新年から日々の生活に全く根ざさないテーマで申し訳ありません。


 今、国際社会の一つの大きなトピックとして、南スーダンの独立という話があります。これが色々と考えさせられるテーマなのです。マスコミでは北部イスラム、南部キリストといった切り方をするところもありますが、南部はアニミズム的伝統宗教+キリスト教といった感じなんだろうと思います。イスラムというと日本ではちょっと「古い」イメージがあるように思えますが、スーダンみたいな所では文化的に洗練されたイスラムが、南部の伝統的アニミズムを信奉する人々を支配してきたという姿が正しいですね。本来であれば、ウガンダあたりと一緒になっている方がピンと来る地域ではあります。



 蘊蓄の部類ですが、「スーダン」というと今ではあの国を想起する方が多いでしょうけど、本来はサハラ以南の地域を幅広く指す言葉でして、私がよく出張していたマリ共和国も「フランス領スーダン」と位置づけられていました。恐らくは漠然と、イスラムから見て南部の「肌の色が黒い人達のいる地域」くらいの意味合いなんだろうと思います。


 今回の独立運動で気になったのが、あまり欧米が騒がないことです。黙認に近い状態でして、むしろ背後で押しているのかもなと思いました。本来、アフリカにおいてこの手の国の分割に繋がる話には慎重になるはずのものなのですが、エル・バシール政権への揺さぶりも兼ねて、何となく欧米はこのゲームに乗っているような印象があります。アフリカには人為的な国境線を見直したいと思っている勢力があちこちに居て、他地域への波及を恐れるべきだと思うのです。先日、CNNを見ていたらコフィ・アナンが「これは植民地時代の人為的な国境線見直しだが、あくまでも例外である。」と強調していたのがとても印象的でした。アフリカ出身の元国連事務総長が「例外」であることを強調しないといけないことに歴史的な経緯の深さを感じずにはいられませんでした。


 あと、もう一つ不気味なのが、中央政府が独立運動にあまり反発していないことです。スーダン在住の某氏と話をした際、「最近、中央政府がUnity、Unityと頻りに喧伝しているんですよね。時既に遅しだと思うんですけど。」と話していたことも気になります。勿論、エル・バシールは「南部に国を作る力はない」みたいなコメントはしていますけれども、やりたければもっときつい措置は講じることは出来るはずです。もう、既に独立は既定路線だからと諦めているのか、それとも別の方策を考えているのか、国際社会が頭を押さえつけているのか、何なのかはよく分かりませんが、報道で見る限りエル・バシール政権の相対的な落ち着き振りが奇妙に映ります。


 そもそも、南部独立と言うものの、何処が国境線かなんてことはよく分からないのです。丁度、そのあたりで石油が出るわけでして、既に境の付近にあるアビエイという地方では衝突が生じているようです。南部は石油が出ることから将来を有望視する向きもありますが、輸出はほぼすべてポート・スーダン(北部)でしょうから、結局北部に首根っこを押さえられる可能性が高いです。しかも、南部で石油開発をしている中国はエル・バシール政権とズブズブですから、そんな中国との関係をどう仕切っていくのかが気になります。なお、南部のケニアからの輸出は非現実的でしょう。


 あと、南部スーダンは現時点では社会インフラが全く整っていません。舗装された道路は50キロ程度というデータを見たことがあります。首都となるであろうジュバの街の写真を見ましたけど、「うーん、これは厳しい」と感じました。社会エリートも大して存在していないはずで、独立は良いけどいきなり困難に直面する可能性が大です。行政を仕切れる現地の人間がいない中、下手をすると中国がガッツリ入り込んでしまってどうしようもなくなってしまう国が出来てしまうことを懸念します。特定の国をあげつらうことはしませんが、ユーフォリアの中で独立したけど、結局国の運営が上手くいっていないケースは最近でもありました。あれと同じ運命にならなければいいけどなという気分です。


 まあ、色々と書きましたけど、どうもアフリカの水を飲みすぎてしまった私には「若干の違和感と懸念が入り交じった期待感」という気持ちが強いです。さて、どうなりますか。注目しています。