かなり前のことですが、フランスの新聞「Le Monde」を読んでいた時のことです。日本のことが一面に取り上げられていて、テーマは「Universite de Shibuya(シブヤ大学)」でした。「そんな大学あったっけな?」と思って読んでいると、「president」のところで「Yasuaki Sakyo」という名前を見つけました。「さきょう・やすあき?、左京泰明?、もしかして・・・。」と思って、インターネットで検索してみました。


 なんのことはない、高校の後輩の左京さんでした。彼は東筑高校を卒業後、早稲田大学でラグビー部主将をやり、全国優勝した男です。私が役所を辞める前に会った際は商社に勤めていましたが、その際「ああ、緒方さんも辞めるんですか。私も辞めるんですよ。NPO活動など、やろうかと・・・。」という話をしたのを思い出します。その時は「何をやるのかな?」と思ってたら、こんなかたちで発見するとはビックリしました。ということで、先日、それこそシブヤで会いました。なお、早稲田のラグビー部主将ですから体格は良いですが、普通に見れば温厚でリーダーシップのある有能ビジネスマンという感じです。


 今はNPOシブヤ大学の学長ということで、東京都渋谷区全体をキャンパスに見立てて、非常に広範なネットワークで生涯教育を推進しています。勿論、「大学」と言っても、法令上の大学ではありません。その活動を文章で説明しようと試みましたが、とてもではありませんが私の筆致には余ります。是非、このサイト を見てみてください。多くのネットワークを作り上げ、そして、そこで非常に質の高い生涯教育を展開している、その発想は卓越したものがあります。


 私が勘違いしていなければ、区の委託事業としてスタートしたものであって、純粋に専従でやっているのは左京さん一人です。勿論、シブヤ大学を支える数えきれないくらいの多くの方が関与しているものです。私が想像するに、今でこそここまでネットワークが大きくなって軌道に乗っていますが、最初はあまり理解が得られずに試行錯誤だったことでしょう。しかも、額は言いませんが行政から出ている補助は、この活動の広がりに比すれば微々たるものです。「この金額でこれだけのことができるのか?」と、もうただただ驚きの連発でした。


 行政官をやっていた私の眼には、「非常に緩い生涯教育のネットワーク」と映ります。普通の地方自治体やお役人の発想からは、こういうシブヤ大学みたいな取組は絶対に出てきません。というか、発想が出て来ませんし、思い付いたとしても成功可能性ばかりを考えてしまい、結局、怖くて手が出せないでしょう。そこを踏み切った渋谷区はアッパレの一言に尽きます。


 他地域でも動きが始まっているそうです。新しい地域振興のスタイルなのかもしれません。ただ、シブヤ大学に関わる皆さんはそういう堅苦しい感じが全くありません。すべてが緩やかな自然体で流れていきます。あの感性は他地域に移転することができるのかな、と考えたりもします。


 ともかく、シブヤ大学のサイトを見てみてください。私は最初に発見して以来、常に拡大していくそのネットワークのあり方に感動しています。