今回の震災で気になったのが「ちょっと制服組と官邸の意思疎通が悪いな」ということです。何がどうだということを書くのは避けておきますが、官邸において制服組の知見が必ずしも活かされていないなということを感じました。勿論、内閣危機管理監の下には制服組は出ていたと記憶していますが、何処まで意義あるかたちで活躍の場があったのかについては相当程度留保があります。


 今、総理大臣を支える秘書官は7名。政務秘書官が1名、事務の秘書官が5名体制で厚生労働(筆頭)、財務、経産、警察、外務で、その後、秘書官事務取扱として防衛省背広組が事実上の事務秘書官に入ってきています。その他にも、官房副長官補として内政、外政、安全保障・危機管理の3名がいます。


 この秘書官制度、常に秘書官を出しているのは政務+財務、経産、警察、外務までです。麻生総理の頃は事務の筆頭秘書官は総務省から来ていました(が、その後、総務省からは秘書官が出ていません。)。菅総理は厚生労働から事務筆頭秘書官を連れてきて、しかも、かなり無理をした純増分として防衛省から念願の秘書官が入っていますが、厚生労働と防衛については次の政権では入るかどうかは分かりません。上記の秘書官を出している役所以外の役所は参事官クラスで内閣官房に人を出せるだけで、非常に総理との緊密さに差が出ます。


 これだけ直近のスタッフがいるのですが、やっぱり制服組は歴史的な経緯があってか官邸からは遠ざけられてきました。かつては制服組が官邸に足を踏み入れることすら憚られた時代がありましたが、私の記憶が正しければ橋本龍太郎総理の頃から制服組がブリーフに入っていくことも始まったように思います。


 今は背広組が偶然秘書官に入っているので、かなり改善はされていると思います。ただ、いざという時には制服組を秘書官、補佐官クラスで官邸に呼びいれ、その知見がダイレクトに総理大臣に入るようにしておくことが必要なんじゃないかなと思います。今次震災であまり制服組からの知見が活きていないのは、日頃から総理と制服組との接点がないからでしょう。まあ、そもそも菅総理については秘書官全体との距離感があるという噂は絶えませんが(真偽は知りませんが、秘書官が総理車に同乗できないという報道もありましたね。)。


 具体的には、将補クラスの方が補佐官でも、秘書官でもいいですから、総理官邸に必ず席を一つ持っておくように制度改善をした方がいいでしょう。防衛に関する制度ならば背広でも答えられるでしょうが、具体的な装備の配置状況や機能については「餅は餅屋」だと信じて疑いません。総理からのその下問に対して迅速に応え、総理からの指示を徹底するのは制服組が適しています。余計なコメントですが、決してそれは「(手垢のついた言葉としての)シヴィリアン・コントロール」に反するものでは一切ありません。


 本当はこれに続けて、天皇陛下の副官として将クラスの方を皇居に配置すべきというのもあるのですが、これはもう少し敷居が高いので別の機会にしたいと思います。