宮内庁の位置付けについて、もう一度見直してみました。意外に面白いことが分かりました。


【宮内庁法】

第一条 内閣府に、内閣総理大臣の管理に属する機関として、宮内庁を置く。


 読んでみると、何の変哲もない文章のように読めますが、実はこの「内閣総理大臣の管理に属する機関」という文言は、この宮内庁法だけにしかありません。他の行政機関で「内閣総理大臣の管理」という言葉はありません。内閣府にある消費者庁、金融庁、国家公安委員会、公正取引委員会といった外局とは違いますし、国家行政組織法で設けられている各省の庁(資源エネルギー庁、林野庁みたいなもの)とも全然違うものです。この「内閣総理大臣の管理」という言葉の解釈はよく分かりませんが、独立性の高さがあるんだろうということは推察できます。


 そして、宮内庁法の根拠となる内閣府設置法を読んでみると、更に面白いことに気付きました。


【内閣府設置法】

第四十八条 宮内庁は、内閣府に置かれるものとする。
2  宮内庁の設置、組織及び所掌事務については、宮内庁法 (これに基づく命令を含む。)の定めるところによる。


 これもサッと読んでみると何の変哲もない文章のように読めるでしょう。しかし、内閣府内の機関(重要政策に関する会議、審議会等、、施設等機関、特別の機関、地方支分部局)は「本府に●●を置く(ことができる)」みたいな書き方です。また、金融庁等の内閣府外局は「内閣府には、その外局として、委員会及び庁を置くことができる。」という書き方がベースです。しかし、宮内庁というのは規定ぶりが全く異なっていて、そもそも宮内庁という組織が存在していることが大前提で、それが現行制度の中では内閣府に置かれているんですよ、ということです。勿論、こういう組織は他にはありません。これまた独立性の高さが際立っています。


 この2つを見てみると、とても特殊な位置付けです。勿論、最後の最後は内閣総理大臣の管理下にあるわけですが、独立性の高さが垣間見えます。「なんだ、ただの法律の言葉遊びか」と思うかもしれませんが、意外にこういう規定ぶりが宮内庁で働く方の意識に大きく影響するものなのですね。


 ところで、もう一つ、内閣官房長官の所掌事項に宮内庁は入ってくるのかということも考えてみました。以下を読む限り、内閣官房長官は宮内庁を担当しているということでいいと思います。ただ、「内閣総理大臣の管理」という言葉との関係をどう解釈するのか、今一つ分かりにくいところもあります。


【内閣府設置法】
第八条  内閣官房長官は、内閣法 に定める職務を行うほか、内閣総理大臣を助けて内閣府の事務を整理し、内閣総理大臣の命を受けて内閣府(法律で国務大臣をもってその長に充てることと定められている委員会その他の機関(以下「大臣委員会等」という。)を除く。)の事務(次条第一項の特命担当大臣が掌理する事務を除く。)を統括し、職員の服務について統督する。


 実は副大臣、政務官についても、法律の規定上は宮内庁担当が置けそうな感じです。


【内閣府設置法】
第十三条  内閣府に、副大臣三人を置く。
2  副大臣は、内閣官房長官又は特命担当大臣の命を受け、政策及び企画(大臣委員会等の所掌に係るものを除く。)をつかさどり、政務(大臣委員会等の所掌に係るものを除く。)を処理する。
3  各副大臣の行う前項の職務の範囲については、内閣総理大臣の定めるところによる。

(略)

(注:大臣政務官についても同様の規定あり。)

 ただ、現在、宮内庁担当の副大臣、政務官はいません。まあ、管理する立場の総理が職務範囲として宮内庁を定めなかったということなのでしょうかね。もしかしたら、その背景には「宮内庁側はカウンターパートを最低限でも国務大臣だと思っている」なんていうメンツがあるのかもしれません(知りませんので邪推ですが。)。


 ということで、あまり面白おかしくない内容でしたが、法文官僚上がりには色々と発見がありました。