フランスの会計検査院が「労働に係るコストを下げる代わりに、付加価値税を上げるべし」という勧告をしていました。なかなか面白いテーマですので、ちょっと取り上げます。


 フランスの会計検査院は、ドイツを相当に意識しているようで「ドイツに比べて、社会保障や所得税等労働者からの徴収が多く、この点でドイツと差が出ている。一方で国の財政状況もドイツとの差が出ていて、労働から徴収するよりも、付加価値税の増税で対応すべき。」というのが簡単な要約です(専門家の方からするといい加減な要約でしょうがご容赦ください。)。


 まあ、この勧告が正しいのかどうかは私には分かりません。フランスの付加価値税は19.6%で、生活必需品については5.5%ですから、それを上げろということはどの程度の水準なんだろうか、ということも分かりません。


 ただ、特筆すべきはこの勧告を会計検査院がやっているということです。フランスの会計検査院は「政策判断」にまで明確に踏み込む強い組織です。日本では会計検査院が「消費税上げろ」なんて勧告をすることは想定されていません。それはそういう権限を持っていないからです。日本の会計検査院は、政策判断には立ち入らず、その政策を執行するための種々の問題点を指摘するのが仕事だと言って差し支えないでしょう(正確には違いますけど)。


 事業仕分け第三弾の主査をやった身として、そして、今、党の行政刷新PTで色々とお役を貰う中で思うことは、日本ではあちこちで同じようなことをやっているということです。総務省では行政評価、政策評価(各省でやったものの統括)、内閣府には行政刷新会議、財務省には予算執行調査、各省庁には行政評価レビュー、そして、会計検査院・・・と、それぞれ目的は違うのですが、いわゆる広義の「効率化」、「無駄削減」といったものに取り組む組織が存在しています。勿論、それぞれの役割は重要なのですが、そろそろ、これらの機能を統合して、行政のありとあらゆる面について広範な権限を持ってチェック機能を働かせることを考えた方がいいのではないかと思います。


 特に会計検査院に強い権限を与えて、政策判断に踏み込ませることをやった方がいいのではないかと思います。フランスのように政策提言的なところまで行くのかということについては、まだ明確な意見を持ってはいませんけども、それはそれで検討に値するのかもしれません。なお、フランスの会計検査院はその検査結果を書簡で各省大臣に送り、そして、各省大臣から会計検査院長に反論が書簡で返ってきます。その反論に会計検査院長が再反論を行い、それがすべて報告書に出ます。見ていて、「うーん、厳しい」と感じます。


 すべての役所が最も恐れる組織は、まずは内閣法制局です。内閣法制局を通らないとすべての内閣提出法律は閣議決定に至らないわけですから恐れられます。会計検査院は憲法に書いてある組織でして、もっと役所が恐れる組織にしなくてはなりません。今でも一目おかれる組織ではありますが、恐れられるとまでは行きません。私は会計検査院を内閣法制局並みに恐れられる組織にしていく必要があると思っています。


 今、行政刷新会議を始めとして、色々な組織体が行政のチェックを行っていることは上記のとおりです。若干重複があるというのも事実です。何処でもいいのですが、強烈な権限を持った組織に纏めた方がいいのではないかと考えています。私はその役割は会計検査院がいいと思います。


 若干、雑駁なエントリーですけども、意を汲んでいただければ幸いです。