何度か、このブログでもシーレーンの航路のポイントに着々と中国がコマを進めているということを書きました。パキスタンのグアダル港、スリランカのハンバントタ港、バングラデシュのチッタゴン港、ミャンマーのシットウェ港、大ココ島、小ココ島におけるレーダー・・・、そして、モルディブのマラオ島の基地設置です。


 一般論として言うと、日本においては、この手の情報が広く共有されるのが世界に比べて数年遅いです。あれだけ、一時期シーレーン、シーレーンと盛り上がっていたのに、今ではもう関心を払う人も少ないです。例えば、世界は10年以上前からグアダル港の問題について指摘してきたのに、日本で国際関係の「有識者」間で注目が集まるようになったのは最近です(勿論、日本の中にもアンテナの高い方はたくさんいます。)。


 総じて、中国は「民間港開発だ」と主張することが多く、実際、見た目だけではそれ程のことはないように思える部分もあります。ただ、それは隠された意図があるわけでして、日本としては中国のプロパガンダを真に受けることなく、何が出来るかを考える必要があります。


 私は対中政策で一つアイデアを持っていて、「彼らに気持ち悪いと思わせておく」ためのプロジェクトを幾つか仕掛けてみるのがいいと思っています。以前書いたような「中国囲い込み」 なんてのは、その典型です。このプロジェクトは、表向き何ら悪意がなく、かつ、とても楽しくやれてしまいます。私が経済協力の担当者なら絶対にやってみようと旗を振るでしょう。細かくは再掲しませんので、リンクのところを読んでいただければありがたいです。


 似たようなことをシーレーンでもやれないかなと思います。パートナーはインドがいいでしょう。調べてみれば分かりますが、上記の港や軍関係施設はすべてインドをグルーッと囲むようになっています。中国の当面の意図は、マラッカ海峡を回らなくても雲南や新疆にも物資が届けられるようにしたいということなんでしょうが、それとてインドの軍関係者からすると「何故、自分達の国境をなぞるようにやっているのだ」ということになるでしょう。


 例えば、インドと協力して、モルジブのマラオ島(首都マレから南に40キロくらい)からちょっと離れたところに何か商業用の目的を持つ施設を(採算度外視で)建設してみるなんてのがいいのではないかと思います。マラオ島の中国基地はいずれ潜水艦の寄港みたいなものを念頭に置いているはずですから、その近くに漁業基地とかをしれーっと作ってみるのは、中国にとっては気持ち悪いでしょう。この(一見善意に見える)気持ち悪さがいいのです。


 もっと、チャレンジができるのなら、イランとの関係を強化していくのがベストじゃないかなと思うのですね。核開発の問題で一定程度の前進が得られなかったり、アメリカやイスラエルとの関係が好転しないうちは難しいのでしょうけども、イランの存在が今後、対中関係においてとても大きくなっていくような気がしてなりません。一筋縄ではいかないイランですけど、日本の外務省には非常に優秀なペルシャ語チームがいますから、イランとの関係のフロンティアをもっと広げていけないかなと最近よく思います。


 ともかく、中国は着実にインド洋に手を打っていて、それを嫌がっているインドがいる。であれば、インドと良い協力関係を構築していくのが一番いいのではないかということです。