先日、有馬温泉さんからコメントを頂いたように、あれこれ方策を講じても国連海洋法条約では非商業的目的の政府船舶や軍艦については一般的に免除が認められています。それは外交関係に関するウィーン条約にある国家免除といった考え方がベースにあって、国家に直結している件については執行管轄権が相当程度制限されるということです。


 結果として、これらの船舶が日本の領海やEEZにおいて明らかに日本の主権を損なう行為を行っていたとしても、なかなか手が出しにくく、外交ルートで通報といった行為くらいしかやれないという解釈がなされています。


 ただ、本件について私はもう少し踏み込めないかなと思っています。というのも、他国の実行を伺う限り、非商業的目的の政府船舶や軍艦の領海通過に際して事前届出制にしていたり、許可制にしていたり、そこまで行かなくても諸規制を組み合わせて事実上の許可制っぽくしているところがあるようなのです。


 この件はまだ正確に各国の実行を調べきっているわけではありませんが、今後、領海について考える時は厳格な「相互主義」を設けるべきではないかと思うのです。例えば、ロシアや中国の領海における非商業的目的の政府船舶や軍艦の通過に求められる制限があるのであれば、逆のケースにおいては同様の制限を設けることは当然あっていいと思うのです。


 たしかに国連海洋法条約における無害通航を制限することは難しいところがありますが、色々と法的に理屈をこねることができないかなと思います。例えば、海洋航行の安全を目的とした、事前の届出制くらいであれば主権免除との関係でも整理が付けられそうな気はします。


 ともかく、非商業的目的の政府船舶や軍艦になるとどうしても「主権免除」が先に来て、そこで検討がストップしてしまう傾向があることは戒めなくてはいけません。日本だけが突出した法規制を設けることはできないと思いますけども、少なくとも厳格な「相互主義」をきちんと確保するくらいのことはやるべきです。ちょっと考えてみると分かりますが、私の常識では中国、ロシアの領海を他国の軍艦がホイホイ通れるように彼らがやっているとはとても思えないので。いずれにせよ、もう少し各国の実行をよく調べた上でこの件は考えたいと思います。


 最後に一言。仮に届出制にしたとしても、中国は届け出てこないでしょう。その時に排除できるかどうかということは、有馬温泉さんが指摘していたように国としての意志であり、その実行部隊である海上保安庁の装備の充実だと思います。「軍艦や非商業的目的の政府船舶の領海通過については届出制にしたから、後は海保頑張れよ。」みたいな無責任なことは絶対にしてはならないと強く思います。