まず、私のTPPに対する考え方は大まかに言うとこんな感じです。


● 関税撤廃がとてもクローズアップされるが、関税を全部撤廃できるのはシンガポールだけ。そこは少したかを括って考えて差し支えない。

● TPPで本当に注目しなくてはならないのは、関税交渉よりもルール等に関する24の分科会。ここでどれだけ世界標準的な動きを作り出せるかが大切。

● そもそも、既に外国は(一般論としては)日本については、農業市場でのシェア拡大が主たるターゲットではなくなっている。

● なので、交渉くらいはやってみるべき。交渉の結果が到底受け入れられないものであれば妥結に加わらずに出ていけばいい。


 まあ、もうちょっと色々と戦術的に思うことはあるわけですが、私は大体こんな感じで考えています。基本的に誰と話す時にも同じことを言います。そこはブレないようにしています。まあ、ブレるような内容ではないわけですし、人によっては「ズルいモノの言い方だ」と思われるかもしれません。ただ、本当にこの辺りが私の真意です。


 そんな中、先日、とある反TPP団体の方々の会合に行きました。ちょっとしたハプニングも含めて色々ありましたが、その団体の方々は信念を持ってTPPに反対しておられるわけで、そこは私は100%尊重する立場です。


 ただ、そこでけしからんと思ったのが同じく出席していた議員達です。おべっかを使うように「私はTPP反対です」の宣伝合戦に近いものがありました。1年前、私があるTPP反対派の会合で上記のような事を言ったら、とある野党の議員の方が直後に「今、民主党の緒方とかいう議員がなにかTPPに前向きなことを言ったがけしからん。うちの政党は反対だ。」とアピールに使っていました。


 本当に信念を持っているのであればいいのですが、それらの方々は自動車や鉄鋼産業の人達の前では真反対のことを言っているケースが多々あるはずです。これらのTPP推進派の業界の方の前で同じように反対を表明できるのであれば、私はその議員を非常に評価するでしょうが、私が見る限り、そこまで腹が据わっている人は希少でしょう。


 かつて、外務官僚1年目時代にウルグアイ・ラウンド妥結時は細川政権、その成果たるWTO協定の国会審議の時は村山政権だったのを経験しました。まあ、ウルグアイ・ラウンド妥結に大抗議をしてしまったため、とても居心地の悪そうな大臣達の姿を国会審議で何度も目の当たりにしました。妥結した側が野党に回り、国会で審議をお願いするのは批判した側という歪な構図でした。当時の与党の理屈は「農業対策が十分でないまま妥結したから、当時は反対した。しかし、我々はたくさん農業予算を付けた。」みたいな感じでした。その理屈に納得できるかどうかはともかくとして、そんなものじゃないかな、と思っています。


 TPP反対を喧伝する議員の信念を確かめる方法があります。それは「失礼ですが、同じことをトヨタと新日鐵の幹部の前でも胸を張って言っていただけますね?」と聞いてみることです。そこで少しでも怯む議員は最後の最後にはケツを捲ってしまうと見て間違いないでしょう。