かつての外務省時代の「とある上司」が特命全権大使になる新聞人事が出ました。実名を出すと差し支えるでしょうから、あえて「とある上司」としておきます。


 その「とある上司」とは、非常に嫌な思い出が残っています。あれは2005年8月1日でした。月曜日でありまして、私が外務省で辞職の辞令を貰った日です。私の退職日は2005年7月31日付でしたけども、日曜日だったため8月1日になったものです。


 退職金はたしか300万円くらい。周囲の人間に「うーん、衆議院選挙での供託金相当だな。」とくだらないジョークを言っていたら、税引後は260万円くらいになってしまって、「うーん、供託金にもならんかったな。」と言い直すようにしていました。


 まあ、そんなこんなで新たな人生を歩み始めようとしていたわけです。一番最後に「とある上司」の所にご挨拶に行きました。まあ、とりあえずお互いに社交辞令を交わして、「お世話になりました」とその場を辞そうとしたところで、その言葉は出ました。


「ああ、最後に君に一つ折り入っての頼みがある。君はこれから国政を目指すと聞いているが、与党の中で外交を専門にしている議員の選挙区から出るのは止めてほしい。外務省が国会対策で与党根回しをする際に嫌がらせをされるから。」


 ちょっと耳を疑いました。最後の餞別の言葉が「君の存在が外交を専門にする与党議員の機嫌を害して、国会対策で面倒にならないようにしてくれ。」です。その「とある幹部」は、当時の与党との関係で色々と国会対策上面倒なことを抱えていたのかもしれません。いや、きっと過去にあった同様のケースでいびられたことがあるのでしょう。私はそれを見たことがあるわけではないのでどうこう言うつもりはありません。しかし、最後の餞別の言葉がその程度のものであったことは色々な意味で印象的でした。


 「ああ、11年務めて、幹部から最後に出てくる言葉はこの程度のものなんだな。」と思い、何となく後ろ髪を引かれるような思いみたいなものがその瞬間、スパッと切れてしまいました。それはそれで良かったと思います。正門から出て行きましたが、もう振り返って感傷的になることもなかったですね。


 ただですね、多分、上記の「とある上司」の発言は、国家公務員法及び人事院規則の政治的行為の制限に引っ掛かります。面倒臭いので条文の列挙はしませんけれども、まあ、ほぼ確実に引っかかるはずです。政治的行為の制限に関する罰則は「三年以下の懲役又は百万円以下の罰金」となっていますね。


 ある意味で「政府と与党との一体化」が如実に実現できているとでも言えるケースのご紹介でした。ただ、今のうちの与党ではこの手の「一体化」はないと思います。次、外務省に質問するチャンスがあれば、内容に盛り込んでみようかなと思っています。外務省の政務三役はどう答えてくれるでしょうかね。興味津々です。