何はともあれ、私が主査を務めていたセッションはすべて終了しました。30日は終わった後、地元に戻るためにダッシュで新幹線に乗り込みました。新幹線で車窓から流れゆく景色を見ながら、この2ヶ月半くらいのことが脳裏によみがえってきました。


 全体としての、自分自身の出来映えについては「55点」くらいかと思います。思っていたことの半分強しか出せなかったように思います(なお、これは自分に対する評点であり、作業全体への評点ではないことを申し添えます。)。時間的な制限や周囲との関係等、まあ、自分なりに尽力したつもりではありますが、これは自分自身の至らなさだと結論づけています。


 「埋蔵借金」の話が事前にクローズアップされました。私は「どれくらいのお金が出るのか」みたいな話は全然念頭にありませんでした。逆に「ああ、こんなところに債務があるのか」ということについては深刻な思いを持ちました。別に「埋蔵」ではなく、これまでも明らかになっていたものですが、自分で強い問題意識を持ったものとしては以下のようなものがありました。


● 交付税:33.6兆円

 これはかつての交付税配布に際して地方負担分と位置づけられていたものです。しかし、本当はこれだけではないのです。かつては交付税の財源調達をそのまま国債を立ててやっていたものを、今では臨時財政対策債というかたちでやっているだけなのです。これは一旦、地方で借金をして、それを後年度に交付税措置するというものでして、こちらはこちらで30兆円以上溜まってきています。つまり、交付税の配布に伴う借金は(特会のバランスに乗っていないものも含めると)既に70兆円のオーダーになりつつありますし、既に臨時財政対策債の引き当てをするために更に借金をするという構図になっています。「地方は財源不足でかわいそうだから」みたいな情緒論で語ることがもはやできないテーマです。制度設計について、今後とも考えていきたいと思います。


● 国有林野:1.3兆円

 これはメディアでも相当に取り上げられました。かつては4兆円近い借金があったものを、平成10年に1兆円まで減額しました。残りはすべて一般会計負担にしたわけです。今回の事業仕分けで、当初林野庁は「国有林野特別会計は一般会計化」という打ち出しでしたが、さすがに本番では債務部分については引き続き区分経理という提案でした(小生はそこがよく理解できずに変な質問をしてしまいました。猛省です。)。やはり、債務については枠で囲い込んで返済してもらうための力を働かせることが必要です。特に林野庁も「返せます」と言っているわけですから。結論について雑な説明をすれば、公益性のあるところはそういう扱いにして一般会計化、稼げるところは稼いでもらって特別会計に存置する借金返しに努める、まあ、そういうことです。それで良いと思います。とても良い議論ができたセッションだったと思います。


● 空港整備:1兆円

 これは羽田の整備に掛かっているお金が大半です。しかも、現時点では羽田空港はフローでも特別会計に負担となっています(つまり、借金返しを羽田の収入では返せていない状態)。今、羽田関連の債務は地方空港での黒字分やレーダーの使用料等、ありとあらゆる財源を投入しながら面倒を見ているのが現状です。時に「羽田空港は独立採算で切り離せば良いではないか」という議論がありますが、完全にミスリードな内容でした。それはこれから本当に羽田がガンガン稼げるようになり、ある程度債務に目処がつくまではそういうふうにはならないでしょう。つまり、ここに目処がつけていくためには、単に羽田の国際ターミナル関連の盛り上がりとは別の次元の考慮が必要です。


● 自動車事故対策勘定、保障勘定:6000億円

 ここは議論が分かりにくかったと思いますが、実は「特別会計から一般会計への借金」が6000億円ある非常に変わったケースなのです。かつての自賠責の運用利益の残りや無保険車、ひき逃げのための基金から一般会計に貸しているかたちになっています。扱いがとても難しい案件でした。これらの資金(一般会計に貸している部分を含め)を通じて被害者対策に遺漏なきを期することは当然の責務だと思います。ただ、これらの資金を「自動車事故被害者」のみならず、例えば「別の交通事故(例:鉄道事故)等で意識障害になられた方にも使えるようにする」といったような考え方はできないのか、とてもとても悩みました。根源的な議論として「自賠責の運用益は誰に帰属すべきものなのか」というところから考えさせられました。答えは「ユーザー」なのでしょうけども、そこから更に「『ユーザー』とは具体的に誰か?」というところまで突き詰めると迷路になってしまいます。


● 米管理勘定:1700億円

 これはちょこっとだけ触れはしましたが、あまり議論をしなかったところでして、何かというと、かつて、北朝鮮やインドネシアに国産米の貸付をやっていて、その貸付について国産米の価格と国際価格の差額負担を米管理勘定に付けたかたちになっているものです。これは貸借対照表では「資産」のところに乗っているので、すぐには借金だとは分からないものです。今後、これは貸付の返済が進むに連れ、差額負担のところが一般会計から米管理勘定に移転されていくことになります。つまり、国全体で見ていくと一般会計に目に見えない1700億円の負担があると考えることができます。まあ、外交政策の一環として10年以上前に行ったコメ支援の負担をこれから返していくことになるということでして、その支援の成果をどう考えるかということですね。


 この他にももっと渋いテーマはあるのですけども、一回では到底意を尽くせません。これから少しずつご紹介していくつもりです。