最近、立て続けにフランス大使館、駐日EU代表部の方との朝食会に参加したり、EUからのビジネスマンと話したりする機会がありました。色々なテーマがあったのですが、それぞれの機会において日EUのFTAについて議論がありました。私からの発言を繋ぎ合わせると大体以下のようなことでした(もう少し丁寧な言い方をしていますが、ホンネはこんな感じでした。)。


● EU側からは「日本とのFTAは、あまりEU側にメリットがない。日本側がどの程度非関税障壁で汗をかくかだ」といった話があるけども、そもそも論として「メリットがない」というのは、これまでの日本の関税引き下げが十分になされているからであって、これまであなた方はそのメリットを十分に享受してきた。そこを忘れてもらっちゃ困る。むしろ、この視点で言えば、これまでメリットが相対的に少なかったのはうちの方だ。


● 非関税障壁について色々な懸念があることは知っている。しかし、20年前、フランスのクレッソン首相は日本製ビデオ機器の輸入に際して、税関を(地方都市の)ポワティエに指定して、そこに十分な人員を割かないといった露骨な非関税障壁を課してきたことを想起してほしい。しかも、クレッソン首相は「日本人は黄色いアリ(fourmis jaunes)」とまで言って敵愾心を露わにしていた。日本はこういった露骨な非関税障壁にも負けずに欧州市場の扉を開けてきた。同レベルの努力を今、あなた方はやっていると思うか。


● 非関税障壁の中には正当化できないものがあることは知っているが、私に言わせれば大半は「あなた方の努力不足」とでも言えるもの。フランス人のビジネスマンで日本語が話せる人間がどれだけいるのか。私は日本市場に伴う最大の非関税障壁は「日本語」だと思う。であるからこそ、日本語を学び、日本の商習慣に馴染む努力をしなくてはいけない。


 EUの今の主張は「日本の市場でEUのシェアが少ないのは、日本が非関税障壁で閉鎖的だからだ。」というものです。政府調達でJRに列車が売れないから閉鎖的、EUの基準を満たしている自動車が日本で販売できずシェアが伸びないのはおかしい・・・、そんなものが多いのです。一昔前、アメリカとの貿易摩擦で、アメリカ側が数値目標を求めてきたのと同じものを感じます。「欧州企業に結果が出ないから閉鎖的」、結局、そういうことなんだと思います。


 では、政府調達でEUが十分に開放的かというとそうとは言えません。相当に恣意的な運用がなされています。ただ、EU側の説明を素直に聞いていると、何となく「議論の場」がそこで作られて、何となく納得させられてしまいそうになります。日本人はそういうのに弱いのですね。


 韓EUのFTAが発効しているため、日本側に焦りがあります。日本の産業界からの懸念に応えていく必要があるのも事実です。だからといって、相手の言っていることを何でも「はいはい」と聞く必要はありません。外交はハッタリの世界です。向こうがぶちかましてくるのであれば、こちらも少しぶちかましてあげることが必要だと思います。


 なので、普段、接している中で彼らが聞くことがないメッセージをあえて伝えたというわけです。政府の言いにくいことを言う、それが議員の役目だと心得ています。