最高裁で一票の格差判決が出ていました。2007年選挙で、選挙区間で1票の格差が最大4.86倍だったことは合憲であるというような内容です。


 かつて、この件については2度ほど書きました(選挙いろいろ(その2)参議院改革(その1) )。その理屈については、リンク先を見ていただければと思いますが、根本的な考え方としては、「参議院の選挙区選出議員は国民(people)を代表する議員ではなく、領土(territory)を代表する議員である」と位置付けて、各都道府県に同じ議席を割り振るというふうにしてはどうかということです。誤解のないように言いますが、ここで言う「国民」というのは良い訳がなかったので使っているだけでして、「人口」とでも言い換える方がいいような意味合いのものです。


 アメリカの上院では、3500万人を超えるカリフォルニア州も、50万人をちょっと超えるだけのワイオミング州も同じように2人を選出します。そこでは「一票の格差」なんて議論はありません。仮に計算すると70倍近い差がありますが、それで連邦最高裁でゴタゴタすることはありません。フランスの元老院(上院)はもう少し複雑ですが、やはり領土(や地方自治体)を代表する位置付けが明確にあります。


 これは「地方分権」の一環として捉えることができるでしょう。各都道府県が平等な立場で国政に人を送ることができるというのは、何処かで各都道府県の自立性を促すことに繋がるはずです(間接的ではありますけど)。勿論、その帰結として「一票の格差」の議論そのものがなくなります。ただ、「低人口の都道府県の過剰代表」ということも出てくるでしょう。そうなっても、私はいいんじゃないかなと思います。東京を始めとする都市圏を支えるのは地方でありまして、そういう地方を平等に代表する役割を参議院が果たすことは意義のあることです。ただ、ここは議論の余地が大いにあります。


 例えば、全都道府県で3名の選挙区選出議員にするとします。47×3=141議席です。概ね今の選挙区選出議員数(142議席)と同じです。1回の選挙区で5人区となる東京なんかは10議席(5議席×2)から3議席へとガクンと議席数が減少になりますし、29もあると言われるいわゆる一人区の都道府県では2議席(1議席×2)から3議席へと議席数が増えます。


 この「全都道府県で3人区」とするというアイデアには副産物があります。それは「すべての選挙区で熾烈な戦いが行われるようになる」ということです。ともすれば、今の制度の中では2人区は与野党で仲良く分けあって固定席化する傾向があります。2人区選出の参議院議員が楽な選挙をしているなんてことを言うつもりはありませんが、1人区の方が戦いが熾烈だということを否定する人はいないでしょう。これがすべて3人区になれば、全選挙区で戦いは相当に熾烈になるでしょう。それはそれでいいのではないかと思います。


 あと、これはちょっと裏の話ですが、2人区ではあまりに議席が固定席化しているために、候補になったら即参議院議員のポストが事実上確約されてしまうという現象があります。その時、何が起こるかというと、候補になる政党内でのプロセスが熾烈化するということがあります。そこには公職選挙法もありませんから、政党によっては(なお、我が民主党にはそういうことはありません)、お金が飛び交うことがあると聞いたことがあります。3人区にすれば、そういう固定席化ということはなくなりますから、いわば裏のプロセスとしてのお金の飛び交いがなくなるということも期待できるでしょう。それはそれでいいことだと思います。


 アメリカやフランスに倣ったこの方式、具体的には、都道府県から各々同じ数の議員を選出するということですが、個人的には悪くないんじゃないかなと思っています。いずれにせよ、私は衆議院で一票の格差をあれこれと法律判断することは良いことだと思いますが、逆に、参議院ではそういう議論が生じなくなるような制度設計を考えていいんじゃないかなと考えるわけです。


 まあ、これはすぐに成立するわけではありませんし、大幅な法改正みたいなものが必要になりますが、基本的な考え方として、少し世に問いたいなと思っています。異論反論大歓迎です。