8月10日の海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会での私の質疑です。映像は載せましたが、議事録ができてきましたので、そのまま転載します。


 私がかつて外務省時代に担当していたテーマですので、答弁される副大臣、局長等も大変だったことでしょう。実はどういう答えが返ってくるかも概ね分かっているので、スムーズにやり取りができたという背景があります。


 ちなみに、私が「シージャック条約」と呼んでいるのは、正式には「海洋航行の安全に対する不法な行為の防止に関する条約」で、通称SUA条約とも呼ばれるものです。更に俗称として「シージャック防止条約」とも呼ばれておりまして、それを私が勝手に「シージャック条約」と呼んでいるだけです。


【議事録】

○松原委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。緒方林太郎君。


○緒方委員 民主党、緒方林太郎でございます。

 この海賊・テロ特別委員会、私が当選してから恐らく実質的な審議は今回が初めてということで、トップバッター、本当に光栄でございます。委員長そして筆頭理事、さらには理事の皆様方に御礼を申し上げたいと思います。

 もう時間もございませんので、すぐに入っていきたいと思います。

 まず最初に、シーシェパードの問題から始めさせていただきたいと思います。

 シーシェパード、日本の捕鯨船に対して大きな大きな害を与えていると思います。私はあれは海賊だと思うんですけれども、御意見いかがでございますでしょうか。


○伴野副大臣 緒方委員にお答えいたします。

 シーシェパードによる調査捕鯨活動に対するこれまでの妨害行為でございますが、その行為の態様や目的にかんがみれば、国連海洋法条約上の海賊行為に該当すると断定することは甚だ困難ではないかと考えております。

 いずれにしましても、シーシェパードの妨害行為は我が国の船舶及び乗務員の安全を脅かす極めて悪質かつ危険な行為とは考えておりますが、政府といたしまして、引き続き、旗国等関係国に対しまして、妨害行為の再発防止に向け、しかるべき措置をとるように申し入れていく所存でございます。


○緒方委員 国連海洋法条約の海賊の定義に照らしてなかなか難しいんじゃないかという御答弁がありましたが、何で難しいんですか、局長。


○長嶺政府参考人 お答え申し上げます。

 国連海洋法条約の上で海賊行為の定義でございますけれども、私有の船舶の乗組員等が私的目的のために行う一定の不法な暴力行為、抑留または略奪行為というふうにされております。

 この条約におきまして海賊行為が私的目的というふうに限定されておりますが、これは、起草されたときの解釈等に照らしますと、国家自身による行為とか、あるいは国際的に承認された交戦団体等によって正統政府に対して行われる一定の行為、こういったものを海賊行為に含めないという観点から、この私的目的という限定がなされたということであります。

 他方で、条約上、私的目的そのものの定義は置かれておりませんで、ただいま伴野副大臣から御答弁申し上げましたように、シーシェパードによるこれまでの妨害行為がこの私的目的によるものに該当するか否かについては議論が分かれるところであり、断定することは困難である、こういうことでございます。


○緒方委員 私的目的かどうかということが判明しないということですが、あれは明らかに私的目的だと思うんですね。プライベート。けれども、ノンプライベートだということは、どこかにパブリックな要素がある、公的な要素があるから私的目的じゃないんだということですね。

 では、そこにおける公的な目的というのは何ですか。


○長嶺政府参考人 国連海洋法条約に言います私的目的でございますけれども、これは確かに、必ずしもみずからの金銭のために行うものに限られるということではないと思われますけれども、しかし、いかなる行為がこの条約で言う私的目的に当たるかということにつきましては、個々の事例の状況に照らして判断される必要があると考えております。

 そこで、先ほどのシーシェパードの行為につきましては、一概に申し上げることはできないということになっております。


○緒方委員 一概に申し上げることができないと言ったんですが、だれが判断してくれるんですか。別に世界政府があって、これは私的だ、これが公的だと判断できなくて、しかも、日本の外務省設置法を見れば、条約の解釈権は外務省にある、外務省国際法局にあると言っているのに、そこで、いや、一概に言えないと言われても、では、それはだれが判断するんですか。

