神奈川県が、管理職の肩書を局長、部長、課長に纏めるという話がありました。とても良いことだと思います。これは、行政の中にいた人間であれば感じる話のはずです。直接行革につながるかといえば、なかなか微妙ですが長期的にいい効果が出てくるはずです。

 中央官庁もヒドいもんでして、一例を挙げてみます。「参事官」という言葉があります。私のいた外務省でも2種類の使い方がありました。在外公館にいる際の参事官というのは、大体、本省課長よりちょっと若いくらいでした。私が外務省に残っていたら、そろそろ一等書記官から参事官に昇進かなという感じです。逆に本省勤務ですと、参事官というのは課長と局長の間になります。かなりランクが高く、特別職ポストの一歩手前です。しかもです、経済産業省に行くと、課長相当ポストで参事官という肩書があります。これは何故、そういう名前にしたかというと、(少し雑に説明すれば)行革で課の数を減らせと言われたときに課の数は減らすけど、課長「相当」ポストとして参事官という名前を与えたわけです。他にも、別の参事官の使い方があるかもしれません。

 これ分かるように、「参事官」と言ってもそれだけではどういうランクの人かは分からないのです。実は一番いいのは英語訳を見てみることでして、在外公館の参事官はcouncillor、外務省本省の参事官はdeputy director-general、経済産業省の参事官はdirectorとなっています。こっちの方が遥かに分かりやすいです。その他にも、企画官、理事官なんていう肩書は各役所によって相当に異なります。

 また、役所では「課長補佐」と言うと、まあそれなりに責任ある立場と扱いになります。役所によってはdeputy directorという名前を与えたりしています。しかし、これを粗製乱造する傾向が目立ちます。場合によっては、とてもdeputy directorに値しないような立場の人間が課長補佐と名乗っているケースも散見されます。これは「悪貨は良貨を駆逐する」の典型でありまして、何処かが粗製乱造を始めると、「同ランクの者が対外的に下に見られてはかなわん」ということで、周囲も粗製乱造に走るようになります。

 昔、たしかこの粗製乱造に耐えかねた外務省が内閣官房に「整理してくれ」と頼んだことがありました。しかし、内閣官房の返事は「やれません」でした。あまりに各役所で呼称の使い方が違うために統一的な基準を設けることができなかったということのようでした。

 しかし、これってややこしいのです。私なら図々しく、名刺を見て肩書から判断できない時は入省年次や経歴をうかがうことで凡その判断が出来ます。ただ、普通の人には無理です。局長・部長・課長・課長補佐・係長・事務官くらいのシンプルな体系にした上で、概ねこれくらいの要件を備えたらこのポストになるという統一的な基準を設けたらいいのにと、昔から思っていました。

 大体にして、こういう複雑系になっているというのは、何らかの理由があるのです。上記で述べたように、行政改革で局や課といった組織を切られたけど、ポストは実態的に残すために名を変えて誤魔化すというものです。そのツギハギの結果が今のような醜悪かつ理解不能な呼称体系になっていたわけです。神奈川県でもそういう事態があったが故に、松沢知事が英断を下したのでしょう。

 これを統一したからと言って、すぐに何かが実態的に変化するわけではありません。給与削減効果もすぐには出てこないでしょう。ただ、誤魔化しが利かなくなるので、自ずとボディーブローのように行革の効果として発現してくるでしょう。

 あまり日々の生活に根差さない話ばかりですいません。