JR、NTT、郵政関係、JT・・・、これらの企業の名前を聞いて、「ああ、かつては公社だったけど、色々なかたちで民営化した会社だな」と思われると思います。


 しかし、そうでない分野があります。それは「WTO政府調達協定」における扱いです。これらの会社はすべて「政府」調達協定(Government Procurement)の対象になっています。何故かというと、これらの会社はアメリカやEUから「まだ、政府のくびきから抜け出ていない」というふうにケチを付けられまくっていて、結果として「政府」調達協定の対象になっています。この協定の対象であるということは、非常に厳格かつ時間のかかる手続きを要求されます。基本的には一般競争入札になります。私はこれが若干不愉快に映っています。


 こちらが民営化の手続きを取って、それなりに政府の手元を離れて行っているのだから、もうアメリカやEUにガチャガチャ言われる筋合いはないわけです。しかし、アメリカやEUはこれが「ビジネスチャンスの喪失」だと映っているのでしょう。ともかく、ありとあらゆるケチをつけて妨害行為をやっています。しかし、例えばEUの政府調達協定の運用なんてのはいい加減なものなんです。一例をあげると、EUは政府調達協定の対象となる期間を明示していない部分があります。「これこれこういう機関が含まれる」みたいな属性のところだけを協定で約束して、実態のところでは相当に融通が効くようにしてあります。これは「上手い」と言えば上手いやり方なわけで、そのあたりがバカ正直な日本は損をしていています。


 ちなみに、ウィキペディアから抜き出した関係各社の株主比率を書きだしておきます。少し、データの時期に差があるようで、現在は少し変化があるかもしれません。


【JR関係(抜粋)】

● JR北海道::鉄道建設・運輸施設整備支援機構が100%で、同機構が独立行政法人。

● JR東日本:日本マスタートラスト信託銀行(株)6.14%、日本トラスティ・サービス信託銀行6.10%、三菱東京UFJ銀行 3.13%

● JR東海:日本トラスティ・サービス信託銀行4.83%、みずほコーポレート銀行 4.55%、日本マスタートラスト信託銀行4.29%

● JR西日本:日本トラスティ・サービス信託銀行5.70%、日本マスタートラスト信託銀行5.27%、みずほコーポレート銀行 3.45%

● JR四国:鉄道建設・運輸施設整備支援機構が100%で、同機構が独立行政法人。
● JR九州:株主は鉄道建設・運輸施設整備支援機構が100%で、同機構が独立行政法人。

【NTT関係】

● 日本電信電話:財務大臣33.72%、自社12.2%、モクスレイ&Co.3.25%、ステート・ストリート・バンク&トラスト505103 0.93%


【郵政関係】

ご承知の通り、先の臨時国会での法律成立により、株式の売却が一時的に凍結されております。


【JT関係】

● 日本たばこ産業:財務大臣 50.02%、日本マスタートラスト信託銀行2.46%、日本トラスティ・サービス信託銀行1.85%、ステートストリートバンクアンドトラストカンパニー1.51%、みずほ銀行1.35%


 こういう民営化した企業の経営自由度を増すためにも、ちょっとこの件では頑張ってみようと思っているところです。逆に言うと、これらの企業の方々には「政府とはきちんと距離を置くようにしてください。でないと、何時まで経っても『政府』調達協定に縛られますよ。」とお願いするつもりです。


 先日、郵政の方と話した際も「現改革において、政府による株保有について非常に高い水準を主張すると、最終的には民営化していないと看做されますから、穏当なところに収めておいてください。」と助言いたしました。小生の率直な思いです。


 あまり、こういう視点で民営化を考えることはないかもしれませんが、「政府調達協定の対象から外す」オペレーションはそれなりに意味があると思うので、いわゆる「(民営化の)横串」として政府に対して「EUやアメリカにガツンと言って、最終的に相手がウンと言わない時は、見切り発車で外すことも考えるべし。」と働きかけてみようと思っているところです。