 これは、やはり日本が国としてしっかりと意思を持って、これは私的目的だというふうに言うべきじゃないですか。どうですか。


○長嶺政府参考人 委員御指摘のとおり、国連海洋法条約でございますので、この解釈につきましては、それぞれの締約国に解釈権がございます。

 今、副大臣、それから私の方からも申し上げた考え方、これはもちろん我が国としての考え方でございます。ただ、ほかの締約国の状況を見ましても、シーシェパードの行為を海賊であるというふうに認めているものがあるということは、我々承知しておりません。そういったことも含めまして、我が方としては、一概にこれが海賊行為に当たるというふうには考えていないということでございます。


○緒方委員 どこかで日本国が、これは私的目的なのか、それとも非私的目的なのかということについて意思を決めるべきだと思うんですね。それを持って、断固たる決意でシーシェパードに対する姿勢、あなた方は海賊なんですということを私は言うべきだと思いますけれども、これはこれ以上やっても水かけ論になるので、次のテーマに移りたいと思います。

 では、海賊でないとき、海賊でないけれども、あれは国際法上犯罪じゃないのかということが次は出てくると思います。

 私が外務省にいたときにシージャック条約という条約がありまして、これは海賊とはまた別の条約ですけれども、この条約で、船舶を破壊する行為はこれを犯罪とすると。犯罪の類型の中で、船舶を破壊する、そしてそれに加担する行為も含めて犯罪だというふうに、シージャック条約、我が国も批准をしているし、オーストラリアも、そしてアメリカも批准をしている条約。

 こういった条約を適用して、シージャック条約の枠組みの中でこれらを犯罪化して訴追していく。どうでしょうか。


○長嶺政府参考人 委員お尋ねの件は、海洋航行の安全に対する不法な行為の防止に関する条約、いわゆるSUA条約のことを御指摘になられたと理解いたしました。

 このSUA条約は、不法かつ故意に行う暴力等による船舶の奪取、管理、破壊、これらの海洋航行の安全を損なう行為を条約上の犯罪と定めております。

 実際、平成十九年二月、南極海におきましてシーシェパードのメンバーが行ったロープを調査船のスクリューに巻きつかせる等の妨害行為に関しまして、我が国は、国際海事機関事務局長に対して、本条約、SUA条約上の犯罪に当たるということから、当該メンバー四名を国際手配した旨、情報提供を行った経緯がございます。

 当該事案以降の事案は、現在関係当局により捜査中であり、同条約上の犯罪に当たるかについて現時点でコメントすることは差し控えますけれども、引き続き関心を持ってフォローしてまいりたいと思っております。


○緒方委員 一度シージャック条約が発動したというのを新聞記事で見たことがありまして、なかなかやるなと思ったことがあるわけですけれども、その後の適用については今関係当局との間で検討中だということでありますけれども、アディ・ギル号とかを見てみれば、どう考えたって、あれは船舶を破壊する試みをやっていて、そしてそれを後ろで支えて加担している人間がいる。加担している人間まで犯罪の類型に入っているわけですから、後ろでそれをサポートしている人間も訴追可能だと思います、ありとあらゆる手段を使って。

 そして、このシージャック条約というのは、国際的にテロ法制の中で網をかけていくという条約ですので、その国が起訴をしないのであれば、例えばシーシェパードの人間が滞在している国が起訴をしないのであれば引き渡せ、起訴するか引き渡すかどっちかだ、そういうシステムででき上がっているというふうに承知をいたしております。

 シーシェパードが行っていることがSUA条約上の犯罪の類型に当てはまらないという国は恐らくないと思います。仮にそうであれば、おたくの国で起訴しないのであればうちに引き渡せ、そこまで強く出るべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。


○長嶺政府参考人 緒方委員、SUA条約については大変エキスパートでいらっしゃる。今、条約の中身も御紹介いただきましたが、まさにそのとおりでございます。

 そういう意味では、我が国が締結しているこの条約をしっかり適用していくというのが基本的な考えでございますが、個々の事例につきましては、これは捜査との関係もございますので、それぞれのところとよく協力してまいりたいと思います。


