どうもブログの調子が悪くて、前回のエントリーの表の下に文章が書き込みにくかったので、エントリーを分けて書きます。


 やはり、BSE以降はアメリカからの輸入がガクンと減っていますね。かつてはアメリカとオーストラリアとは輸入規模が殆ど同じくらいだったのですが、今は1:3くらいの感じです。これだと、アメリカ政府はテキサス等の牛肉農家から「さっさと日本市場に戻れるように日本に外交圧力をかけろ」とやんややんやと言われているはずです。


 例えば、牛丼用の肉というのは、その生産、加工のためだけに特別な投資が必要です。あのスライスした肉を別の用途で使うことはあまりないことは容易にご理解いただけると思います。日本仕様に投資してきたアメリカの牛肉農家からすると、それはそれは大きな損失を被っているでしょう。逆に図らずも日本でのシェアが増えたオーストラリアは当初は「どうせ、BSEが落ち着いたらアメリカ産に戻るんだろうから、日本のシェアを埋めるための新規投資はあまりやりたくない」みたいな感じでしたけども、現在は日本市場をガッチリ握るために様々な資本投下をしていると聞いています。


 一部の製品を除く、これらの牛肉の輸入税率はWTO協定上は50%ですが、実際には自主的な自由化措置として現在は38.5%まで下がってきています(その代わりに特別のセーフガード措置がある。)。そして、これまでFTAで自由化した部分はメキシコやチリとのFTAで若干の関税の下げを約束しています。


 ただ、例えば冷凍ものの「その他のもの」という品目の輸入が多いですけど、これはハンバーガー原料等に使われるものでして、恐らく国内産牛肉の主たる用途ではないはずです。あと、冷凍ものの「ばらのもの」というのが牛丼用ですけど、これも国内生産は多くないのではないかと思います(国内生産についてはあまり詳しくないので、もし間違っていたらすいません。)。


 以前から何度か「関税については品目分類を9桁ベースで細かくやって、自由化できるものとできないものをはっきり明別した上で、日豪、日米のFTAに臨むのが良い。」と書いたことがあります。国際的には「0201.10」みたいなところまでが統一的に定められているだけで、その後に続く3つの数字の部分は日本で決めていくことができるようになっています。なので、ここで牛肉の種類を用途別に今よりももっともっと分類しまくって(つまり、関税番号の最後の3つの数字の部分のバラエティを細かく増やす)、「自由化しても国内生産に影響がないもの」、「自由化したらまずいもの」を明確に、かつ細かく分けてしまうことは可能です。あまり恣意的にならない限りにおいて、それは何ら問題のない行為です。


 すべての農産物の自由化に似たような構図を見て取ることができるのです。品質に差がないもの(例:砂糖)みたいなものではこのアプローチは通用しませんが、部位毎に用途が違ったりする肉ものではこのアプローチは馴染みやすいです。日メキシコのFTAでは、メキシコ側から豚肉の自由化を求められ、ゴリゴリ交渉した結果、価格帯が高い高級豚肉のところで譲歩する一方で価格帯の低いところは守りきったという実例もあります(事態はもうちょっと複雑なのですが)。


 このあたりに日豪、日米のFTA、ひいてはTPPの解があるような気がしますけどね。