが今すぐできるとは思えませんが、それを仮に織り込んだとしても公務員人件費2割削減で国・地方で出せるのはマックスで3兆円。


(3) 行政改革でどれくらい出るかは難しいです。大まかには以下のような感じかと思います。

(a) 特別会計:昨年の特別会計仕分けをやった身からしても、これ以上1兆円を捻出することは難しいですし、そもそもストックでの捻出なので恒久財源にはなりません。細かいことは書きませんが、大口と言われる国債整理基金特会、外為特会にある積立金、剰余金は「埋蔵金の要素がゼロ」ですから、こんなものに期待すること自体が邪道です。先日、あの日本経済新聞に「社会資本整備特別会計の剰余金で1.3兆出せる」という一面記事がありましたが、あれは3/31から4/1に日が移る時にそれだけの額が持ち越されるということに過ぎず、それは国の会計が現金主義だから繰越がそう見えるだけです。あの天下の日経ですら、こんな誤報を一面に載せるとはもう涙が出ます。ということで、もう大したものは出ないでしょう。というか、隠れ借金 すらありますからね。

(b) 公益法人・独立行政法人:これは自分でやっているので相場観がありますが、天下り、内部留保等にはガンガン切り込みたいですけども、金額が数千億単位になることは想定されません。これは別途書きます。

(c) 国有財産:無理をすればストックで1000億円くらいは行くかもしれませんが、あくまでもストックですから一回こっきりです。恒久財源として当てこむようなものではありません。


 上記のように見ていくと、まあ、公務員人件費で地方も巻き込んでムチャクチャやったと仮定しても、総額では消費税1%に毛が生えたくらいの金額しか出ないのです。これ以外に何か財源を出せる案件があるのであれば、是非ご教示いただきたいと思います。


 そもそも論として、私は「消費税増税の前にやるべきことがある」と強く主張し、議論をアンチ消費税の方に誘導しておられる方を行政改革関係で会合で見ることは、私が知る限りこれまでそれ程多くはありませんでした。私が昨年、特別会計仕分けをやった時、主査だった私はその結果を非常に批判されました。私の感性では「特別会計仕分けを批判した方」と「アンチ消費税」の方々の間にはかなり強い正の相関性があります。結局、それって「総論賛成、各論反対」なのではないかと思います。


 私は上記のような議員や行政に対する改革というのは、勿論、消費税増税とパッケージではあると思います。ただ、政策論として相互に絡み合うということではありません。議員定数、公務員人件費、行政改革をやったから、消費税増税の意味合い、規模が影響を受けるという関係にはないということです。では、何故パッケージであるべきかというと、それは「説得と納得」を担保しようとする関係にあるからです。国民に負担増を納得してもらうには行政が身を削る必要がある、行政に身を削るのを納得してもらうには政治が身を削る必要がある、最低でもそのリンケージが成立することが必要だということに尽きます。


 では、これらがすべてパッケージになったら消費税増税に向けて必要かつ十分かと問われると、実は最後は「政治への信頼性」というところが大切になります。我々はくれぐれも「議員定数削減、公務員人件費、行政改革をやれば、消費税増税へのゴーサインだ。」といった傲慢な思いを持つべきではありません。必要条件ではあると思いますが、十分条件ではないということです。最後の最後は、政権に対する信頼、もっと言えば政治に対する信頼が必要になってきます。そこまで来て、すべてのエレメントが必要十分条件として繋がれるようになるはずです。


 年末から新年にかけて、頭の整理を兼ねて書きました。