○緒方委員 頑張ってください。

 国連海洋法条約の海賊の定義のところもなかなか難しいということであれば、そうじゃない別の条約のところでどんどん相手への包囲網を狭めていくことというのは重要だと思います。

 あともう一つ。シーシェパードが持っている船、ブリジット・バルドー号、スティーブ・アーウィン号、そしてボブ・バーカー号、この三つが今たしか動いていると思いますけれども、ブリジット・バルドー号がオーストラリア船籍、そしてスティーブ・アーウィン号がオランダ、ボブ・バーカー号もオランダというふうに聞いていますが、これは多分、便宜置籍船だと思うんですね。実際には、では、オランダがそのボブ・バーカー号とかスティーブ・アーウィン号とかいった船に対して有効な管轄権を行使しているとはとても思えない。単に便宜的にオランダの旗を使っているだけ。

 かつて、どの船だったか忘れましたけれども、アフリカのトーゴの船籍を持っている船を、日本からアプローチをかけてその国籍を剥奪させたということがあったと思います。

 これは副大臣にぜひお願いしたいと思うのが、オランダ、オーストラリア、こういった国に対して、こういうけしからぬやつらの旗国になるんじゃない、国籍を剥奪しろ、そういうアプローチを外交的にかけられませんか。いかがですか。


○伴野副大臣 先ほど来からの情熱あふれる緒方委員の御質問、私も、シーシェパードに対しては同じ思いでございまして、常日ごろ沈着冷静、温和を持ってやっておる私でございますが、この事柄については相当激しく抗議をさせていただいております。

 先ほど申し上げた、シーシェパードの船舶の旗国でございますオランダ、オーストラリアに対しまして、不法な妨害行為の再発防止に向けた実効性のある措置をとるように、累次にわたり申し入れ、抗議をしているところでございます。

 そして、それらを受けまして、オランダ政府につきましては、船籍の剥奪を可能にする国内法改正の準備をしていると承知をしております。また、我が国からもオランダ政府に対しまして、同法の改正が早期に行われるよう引き続き働きかけを行っていく所存でございます。

 また、オーストラリアにつきましても、オーストラリア連邦政府の警察によりまして、シーシェパードの妨害に対する捜査が継続中であると承知をしております。

 以上でございます。


○緒方委員 どうもありがとうございます。

 外務当局のみならず、ありとあらゆるルートを通じて、そういった国に、こんな船の旗国でいるんじゃない、旗を外させろというアプローチをぜひ続けていっていただきたいというふうに思います。

 そして、さらにこれは続きがありまして、国連海洋法第百十条、臨検の権利のところで、国籍を持たない船に対する臨検の権利というのが認められています。認められているというか、軍艦でやっても構わないというふうに書いてあります。

 私の言いたいことというのは、どんどん無国籍船にして、公海上で見つけたらそれをどんどん臨検していく。これは別に、国連海洋法条約上、全く禁じられるものでもないし、無国籍船というのは何の庇護も受けないというのが国連海洋法条約の考え方であります。

 である以上、やはり国内法制上も、公海上において無国籍船を無国籍船である事実をもって取り締まることができるような法制度整備、これを行うべきではないかと思いますが、参考人のいずれかにお答えいただければと思います。


○小野政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、無国籍船につきましては、国連海洋法条約で、公海において、軍艦、軍用航空機、または政府の公務に使用されている船舶、航空機が無国籍の船舶を臨検するということは可能となっております。

 国内法整備の必要性についてでございますけれども、先ほど副大臣の方からも答弁がございましたとおり、シーシェパードが所有する船舶の船籍国で現在動きがございます。こういった動向などを踏まえながら考えてまいりたいというふうに考えております。


