TPPについて議論が喧しいですね。色々な議論があることは否定しません。ただ、多分、賛成の方も、反対の方も本当の意味で「TPPそのもの」に関心を持っている方は少なくて、単に「うちの産業に影響がある」という視点から語られていることがほとんどです。そういう意味で、このTPPの議論というのは内政事項です。勿論、すべての外交は内政事項の延長ですから、別に内政的考慮で議論されることは良いことですけども、ただ、そこだけに留まっていて「TPPそのもの」に関心を持つ人が少ないことはとても残念でなりません。


 まあ、そんなことを思いながら、TPPについて調べてみると、今の交渉はこういう方針で進んでいるようです。①基本的には既存のFTAがない国との間ではまず二国間で交渉する、②ただし、既存のFTAを有さない国が集まって複数国間で交渉を行うことも妨げられない、どうもそんな感じです。TPPの中には自由化の交渉だけでなく、ルールの交渉がありまして、ルールの方は作業部会を設けてやることになります。


 となると、解釈が難しいのですが、恐らくアメリカは既存のFTAの内容を見直すことはしないという意図が上記の方針の中から読み取れます。例えばアメリカは既にオーストラリアとはFTAがあり、その中では砂糖の追加的自由化はなく、牛肉も非常に長いステージングでの削減・廃止(18年)になっていたり、乳製品の自由化も本当に限定的にやっているだけです。TPPがあろうとも、アメリカはここには一切手を付けるつもりがないし、そこが担保された(ように読める)交渉の仕立てになっているだけです。


 方針の読み方については、多分、国によって解釈が違うような気もします。既存のFTAから更に深掘りするのだ、と読んでいる国もあるでしょう。いずれにせよ、今はそこには触れずにやっているのだろうなという気がします。最後の最後のところで押し切るつもりなのでしょう。


 ここから派生すると、日本はオーストラリアとの関係については、既存のFTA交渉の枠組みを優先するという立場がとれないかなと思います。つまり、上記の方針の「既存のFTA」の中に「交渉中」のものを入れるというだけです。まあ、これは事前に言わなくてもいいわけで中に入ってからそういう主張をしてかき回せばいいだけです。勿論、それでも現時点で何も交渉すらない国との関係では、TPPの枠の中での二国間交渉になりますけどね。


 つまりです、ここから何となく見えてくるのはTPPというのは関税引下げ等の自由化の部分は、①既存のFTA(で実現した自由化)と②TPPの下で新規に行う二国間交渉(で実現する自由化)の2つの全体にTPPという網をかぶせるということなわけです。「これをそれ程恐れる必要があるかな?」という気がするのです。むしろ、24個設けられたルールの部会の方が気になります。これは既に何度かこのブログに書いてきたのであまり繰り返しませんが、このルールの方でガンガン「日本標準」を売りまくってやるという気概を持つべきです。


 国会でTPPを巡る動きは盛り上がっていますが、その実は「TPPそのもの」は盛り上がっていないというのが私に見える実相です。色々な議論を聞いていると、誰も「TPPそのもの」になんか関心がないんじゃないかとすら思えることすらあります。だから、その証拠に政府の方針が決まったら、与野党とも議論が少し低調になりました。本当に関心があるなら、継続的に「TPPそのもの」について学ぶべきなんですけどね。我々国会議員はヒステリーを起こすのでも(Hysteria)、放火魔なことをやるのでもなく(Pyromania)、もっと正面からTPPに向き合うべきでしょう。


 ただ、私は「デフ・レパード」は好きですけどね・・・・、と微妙で余計で何の関係もないオチを付けて今日は終了です。オチが分からない方は、分からないままで何の問題もありません。