海上警察権について、あれこれ法律上の論点を書いてきましたが、有馬温泉さんがコメントで指摘したように、法律だけでは不十分なことは言うまでもありません。最も重要なのは「予算(装備)」と「政治的意思」です。


 予算ですが、大体今の海保の予算は年間1800億円程度。人員は概ね愛知県警並みの数字だと理解しています(それが多いか少ないかはともかくとして)。同僚の長尾敬議員が「予算はイージス艦1つ分なんだよ」と力説していました。今の海保の装備の主たるところは昭和50年代に領海法等の法整備がなされたことに伴って、重点的に整備されてきたものを修理しながら使ってきています。基本的にスクラップ・アンド・ビルドでして、なかなか増強という方向に持っていきにくくなっています。


 しかも、近年は年度当初予算では減額されてきていて、補正予算で面倒をみるというかたちになっています。「カネがつくなら当初予算でも、補正でもいいじゃないか」、それはそれで正しい理屈ではありますけど、当初予算はえてしてシーリングが掛かったりするので、一旦削られてしまうとなかなか上がっていかないということがあります。仮に補正が細っていけば、結果として海保の予算も細っていくという結論になるのです。


 第3次補正には、震災、津波でダメになってしまった装備の関係が盛り込まれそうです。ここは与党の立場からしっかりと応援していきたいと思います。そして、少し中期的な予算のあり方ですが、一番の本音を言うと防衛省の中期防みたいな「中期計画」を海上保安庁も策定して、中期的な整備計画を財務省に呑ませるようなスタイルがいいと私は思います。自衛隊が中期計画の中で南西方面への重点整備を決めていく中、それに海上保安庁が追いついていかないというのも変な話です。自衛隊が中期計画を持っているなら、海上保安庁もそれを持つようにすべきというのは、それなりに道理のある話だと思います。


 あとはスクラップ・アンド・ビルドの発想を少し転換してもらって、こういう時だからこそ重点整備に踏み出してほしいと思います。仮に百歩譲ってスクラップ・アンド・ビルドが必要なのであれば、それは海保内でやるのではなく、国土交通省内でやっていただくくらいの考え方は必要なのではないかと思っています。


 そして、政治的意思。ここが重要です。領土、領海を守る法的な、物理的な体制がどんなにできていようとも、政治の側がフラフラしていては無用の長物です。尖閣諸島はきちんと守っていく、というのは言うまでもないことですが、政権中枢ではこれから想定される中国、台湾からの様々な嫌がらせに対する対応をきちんと検討して、そこからぶれないことが大事です。同様に日本のEEZで韓国の漁船をバカバカ取り締まると関係を害するから、みたいな配慮は一切無用で、日本の山陰地方の漁民の方が真面目に漁をしているのが馬鹿を見るような事態は絶対にダメです。そこも政治の意思です。


 本件はもう少し書きたいことがありますけども、それはまた別の機会にして、この海上警察権シリーズはこの程度にしておきます。