概算要求が約95兆円。正直、驚きました。鳩山総理が各大臣に「要求大臣ではなくて、査定大臣たれ」と言ったことは、「そうそう、そうなのよ。それが政治のイニシァティブなのよ。」と、とても良いことだと思っていました。だけに、この数字が出てきて仰天しました。そんなお金が何処にあるのか、お国の借金は天文学的数字なのにそれに上積みしてこんなお金出せるのか、不安になります。


 お役所は面従腹背なんでしょうかね。もうちょい、政務三役がガツンガツンお役人の頭を小突かない(比喩表現です、勿論)とダメなのでしょう。私はこれは「ペルシャ絨毯商人との交渉」だと思っています。絨毯商人は最初から「これ以上はまけられない」というラインは提示しません。「ペルシャ絨毯を買う時は、(「その金額なら買わない」と言って)ドアのノブに3回手が掛からないと本当の値段は出てこない」と言われます。実際に見た感じでは、10回くらい手が掛からないとダメっぽいようでしたが、いずれにせよ、そんなものなのです。お役所から「これ以上は無理です」と返事が返ってきたからといって、それを信じてはダメです。


 お役人とのお付き合いのコツは、「いざという時には『おいこら、ナメてんのか』」と胸ぐらを掴む気概が必要(比喩表現です、これも)」ということです。いつも、それをやっていては単なる「おかしな人」ですが、明らかに不誠実な対応をしている時には遠慮せずに厳しく出ることが必要です。そのやりとりを数回繰り返した先に「本当のこと」が出てくるわけです。


 それにしても、95兆円の予算規模は、現下の日本の財政状況にかんがみれば、そのまま採用することは無理ですね。概算要求に際して色々と条件が付いたことは知っていますが、ある方から「結果だけを見ると、単に今年度の予算規模にマニフェスト分をくっ付けただけじゃないか。」と厳しく批判されました。そう見えるだけの理由があるのでしょう。そもそも、今年度の予算自体、我々が税金の適切な使用という観点から麻生政権を批判をしてきたものです。これからは藤井大臣、仙谷大臣等による鬼の査定が必要だと私は思います。


 予算査定については、「昭和三大バカ査定」という有名な言葉があります。これは1987年に整備新幹線の陳情に来た政治家に対して、当時の大蔵省田谷主計官が言い放った言葉です。伊勢湾干拓、戦艦大和、青函トンネルの3つを指します(なお、私はそれらの事業の実情を知らないので本当に「バカ査定」なのかは分かりません。)。そして、田谷主計官は、仮に整備新幹線計画に予算を付けると、このリストに名を連ねることになるとして、予算を付けることを拒否しています。田谷氏はその後、スキャンダルで大蔵省を追われましたが、この「昭和三大バカ査定」という言葉自体は非常に上手い言い回しだなと思いますし、課長級の主計官が国を想い、族議員を前にそこまで言い放ったこと自体に対しては「国士」を感じます。


 今後来る査定の仕方を間違えると、後世、個別事業でなく予算そのものが「平成一大バカ査定」と言われかねません。具体的に何処まで削るべきかという水準を示す力は私にはありませんが、ともかく予算査定に関わるすべての政治家が「鬼の主計官」になった気持ちで、メリとハリのある予算作成に向けて頑張ってほしいと思っています。ペーペーの一年生議員としては「国士、出でよ!我、それに続かん!」、そんな気持ちです。