私は昔、献血マニアでして、大学時代は新宿と吉祥寺の献血センターによく行っていました。正確に覚えていませんが、たしか30回表彰を受けた記憶があります。別に200円の図書券が欲しかったわけでなく、ジュースとお菓子が食べたかったわけでなく、何となく「こんな私でも役に立つなら・・・」という漠然とした思いでやっていました。


 その後、外国に長く住み、しかもアフリカでマラリア罹患者となったため、もう15年くらい縁がありません。まあ、私のケースはマラリア罹患という決定的なことがあるためどうしようもないのですけど、いつも献血のお誘いを受ける度に「すいませんね、私はもうダメなんです。」とお答えするのが残念でなりません。


 そういう中、昔から献血には関心が高く、そしてかねがね疑問に思っていたのが、「献血をご遠慮いただく方」の基準でした。この基準には色々なものが含まれますけど、その中でも「海外旅行者及び海外で生活した方」のところの欧州部分です。今はこういう基準になっています。


【献血をご遠慮いただく方(抜粋)】

(1) 英国に昭和55年(1980年)から平成8年(1996年)までに通算1か月(31日)以上の滞在歴のある方。
(2) 英国に平成9年(1997年)から平成16年(2004年)までに通算6か月以上の滞在(居住)歴のある方。(通算6か月の計算には(1)(3)(4)の滞在(居住)歴も含みます。)
(3) アイルランド、イタリア、オランダ、サウジアラビア、スペイン、ドイツ、フランス、ベルギー、ポルトガルに、昭和55年(1980年)から平成16年(2004年)までに通算6か月以上の滞在(居住)歴のある方。(通算6か月の計算には(1)(2)(4)の滞在(居住)歴も含みます。)
(4) スイスに、昭和55年(1980年)から今日までに通算6か月以上の滞在(居住)歴がある方。(通算6か月の計算には(1)(2)(3)の滞在(居住)歴も含みます。)
(5) オーストリア、ギリシャ、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ルクセンブルグに、昭和55年(1980年)から平成16年(2004年)までに通算5年以上の滞在(居住)歴のある方。(通算5年の計算には(1)(2)(3)(4)(6)の滞在(居住)歴も含みます。)
(6) アイスランド、アルバニア、アンドラ、クロアチア、サンマリノ、スロバキア、スロベニア、セルビア、チェコ、バチカン、ハンガリー、ブルガリア、ポーランド、ボスニア・ヘルツェゴビナ、マケドニア、マルタ、モナコ、モンテネグロ、ノルウェー、リヒテンシュタイン、ルーマニアに昭和55年(1980年)から今日までに通算5年以上の滞在(居住)歴がある方。(通算5年の計算には(1)(2)(3)(4)(5)の滞在(居住)歴も含みます。)


 これを見れば分かるとおり、かなり厳しいですね。クロイツフェルト・ヤコブ病との関係が疑われているからです。しかし、実は2010年1月26日までは、(1)の「通算1か月(31日)」の部分は「1日(1泊)」でした。つまり、これまでは対象となる16年間の間で、ちょこっとでもイギリスに行ったら全部ダメということで、かねてから私は「これはないんじゃないか。相当の人間が献血対象から外されてしまうぞ。」と思っていました。


 まあ、人間の健康に関わることですから、おいそれとコストベネフィットで考えてはいけないことを重々承知しつつも、かといって1日イギリスに行ったらダメというのでは、あまりに硬直的すぎるのではないかと批判的な見解を持っていました。「ようやく制度が変わったか」と、ちょっと安心しています。しかも、これは現在ではなく、過去の渡航経験が問題になっているわけでして、別に2010年になって何かが変わったわけではありません。きちんとした調査、検査をした上で、もうちょっと早く緩和できなかったのかなという気になります。


 日本人がどんどん国際化していく中、安全と血液の需要の関係をどう考えるかと言うことです。ただ、今、献血する人の数が減っているそうでして、それに加えて外国滞在がペナルティになるのであれば、国内の血液需要は満たされなくなるかもしれません。また、日本は高齢化が進むわけで、それに比して血液需要は高まるでしょう。そんなことを思いながら、今日も献血ルームの側を残念な思いで通り過ぎています。