以前、一度書いたテーマですが、JICAは外国に専門家という名前で人を派遣しています。1年以上の長期派遣専門家だけで、2008年度には1307名の派遣を行っています。


 私はこの専門家派遣の中で、省庁の固定ポストに近いものがあることを問題視しています。事実上、各役所の技官の「ご苦労さんポスト(骨休め)」になっている専門家事業がかなりあるのです。大して役に立たなかったり、言葉が全くできなかったりして、殆ど派遣された国の発展に貢献できない技官を、人事政策の一環として専門家として出しているケースがかなりあります(「すべて」がそうだとは言っていません。)。


 外務省からの資料では「これらの専門家は、相手国政府の要請に基づき、かつ、要請された当該分野の専門性等にかんがみ、各省が持つノウハウ・知見等が優位性をもっていることを確認の上、各省から推薦されたJICAが審査の上、決定しています。」となっています。外務省的には、そういう筋の悪い専門家派遣を叩く方向なのかなと思っていました。こっそりと誰かから「いや、あの各省の固定ポスト化している専門家は外務省としても筋が悪いと思っているので一緒に叩きましょう。」と来るのかと思っていましたが、外務省はどうもそういう感じではないようです。


 ということで、「JICAが実施する技術協力において、2代以上同一省庁による推薦で、同一技術協力プロジェクトないし同一配属先に派遣された専門家数」ということで外務省に調べてもらいました。文字にするとちょっと長い照会の掛け方なのですが、これくらいしつこい書き方をしないと逃げられるのです。例えば、「同一技術協力プロジェクトないし同一配属先に派遣された」の部分を端折って、「同一技術協力プロジェクトに派遣された」とすると、プロジェクト名だけが変わって、実質的には殆ど同じ目的で派遣されている専門家が落ちてしまいます。役所に照会を掛ける時は、きちんと逃げを作らない照会の仕方をしないと、役所は「聞いたことに過不足なく」しか答えてくれません。


(余談になるのですが、ここが政治家の弱点なのです。思いが強くて、すべてを網羅するようなかたちで役所に聞いたつもりが、役所は「聞かれたことに過不足なく」しか答えないため、自分の中では質問したと思っていることが実際には質問内容から漏れていることがあります。その結果、回答が不十分で「嘘をつかれた」と感じてしまうことが多いのです。私に言わせると、逃がすようなモノの聞き方をするから逃げられるのですが。)


 上記照会の結果、出てきた専門家事業の数は93人でした。もうちょっと照会の掛け方を細かくして、「実質的に同一」みたいな用語を盛り込むともう少し増えるのかもしれません。また、JICAを経由していない技術協力もある程度はあるので、そういうものを各省庁に網羅的に聞いてみると、技官の固定ポスト化している専門家事業はもっとあるでしょう、多分。


 派遣先で多いのは、インドネシア(26人)、カンボジア(8人)、ベトナム(7人)、ラオス(6人)、中国(9人)でした。パッと見て、東南アジアが多いですね。そして、推薦元の省庁としては、数えたわけではありませんが、農林水産、国土交通、厚生労働、経済産業・・・という順番で多いのではないかという感じです。ただ、どれくらいが各省庁の技官ポストと化しているのかまでは、今回は聞いていません。前職が当該推薦官庁又は所管の各種法人の職員であったことを調べてみれば、概ね雰囲気は分かるでしょう。かなりいると思います。


 このポストを切ろうとすると、各省庁は激しく抵抗します。当たり前です。人事は役所の根幹だと言われていて、そこに手を付ける行為には激しく抵抗があります。激しく抵抗があることは、つまり、固定ポスト化していることの証左なわけですけどもね。そして、この手のモノが固定化することは結果として、非効率、不要不急の事業ということに繋がりやすいです。


 このテーマについては、また、いつか国会審議で質問していくか、行政刷新会議で取り上げてもらうようにするかして、対応を考えてみたいと思います。