日本のNPOで「ロシナンテス」 という団体があります。代表は川原尚行さん。北九州市出身で、小倉高校→九州大学医学部を経て、タンザニアやスーダンの日本大使館医務官を歴任後、今はNPO代表としてスーダンで医療活動で活躍しておられます。「情熱大陸」でも紹介されていました( )。スーダンと言えば、ダルフール(大虐殺が起こった地域です)で政情不安な地域でして、そういう中でも本当に頑張っておられます。先日、川原さんとお会いしました。医師というイメージからはちょっと外れ、髭を生やして、ラグビーで培った屈強な体格の方でした。共通の友人がいたり、(私が行ったことがある)タンザニアの話などで痛快なまでに楽しい一時でした。


 「ロシナンテ」というのは、あのドンキホーテに出てくる痩せ馬です。あの物語は何度読んでも、「結局、セルバンテスは何が言いたいのか」ということを考えさせられます。それはともかくとして、川原さんの意図は小さな痩せ馬のような存在でも、皆が集えば大きなことができるということでした。


 同種の活動として、既に有名なのは中村哲医師による「ペシャワールの会」ですね。こちらはもう言を尽くす必要もないでしょう。私は「次に日本でノーベル平和賞が出るとすれば『ペシャワールの会』だろう」と思っています。中村哲医師も九州大学医学部です。「あの大学にはそういう素地があるのかね?」と、ちょっと思い始めています。


 スーダンというのはアフリカ最大の国で、殆ど統率が効いていません。北部に行けばイスラムが強く、南部に行けばキリスト教があり、アニミズム的な宗教信仰も結構あります。人種も相当に多種多様です。大統領はエル・バシール。独裁政権と言っていいでしょう。西部ダルフールでの虐殺については、かつて書きましたのでここでは書きません。かつてはビンラーデンを匿っていたこと等から、首都ハルトゥームが米軍に爆撃されたこともあります。


 日本政府はこういう活動をしている方に支援をするのが苦手なんですね。予め決まったスキームがあって、そこに乗らないような活動には対応が後手後手になります。デカいODAをやるのは程々にして、こういう地道な活動を支援できるようにしていきたいと思いますし、もっと言えば、そういう思いを受け継いで「第二の中村さん、川原さん」が出てくるような国内の環境整備もあっていいと思います。


 ちょっと脱線しますが、いつも、思います、「若い人にもっともっと外に目を向けてほしい」と。高校生に話をした際、「あなた達には分かりにくいかもしれないけど、世界には色々な人がいる。日本とは文化が全然違う国はごまんとある。ただ、どちらが正しいとか、そういうことじゃない。『違うということ』、『そして、その違いを尊重できること』、これが大事なんだ。」ということを熱弁しました。その先に、真の意味での「国際化」というのがあるのだろうと思います。それを体現しているのが、こういった川原医師の活動でしょう。


 北九州が誇る川原医師が尽力しておられる「ロシナンテス」、是非一人でも多くの方に認識していただいて、色々なかたちでのサポートを頂ければと強く感じます。