前回の決算委員会での質問で、「通商交渉体制は縦割りが酷くて国益を損う。だから、所掌事項を各省から引っぺがして、内閣府に国務大臣を置いた上で体制を一元化すべき。」と主張しました。まあ、答弁自体はあまり目覚ましくありませんでした。


 ということで、私なりに「関係省庁から何を引っぺがしたらいいのか。」ということを見てみました。こういう時には各省の設置法を見るのが一番です。関係が深そうな経済産業、農林水産、財務、外務の設置法で該当しそうな部分を出してみました。


【経済産業省設置法】
第四条  経済産業省は、前条の任務を達成するため、次に掲げる事務をつかさどる。
(略)
十三  通商に関する政策及び手続に関すること。
十四  通商に関する協定又は取決めの実施(通商経済上の経済協力に係るものを含む。)に関すること。
十五  通商経済上の国際協力(経済協力を含む。)に関すること。
十六  輸出及び輸入の増進、改善及び調整に関すること。
十七  通商政策上の関税に関する事務その他の関税に関する事務のうち所掌に係るものに関すること。
十八  通商に伴う外国為替の管理及び調整に関すること。
十九  貿易保険に関すること。
二十  条約に基づいて日本国に駐留する外国軍隊、日本国に在留する外国人及びこれらに類する者に対する物資の供給及び役務の提供に関すること(防衛省の所掌に属するものを除く。)。
二十一  第十三号から前号までに掲げるもののほか、通商に関すること。
(略)


【農林水産省設置法】
第四条 農林水産省は、前条の任務を達成するため、次に掲げる事務をつかさどる。
(略)
十一 所掌事務に係る物資についての輸出入並びに関税及び国際協定に関する事務のうち所掌に係るものに関すること。
十二 所掌事務に係る国際協力に関すること。
(略)


【財務省設置法】
第四条  財務省は、前条の任務を達成するため、次に掲げる事務をつかさどる。
(略)
二十三  関税、とん税及び特別とん税並びに税関行政に関する制度(外国との関税及び税関行政に関する協定を含む。)の企画及び立案に関すること。
二十四  関税、とん税及び特別とん税並びに地方税法 (昭和二十五年法律第二百二十六号)第二章第三節 に規定する地方消費税の貨物割の賦課及び徴収に関すること。
二十五  関税に関する法令の規定による輸出入貨物、船舶、航空機及び旅客の取締りに関すること。

(略)


【外務省設置法】
第四条 外務省は、前条の任務を達成するため、次に掲げる事務をつかさどる。
一 次のイからニまでに掲げる事項その他の事項に係る外交政策に関すること。
 イ 日本国の安全保障
 ロ 対外経済関係
 ハ 経済協力
 ニ 文化その他の分野における国際交流
二 日本国政府を代表して行う外国政府との交渉及び協力その他外国(本邦の域外にある国又は地域をいう。以下同じ。)に関する政務の処理に関すること。
三 日本国政府を代表して行う国際連合その他の国際機関及び国際会議その他国際協調の枠組み(以下「国際機関等」という。)への参加並びに国際機関等との協力に関すること。
四 条約その他の国際約束の締結に関すること。
五 条約その他の国際約束及び確立された国際法規の解釈及び実施に関すること。
(略)


 これらをすべてガチャンとホッチキスすれば良いということではありませんけど、この辺りから引っぺがすことになります。ちなみに、霞ヶ関の鉄の掟として「各省庁のすべての所掌事務は一切の重複がない」という前提になっています。例えば、経済産業省の「通商に関する政策及び手続きに関すること」と外務省の「対外経済関係に係る外交政策」は全く重なり合わないという前提です。


 これは手間がかかる作業です。しかし、この法律の細かいところの戦いをやらないと、国務大臣は充てたけど権限が少ないみたいなことになりかねないのです。内閣府の所掌事務を見てみると、「行政各部の施策の統一を図るために必要となる次に掲げる事項の企画及び立案並びに総合調整に関する事務」という言葉が何度か出てきます。これは何かというと「具体的なオペレーションは各役所がやる」ことが前提となっていて、これでは縦割りを排せないだけでなく、場合によっては屋上屋にすぎないということにもなりかねません。どの部局がとはいいませんが、そういう部局が内閣府や内閣官房にはあります。


 縦割りを排除すること、それは政治家が号令を一喝すれば足りるわけではありません。むしろ、それだけだと意味のない組織が出来てしまう可能性の方が高いのです。そうではなくて、この一般の方には何の縁もない「設置法」に食い込むことが必要なのですね。ここが役所の権限の源なんです。


 私が役所に入省した頃、上司から「設置法をまず熟知すること。そして、うちは権限争いを仕掛けられる側だから、そこで戦うための知識を身につけること。」と言われました。今でも染みついています。だからこそ、そこに手を突っ込まないとダメなのだということも含めて。