東京の街中で時折、むちゃくちゃマナーの悪い駐停車をしている車を見ます。それはほぼ間違いなく外交団(やその家族)です。赤坂のど真ん中で平気で駐車しているのを見ると、思いっきり蹴飛ばしてやろうかと思いたくなるくらいマナーが悪いです。


 外交官というのは「外交関係に関するウィーン条約」によって保護されておりまして、その中で身体の不可侵、裁判からの免除などが定められております。実はこの条約の下でも、駐車違反切符を切ることは認められていますが、それを無視しても日本の警察当局は何ら措置を講ずることはできないことになっています。


 実はこれが一番深刻なのがニューヨーク市です。国連本部があることから種々の国際条約で免除を享受する人間の数が多いからです。ジュリアー二、ブルームバーグといった市長は非常に憤慨をしているようで、交通違反ものについては条約を無視して取り締まってやるくらいの勢いを感じますが、ワシントンの国務省がそれを宥めているという感じです。あのアメリカでも「外交官を取り締まると、逆にその国でのアメリカの外交官に報復が来る」というのを懸念するのです。なお、違反の件数が多いのはエジプト、クウェート、ナイジェリアといった国だそうです。


 なお、日本の外交官は在任地での交通違反等については基本的に違反金を払うことにしていたはずです。余程のことでもない限り、免除を主張することはしていないと思います。


 条約の本旨は、外交官は何でもやっていいということではありません。あくまでもその職務を行うに際して必要な免除を認めているということです。したがって、最も正しい手続というのは、納付書が来たら、対象となった外交官が所属する大使館等が公文書(口上書)で「外交関係ウィーン条約●●条に基づき、納付の免除を通告する」みたいな回答をすることです。そこまで来て、一つの事件は正式にcase closedになるわけです。そして、そういう対応をしている在京の外交団は少ないと思います。


 ということで、警察庁に「日本に駐在する外交団による道路交通法違反事例(含、交通反則制度の適用)に関し、昨年の違反件数が多かった国、国際機関等を上位から順に10カ国、ご教示いただきたい(件数も含めて)。また、その内、罰則(含、違反金の納付)に服した件数。」という照会をしてみました。


 回答は「そういうデータを取っていない」でした。「データを取ればいいじゃない?」と思うのは私だけではないはずです。やろうと思えば、そんなに手間は掛からないはずです。


 「そんなものを公表したら二国間関係に影響する」という懸念はあるでしょう。たしかに懸念は分かります。対応策としては、外務省から予め在京の外交団に「交通違反金の免除については、口上書で返事をされたし。」という通告をしておいて、その後、きちんと公文書で返ってきたものは公表から除外すればいいのです。違反した事実に対して(公文書で)胸を張って説明できるのであれば、それはそれでいいのだと思います。そこまで行かないものは悪意があるとの推定が働くわけですから、見せしめにしてあげていいはずです。


 日本では外交官ナンバーは特徴があるのですぐに分かります。しかも、国もある程度は分かるようになっています。あのナンバーの車が傍若無人な駐まり方をしていると、番号を控えてその国の大使館に苦情の一言でも言ってやりたくなります。