○緒方委員 これで、仮にオランダの船籍が、ボブ・バーカー号であれ、スティーブ・アーウィン号であれ、そういったものが外れても、法整備しない限り、日本の自衛隊であれ、権限を持っている船が仮にその船を見つけたとしても、取り締まる権限がなければ、単に無国籍船が行っているだけであって、別に何も変わりないわけです。やはりこれは全体としてやっていく必要があって、国籍を外させる、そして国籍を外した後は、それを取り締まれる権限を国内でしっかりと法整備していく。これは必要だと思いますけれども、いかがでしょうか。


○小野政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、オランダの方でそのような動きがございますので、十分情報を収集いたしまして、おくれることのないように考えてまいりたいと思います。


○緒方委員 いろいろな形で、やはりシーシェパードは本当にけしからぬと私は見ていて思います。ああいったものが、国際的な網でどんどん包囲網をかけていって、活動しにくくなる、そういうありとあらゆる、きょう幾つか申し上げました、シージャック条約を適用して国際的な引き渡しを求めるとか、引き渡してこないと思うけれどもその圧力をどんどんかけていくとか、そして、旗国であるオランダ、オーストラリアに、もう国籍を外すと。

 実際にはあれは便宜置籍船ですから、恐らく有効な管轄権を全く行使していないと思います。オランダの船として、オランダの政府がちゃんと管轄権を行使しているとはとても思えないわけでありまして、そもそも便宜置籍船というのは船のあり方からして本来適当でないと思いますし、船と母国との関係で真正の連関が存在しないものについては、しっかりと日本としてもただしていく必要があるだろうと思います。

 シーシェパードの話はこれぐらいにして、次のテーマに移りたいと思います。

 次は、日本の領海の守りの話でありますけれども、基本的に領海というのは十二海里を主張することになっている。昭和五十二年に設けられた領海法において十二海里だということになっていますが、そこに、下に一つ附則がついておりまして、特定海域というものが設けられている。宗谷海峡、そして津軽海峡、対馬の東水道、西水道、そして大隅海峡、この五つの海峡については領海の主張を三海里にとどめているという現実が、今この日本にはございます。

 この制度、何でこんな制度になっているんですか。


○小野政府参考人 先生御指摘のとおり、領海及び接続水域法では、宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡東水道、対馬海峡西水道それから大隅海峡の五つの海峡を特定海域として、領海の幅を当分の間三海里にするというふうに規定されてございます。

 これは、我が国は海洋国家として、それから先進工業国として、国際交通の要衝たる海峡における商船、大型タンカーなどの自由な航行を保障することが重要であろうというふうに考え、我が国の総合的な国益の観点からそうすることとしたものというふうに理解をしています。


○緒方委員 昭和五十二年、一九七七年にこの法律ができて、当分の間と書いてあります。当分の間が既に三十五年続いています。いつまで続くんですか。


○小野政府参考人 私の認識では、昭和五十二年当時に考えました、私が先ほど申し上げましたような考え方は、現在でも基本的には変わっていないというふうに考えております。


○緒方委員 なかなか難しいですね。

 しかしながら、考えてみれば、我が国の領海があいているわけですよ、三海里しか主張せずに。そこを自由に通っていいと言われますけれども、当時外務省で幹部だった方の回想などを読んでみると、とどのところ、核搭載艦が領海を通過するときに、核兵器を積んだ核搭載艦が国内を通過するときに、領海内を通過するのも持ち込ませずに当たるから、だから、公海部分をあけておかないと日本海に核兵器を持った核搭載艦が入っていけない、そういう背景があるからこの特定海域を設けているんじゃないかという、これは私が言ったことではありません、外務省の元事務次官の方が言われたことであります。こういう背景が実はあるんじゃないかと思います。

 本当に核の密約の話というのは、この問題に取り組んでようやくケースクローズだと私はいつも思っているんです。この問題、まさに核の密約があるなしと、核の密約に当たらないように、日本の領海の主張を、十二海里でなく、中間線まででなく三海里まででとめておいて、公の海をあけておいて。

 しかし、こういったことというのは本当に事実なのかなと思うんですね。核搭載艦が通れるようにするために三海里の状態にしてある、そういう考え方について、外務当局のコメントをいただければと思います。


○長嶺政府参考人 先ほど、特定海域を設定した際の考え方につきましては海洋政策本部事務局長から御答弁がございましたが、今委員御指摘のこととの関連で、特定海域が領海となった場合、委員御案内のように、国連海洋法条約におきまして、こういう海峡におきましては、国際航行に使用されている海峡における通過通航制度というのが設けられております。

 この制度を導入するかどうかという点でございますけれども、そもそもこの制度が、いかなる場合に、いかなる範囲で適用され、また具体的にいかなる形態の通航が許容されるのかにつきましては、私どもも各国の国家実行をいろいろと調べております。既にこの通過通航制度を導入している海峡もございますし、またそうでない海峡もございます。また、導入されている場合の実行もさまざまでございます。

 それから、この制度を導入するに際しましては、まさに我が国の安全保障の観点からもいろいろな慎重な対処が必要であるというふうに考えてきておるところでございまして、こういう本件をめぐる基本的な状況には、これまでのところ、大きな変化があるとは考えておりません。

 その意味で、我が国の特定海域における領海の幅を三海里のまま維持することにつきましては、適切であるとの政府の判断を現時点で変えるということは考えておらないわけでございます。


○緒方委員 国連海洋法条約が日本に発効して、もう十五年です。国家実行を見ていく、国家実行を見ていくと言っていますけれども、世界にこんな感じの国際海峡というのはそんなにあるわけではないわけでありまして、いつまで国家実行を見続ければ国際海峡というのはこんなものなんだろうなということがわかるのかというのは、これはよくわからないですよ。このままずっと待っていると、実行を見ていく、実行を見ていく、各国の実行をずっと見てそれで判断させていただくと言うけれども、では、そんなにこれから実行が山のように、十個、百個、二百個と積み上がっていくかというと、積み上がっていかないですよ。いかないと思います。

 実際に、国際海峡のあり方については、例えば、分離通航帯を設けることができるとか、いろいろなことが書いてあります。それを使った上で、日本の安全保障との関係というのもございました。微妙な物言いだと思います。けれども、そのありとあらゆるツールを使った上で、日本の領海が、我々が本来主張できるはずの領海が日本の自発的な判断によって三海里のところまで戻ってきて、あいているというその事実、それはやはり重く考えるべきだと思いますけれども、もう一度、いかがですか。


○伴野副大臣 委員にお答えいたします。

 委員が先ほど来御指摘いただいていること、私自身も深くテークノートさせていただきました。

 その上で、さまざまな、領海、海峡におけます基本的諸課題あるいは諸要素、我が国を取り巻く安全保障環境の変化等の要素も踏まえまして、特定海域におけます領海の幅の問題につきましては、国際的な情勢を注視しつつ、不断に、しっかりと検討させていただきたいと思っております。


○緒方委員 それでは、少しこの件について、ちょっと違った視点から提起をしたいと思います。

 外国との関係で、外国と接している、外国がトイメンにある海峡というのが二つあります。宗谷海峡、そして対馬の西水道、この二つは、外国と日本との間で海峡ができていて、日本が三海里だと。

 相手国、宗谷海峡におけるロシアの領海の主張、そして、対馬西水道における韓国の領海の主張、それぞれ何海里ですか。


○長嶺政府参考人 申しわけありません、突然のお尋ねですので、正確かどうかあれですけれども、私が理解しているところでは、ロシアにつきましては十二海里、韓国につきましては三海里ということであります。


○緒方委員 そうです。

 ロシアについては、十二海里というか、多分二十四海里未満だと思うので中間線だと思います。ロシアについては中間線、韓国については三海里ということですね。

 ということは、対馬の西水道については、一つの海峡があって、お互いが三海里、三海里で自制をして、そして公海部分をあけている。しかし、ロシアの場合は違うんですね。ロシアは、満額、中間線までばんと主張しているんです。けれども、日本だけが三海里を主張して、そして公の部分であいているというのは、本来日本が中間線まで主張すれば全部埋まってしまうところ、本来日本の領海であるべきところだけがあいている。非対称性がここに存在するわけです。

 この非対称性が存在していることというのは、そんなに正当化できるものというのは、先ほど特定海域の意義について、なぜこの海峡をこういうふうにしているんですかと言われたら、海洋の自由な航行を維持するため、それが利益だと。その利益と比較したときに、我が国が主張できる領海を主張しないというデメリットと、自由な航行を確保するというメリットを比較したときに、自由な航行の方が上だということですね。お答えください。


○長嶺政府参考人 今御指摘の点につきましては、これまで御答弁申し上げてまいりましたとおり、また、さまざまな諸要素、安全保障環境その他、基本的な諸要素をよく勘案した上で、今後この領海の幅の問題につきまして、国際的な情勢も注視しながら、不断に検討してまいると先ほど副大臣から答弁がありましたが、そういう観点から総合的な検討を進めていくということでまいりたいと思っております。


○緒方委員 余りお答えになっていなかったんですけれども、領海は、多分、日本の国のもとをなす部分ですよね。そのもとをなす部分をあえて日本の自発的判断で狭くすることというのは結構重大な判断だと思います、日本が本来領海として保持することができるエリアがあるにもかかわらず、それを保持しないというのは。

 領土に対して、今、意識が物すごく高まっています。領海に対しても同じだと思います。我が国のテリトリアルシーですよ。それをあえてセットバックして、そして、その対価として得られているものというのは、世界全体の人が自由にこの海域を通っていいですよと。何が通っていくかというと、これは中国の艦船であったりロシアの艦船であったり、それも自由に、公の海ですから、太平洋のど真ん中を通るのと同じ感覚でばんばん通っていいわけですよ。

 これは、対馬の西水道のように、韓国との関係であれば、お互いが三海里を主張しているからそれはよかろう、お互いが三海里だからなと何か納得するところもあるんですけれども、ロシアとの関係では、ロシアは中間線まで主張している、こちらが三海里だ。

 この非対称性を考えて、そしてそれが日本の自発的な領海の放棄によって成り立っている、これはやはりおかしいと思いませんか。以上、どうでしょうか。


○伴野副大臣 先ほど来から本当に貴重な御指摘、改めてきょうは重く受けとめさせていただきまして、不断の検討をさせてください。


○緒方委員 この件は、もっともっと深くやっていくといろいろなテーマがあるんですけれども、多分、知らなかった方が多いと思います。知らなかった方が多くて、多分、聞きながら、そんな話があったのかと。そして、日本の領海が、そんな日本の判断によって狭くなっているということ、これは、今、意識が物すごく高まってきている中で、単なる海洋の自由な航行とか、国連海洋法条約の実行が積み上がっていないとか、そういう理由だけで我が国の貴重な貴重な領海が狭くなっているというのは、なかなか説明が苦しくなってくると思います。しかも、領海法ができて三十五年、そして国連海洋法条約を批准して十五年、それぞれ、もう月日もたっています。当分の間みたいな言葉で何か議論を続けていくことというのは、なかなか難しいと思います。

 結論としてどうなるかわかりませんが、真摯なる見直しを、外務そして防衛、海上保安庁、海洋政策本部、いろいろなところがあると思います、そういったところでやっていただきたいと思うんです。

 かつて、三十五年前とか、これまでずっと綿々と国会答弁の積み上げがあると思います。その答弁の延長でいる限りは、これは五十年たっても百年たっても同じことを絶対言っているはずなんです。これをもう一度見直して、見直した結果として、やはりそれでも今の制度がいいんだという判断であれば、それはそれでいいと思います。けれども、何となく惰性で、かつて何か外務大臣がこんな答弁した、外務省の何とか局長がこんな答弁した、それだけに引きずられてやり続けるということは、これは正しくないと思いますし、そこを政務の側からしっかりと取り組んでいただければと思います。

 以上でございます。ありがとうございました。